第8話 決戦!超巨大蜘蛛
再び、超巨大蜘蛛が見える位置まで戻ってくる
…改めて、蜘蛛の容姿を確認
黒くつやのある身体、複数の足
小さな蜘蛛は気持ち悪さが先に来るけれど
ここまで大きいと恐怖の気持ちの方が大きい
「……」
いや、やるしかない…
もっといい方法はあるかもしれないけど、それを探す時間が無い…!
モンスターの方から、こちらに気づく様子は無い
大きいがゆえに、小さい私たちに気づきにくいのだろう
私は、薬草で作った冠、薬草で作った腕輪を身に纏っている
古代の踊り子は、草花で作った飾りをつけて踊ったそうだけど
『宴会芸』スキルの効果は上がるだろうか
「じゃあ、お願いします…!」
私が前に立ち、テラスちゃんは後ろ
こんな事になるなら、壁役の練習やっておけばよかった…
「う…うん……!」
テラスちゃんも、うなづきながら赤い決意の瞳を見せる
覚悟を決め、間違えないようにしっかりと
彼女は詠唱を開始した
髮を結いあげ角髪とし
裾をからげて袴とし
玉を髪に
背には矢入れ
腕には高鞆
弓弭を振り立て
剣の柄を握りしめ
地を踏み散らし
猛り勇め
「『火矛』(ファイアスピアー)!」
また浮かび上がる、いくつもの矛の形をした炎
これが2~3回も必要だなんて、このモンスターはどれだけ強いのか…
そして、炎たちは一本も外れることなく、蜘蛛にぶつかっていく
「?!!」
巨体が揺らぎ、空気が震え、焼ける匂いが辺りに充満する
だが、しかし
「やっぱり、一発じゃ無理だよね…」
たじろぎはしたが、致命的ではない
蜘蛛は炎の飛んできた方…こちらに向かって歩き始めた
「お姉ちゃん、お願い!」
「任されました!」
……
ろくな才能も無く、おとうさんたちに、冒険者に憧れるだけだった私
そんな私が今、わずかな時間を稼ぐために、戦おうとしている
「『宴会芸』(バンクエットアーツ)!」
手に茅纏の矛を
香具山の榊を頭飾りに
ひかげの葛を襷に
篝火を焚き桶を伏せ
岩戸の前にて踊りけり
蜘蛛がこちらを向く
焼けた手足、胴体、頭…
それに見つめられる恐怖に、手足が止まりそうになる
大丈夫、怖くない…
注意を引いた5秒は動けない
後ろから、彼女の詠唱が聞こえる
私は一人で戦ってる訳じゃ無い
信じてくれてる彼女のためにも、怖がってる場合じゃない!
「もう一発…『火矛』!」
襲いかかる炎の束
連続の大火炎魔法のせいで、辺りはまるで夏のような熱気に包まれる
「!!!!!」
叫びのような音が、蜘蛛から発せられる
手足が焼けただれ、身体の一部は溶け出し…それでも…
「!…まだ動く…!」
5秒は過ぎた
理不尽に動きを止められ、攻撃を食らい続けた蜘蛛は、怒り心頭だ
それでも私が踊り続ける限り、私から視線を外すことはできない
後は、仕掛けが効くかどうか
蜘蛛は、目の前の私に噛みつこうと、勢いよく顔を近づけ…
「????!!!!???!!?」
強烈な匂いに、顔をそむけた
「…やった……!」
蜘蛛は獲物を捕食するとき、まず噛みついて、毒液を注入する
しかし、今、私が身に着けている薬草の匂い…蜘蛛は大嫌いなのである
ギルドハウスの虫除けに使おうと集めていた、清涼剤にも使える薬草だ
このサイズの蜘蛛に効くのかとか、色々と目の粗い作戦だったけど
…とにかく、賭けには勝った!
「テラスちゃん!」
「うん!いっちゃえー!『火矛』!!」
3発目の『火矛』
これでダメだったらもう、お手上げだけども…!
「!?!?!?!?!?!?!?!?!??!!!!」
蜘蛛は全身を真っ赤に燃やし、のたうちながら…
やがて燃え尽きて灰になった
「…やった!?」
「はい、やりました!」
「よ、よかったぁ…」
ほっとして、ぺたりと座り込むテラスちゃん
その容姿は、とても大火炎魔法魔法を使う天才とは思えなかった
「……あ!」
奥を見ると、彼女の強力な炎魔法の一部が、蜘蛛の巣に引火していた
その下にある、目的のバッグが燃える…!
私は慌てて、例のバッグを取りに走り出した
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます