第15話 お話しながらの朝食会

お風呂から上がり、用意してもらったお洋服を着る

…ちょっときついけど、贅沢言ってる場合ではないよね

リボン多めなのは、お嬢様の趣味なんだろうか…


そしてそのまま朝食会に


真っ白なテーブルクロスの上に、ほかほかのパンやスープ、それにお野菜が並んでいる

ギルドの食事と、そこまでメニューは変わらないのに

何故か貴族のお食事って感じがする

並べ方とか、使ってるお皿とか、温度管理とか、色々なものから高級さが漂う

それに、何より…


「何もしなくてもご飯が出てきた…!」

感動である

すぐ側で立っていた執事さんも、優しい顔でうんうん、と頷いてくれた

毎食用意してる人間なら、この喜びをわかってくれると思う

私はおばちゃんと二人で作ってたから、執事さんとはちょっと違うかもだけど


「ウズメさんはご飯作る係やったん?ラグナロクの人やって聞いたけど」

テーブルの右側、先に座ってたアマミさんが質問をしてくる


「あ、はい。他にも色々雑用をしてました」

「ふぇー…まあ、とりあえず食べながら話しようや」

「も、もう食べていい…?」

正面に座っているテラスちゃんは、ご飯が待ちきれないのかぷるぷる震えている

…うん、正直私もお腹はペコペコなんだけどね…


「ええでー、たんと食いやー」

許可が下りたとたん、テラスちゃんは目の前のパンにかぶりついた

そのままガツガツと、スープにお野菜も平らげていく


「ふぁぅ…おいひい!」

も、もう少しお行儀よく…とは思うけど

すごくお腹空いてる時に、そんな事言ってもしょうがないかなぁ

そして、そんなテラスちゃんを、優しい目で見ているアマミさん


「テラスっち助けてくれて、ホンマありがとうな」

なんだか彼女、テラスちゃんのお姉さんみたい


「なんや、この子がピンチの時に颯爽と現れて

 華麗なダンススキルで助けてくれたとか」

「そうそう!すっごくカッコよかったんだよ!」

「え…い、いや、私の方がテラスちゃんに助けてもらったし…

 一人じゃあんなモンスター勝てっこなかったよ…」

持ち上げられると恥ずかしい…


「あまりの美しさに嫉妬したお姫様から、ダンジョン奥地に落とされた、とも聞いたで」

「ちょ、ちょっと、テラスちゃんー?!」

「だってそうとしか考えられないよ!」

な、何でこんなに、テラスちゃんからの評価が高いんだろう…


「私の婚約者と浮気した…だから許せない…と言われたんですけど

 全く覚えが無くてですね…」

「嫉妬は目を曇らすからなぁ…よく似た人と誤解したとかかなぁ…」

そもそも、ユピテルさんが浮気するとも思えないんだけどなぁ…

そのへんに、あまり興味の無い人だし


「しかしまあ、美人さん、って言うよりは、かわいいお姉さんやなー、ウチの感想は」

「はう…」

どうしてこの子たちはこう、私を照れさせるのが上手いんだろうか

自分でも顔が赤くなってきてるのがわかる


「この子が冒険者になる!言うてギルド立ち上げて

 洞窟に一人で向かった時は大丈夫かいな…?と思うたけど

 やっぱ大変なことになったやないか」

おかわりをパクパク食べていた、テラスちゃんの手が止まる


「ウチもついてこうかって言うたのに…」

「いや、だってマミりん、ケーキ屋さんになりたいって言ってたし

 …あたしに付き合わせて、危険な目に合わせたくなかったし……」

テラスちゃんの言ってる事もわかる

別に冒険者になりたい訳でもない人を付き合わせて

怪我をさせたりしたらと考えると…


「……心配したんやで」

「…う、ごめんなさい」

素直に謝るテラスちゃん

二人は本当に、いい関係を築いているんだな、とわかる


「一番上の階層なら、掘り尽くされてるし

 たまに出るモンスターを速攻魔法で狩ればいけると思ったんだけど」

「やっぱ一人やと厳しいで。誰か誘わんと」

「…そう、だね」

一人で気づかなかったものも四人だから罠に気づけた、という事は

ダンジョン探索では結構ある

単純に戦闘力の強い人間が一人いればいい訳ではないのだ


「まあ、しばらくはココでのんびりしてるとええよ

 ウチは、テラスっちとの卒業旅行のつもりで来たしな」

私は、学校には行けず、おとうさんたちに勉強を教えてもらったけど

こんな子たちと出会えるのなら、学校にも行きたかったな…と、ちょっと思った


「お姉さんもな」

「…ありがとうございます」

助かる…これから、生活がいつ安定するかわからないし


そんなこんなで話している間に、お皿はみんな空になった

色々言ってたけど、この執事さんはクビにはならないな、と思う

だって、ご飯が美味しいから!


「ご馳走様でした…いずれ必ずお礼したいと思います」

今すぐは無理だけど…ホントに一文無しだし

近くの街に雇ってもらえるところ、あるかな…?


「そんなん気にせんで…

 …いや、やっぱお礼してもらおっかな♪」

何か思いついたのか、急に、いたずらっ子のような笑みを浮かべるアマミさん


「え、その…私、今、服すら無い文無しなので、払えるものが…」

「お礼の代わりに、ウズメさんのダンス見せてくれへん?」

「ああ、なるほどー、そういうことで……

 ふええええええええええええええええ?!」

え、その…またあの恥ずかしい踊りするの?!


「あ、あたし!あたしももっかい見たい!

 約束したよね!帰ったら見せてくれるって!」

むぐぅっ…

しっかり覚えていらっしゃる…


「わ、わかりました…やります……」

「「やったー!」」

笑顔で近寄り、ハイタッチをする二人

仲いいなあ、この子たち!

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