第13話 執事と誤解と少女たち
テラスちゃんの言う通りに街の方へ進んでいくと、赤い屋根、白い壁の建物が見えてきた
二階建ての、民家三軒分くらいの大きさで、場所も考えると
かなりのお金持ちなんだろうなぁ、きっと
「テラスちゃん!あれ…」
そう呼びかけようとしたところで、気づく
背中から寝息が聞こえることに
「むにゃ…」
背負っていた彼女はもう、すやすやとよく眠っていた
「…そうだよね、ほっとしたら眠くなっちゃうよね」
背中に温かさを感じながら、起こさないようにゆっくりと進む
頼られて嬉しい気持ちと、愛おしさのようなものが湧いてくる
おとうさん、おかあさんもこんな気持ちになったのだろうか
「ふぅ…」
お屋敷の、ドアの前までたどり着く
そろそろ自分も限界が近くなってきたようで、ため息が漏れる
鶏の装飾が施されたドアベルを鳴らす
「テラス様!あまり遅くなられては、お嬢様が心配して…!」
燕尾服を着た白髪の六十代くらいの男性が出てきた
たぶん、この別荘の執事さんだろう
「……どちら様でしょうか?」
私を見てそう聞いてくる
そりゃまあそうだよね
「あの…彼女がここでご厄介になってると聞きまして…」
背負ってるテラスちゃんが、彼に見やすくなるように、少し体勢を変える
「!」
彼女の顔を確認した執事さんは
「と、とりあえず応接室にどうぞ!」
部屋の中まで案内してくれた
「少々お待ちを…お嬢様をお呼びしますので」
高そうな調度品の並ぶ部屋
柔らかいソファーに座って待つよう促される
かなり汚れてるけどいいんだろうか…
多少ためらいながらも、そのまま座る
あれ…?
おかしい…あのキノコクッションの方が柔らかい
貴族さんの高級品よりも優れているとは…古代文明恐るべし……
と、そんな感想を心の中で思っていると、隣の部屋から声が聞こえてきた
『お嬢様!』
『どうしたんや執事!』
お嬢様と執事さんの会話
…言葉遣いがこの地域のものではないから、地方の貴族さんかな?
『なんか、おっぱいの大きい下着姿の少女が、突然訪問してきました!』
『え、えええ?!』
……
あ……ああああああああああああああああ?!
や、やっちゃった…!
そうだよ…忘れてたけど私、下着姿で動いてたんだった…!
上着は…無くなってる!どっかに置き忘れちゃってる…?!
『な、なんや?!どういう事なんや?!
おとんに営業かけにきたえっちな職業の人なん?!』
貴族さんにはそういう人も寄ってくるのかぁ…
確かにお金いっぱい払ってくれそうだもんね
いや、そんな感想述べてる場合ではなくて…!
『いやしかし、さすがに下着姿で営業しますかね…』
そ、そうです!私そういう目的じゃありません!
『…痴女やな』
『痴女ですね』
そうでもないですー!
『大丈夫なん?突然、えっちな部分見せてきたりせえへんかった?』
『いえ、そんな事はなかったですが…』
あああああ……こんな…こんな『宴会芸(裸踊り)』なんて
スキルがあるからあああああ!
でも、これとテラスちゃんがいなかったら助からなかった訳で…
ううううう…
『代わりに、ご学友のテラス様を見せていただきました』
『…え?』
話題が突然方向転換し、思考が停止するお嬢様
『彼女、眠っておられるテラス様を背負って来てまして…』
『そっち本題やん!なんで下着姿の話を先にしたん?!』
…そ、そうですよ!
私の話は後でいいじゃないですか!
『いや、だって気になるでしょう?!下着姿だし、なんかでっかいし!』
『そうやったな…歳とっても執事も男やもんな……
…今度からメイドさんに変えてもらうわ』
『あ、いや、それはどうかご勘弁を…この歳になると就職先が…!』
なんか色々思うところはあるけど、話を戻してくれたようで良かった
これで、テラスちゃんは大丈夫だよね…?
『ともかく、その人に会って話聞くで!』
よかっ…た……
………
……
…
どうやら、それでほっとして、眠ってしまったらしく…
そこから先の記憶は無かった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます