第21話 スキルというものとは

 「昔々、世界には古代文明が栄えていました」


シスターさんから語られる、世界の歴史


 「しかし、どこからかモンスターが出現するようになります

  モンスターに古代文明の武器は効かず、人々は追い詰められていきます」


 「彼らを哀れに思い救ったのが、技術(スキル)の神様です

  神様は人々に、体内の魔力を操る方法をお教え下さいました」


 「モンスターは自らの魔力を外皮に纏っていて

  それで圧倒的な防御力を誇っていました

  しかし、それは人間の魔力をぶつけることで、中和できるのです」


 「かくして、モンスターを倒せるようになった人々は

  今、生存圏を徐々に取り戻していってます

  そう、スキルとは元々『体内魔力を操りモンスターを倒す技術』だったのです」



おかあさんが眠るときに語ってくれた、昔話

ちょっと神様よりだけれど、それとほとんど同じ内容だった

あの時と比べて、私も成長した…はずなのに

あの時と同じくらい、ドキドキするのはなぜだろう?



 「現在では、モンスターを倒したら、それは神様に捧げられます

  そして、捧げものの価値に応じて、賜り物をくださります

  賜り物…みなさんにわかりやすく言うと、スキルポイントですね」


 「神様はポイントと引き換えに、更に強いモンスターと戦う技術を授けてくれる

  …そういう感じにシステム化されています」


 「事前にパーティを組んでおけば、ポイントはパーティ全員に分配されます

  アタッカー以外でも戦闘に貢献した人たちへの配慮ですね

  貢献の仕方によって、もらえるポイントの配分が変わりますが…

  細かすぎるのでここは割愛します」


 「我々神殿に住む神官は、神様のスキル管理のお手伝いをしております」


 「神様に頼らず、人間同士で魔力の扱いを学ぶこともできます

  魔法学校などがそうですね」



昔話から、スキルの取り扱いの話に移る

ここからは何か新しい情報があるかもしれない…

聞き漏らしがないように集中しないと…!


『お姉ちゃん、なんだかそわそわしてるね』

『ふえっ?!そ、そうですか?』

確かに、自分でもちょっと興奮気味な気がする

この声のせいかなぁ…?


『そんなに楽しみなの?冒険者になるの』

『……』

ああ、そうか…


『うん、そうみたい…自分でも気づいてなかったけど』

恥ずかしい…でも、それ以上に嬉しい

私、旅行に行く直前の子供みたいになってる…



 「スキルは整理されて『四大スキル』にパッケージ化されています」


 「『四大スキル』とは…


  魔力を武器に宿らせ、モンスターを倒す技術に特化した『戦士』

  モンスターがうろつくフィールドの探索に特化した『探索者』

  魔力を癒しの力に転化し、他者を回復する『神官』

  魔力を体外に取り出し、モンスターに直接ぶつける『魔法使い』


  この4つの事を指します」


 「例えば、神様のお力で、魔法使いのスキルレベルを1に上げたら

  そのレベルの魔法を、全て覚えることができます

  『魔法使い』に属する複数の技術をまとめて習得できるのですね

  炎魔法だけでいいから高レベルの魔法を覚えたい…という事はできません」


 「こういう簡略化された制度になっているのは

  頑張った神様が個別に人々を助け続け、倒れられた事があるからだそうです

  できる限り神様の負担を減らすように、考えられているのですね」


 「ユニークスキルは人が魔力を扱いはじめてから突然発生した、謎のスキルです

  生まれた直後から持っているものなので、才能(ギフト)とも呼ばれています

  一応、スキルポイントで伸ばすこともできます」



最後はスキルの説明

ユニークスキルがポイントで伸ばせるってのは初耳だった

…宴会芸を伸ばしたくはないけど……


「まとめると…

『モンスターを倒すとスキルポイントがもらえるよ』

『神殿に行くと、スキルポイントを消費して、スキルを成長させられるよ』

『育つスキルは5つ、「戦士」「探索者」「神官」「魔法使い」「ユニーク」』

『面倒な手続きは神官さんがやってくれる!みんな神殿に行こう!』

 って感じね」


いい声モードが終わって、普通に喋りだすシスターさん

落差のせいで、こっちの声までかわいく思えてきた


「…ふー!説明終わり!」

「ご苦労様です」

「こういうの紙に書いて渡せば楽じゃない?って上に言ったんだけどねー

 それだと読まない奴が出てくるって返されちゃって」

「あるあるですね

 私の元ギルドも、掲示板の張り紙とか見ない人多くって」

「どこも大変なのねぇ」

「それに、シスターさん声綺麗ですし、語ってくれた方が嬉しいですよ」

「ここは音が響くように作られてるから、それを上手く利用してるだけよ♪」

「…」

シスターさんを褒めたとたんに

テラスちゃんがふくれっ面で、私と腕を組みに来た

…もしかして、嫉妬してる…?


そのぷくーっ…ってしてる顔があんまりかわいかったものだから

私は彼女を抱きしめ返して、頭を撫でた

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