第6話 探索と希望のエレベーター

テラスちゃんが逃げてきた方向と反対側の通路…

右の通路の探索を始めた私たち、だったが…


「ふぅ…びっくりした」

「この巨大蜘蛛、移動する時、音ほとんどしないんですね…」


その途中で、また巨大蜘蛛モンスターに遭遇した

なんとか例のコンボで仕留めた私たちだったが、その意外な隠密性の高さに驚いていた


「このへんは蜘蛛だらけだね…

 あたしの飛ばされた所は蛇が多かったけど」

焦げた蜘蛛をあまり見たくないのか、通路の奥へと歩き始めたテラスちゃん


「…待って!」

「うぇ?」

そのテラスちゃんを、背後から両手で抱きしめて止める


(奥にもう一体います!)

ここから見ると、彼女の進む先は行き止まりになっている

そしてその行き止まりには、先ほどまでの巨大蜘蛛の

倍くらいの大きさの、超巨大蜘蛛が巣を張っていた


(ふあっ?!ごめん、ぼーっとしてた…ありがと)

(い、いえ、それはいいですけど…)

(…で、でかい……!)

(変異種ですかね…)

おとうさん曰く、変異種と言って、モンスターの超巨大版が、ごく稀に生まれるらしい


(…足元に…白骨と服と、バッグが…?)

蜘蛛に捕まえられた冒険者の成れの果てが、そこにあった

肉の部分だけ美味しくいただかれた…そういう事なんだろう

脱出が叶わなければ、私たちもあそこに…


(…バッグから魔力反応があるね)

魔力反応…マジックアイテムが入ってる?


(ちょっと気になりますけど…ここは避けて行きましょう…)

(う、うん…そだね……火矛一発じゃたぶん倒せないし)

(……)

寒気を感じつつ、私たちはその場を後にした



「…ところでさ」

「なんです?」

「ウズメお姉ちゃんって…その、でっかいよね」

さっきやった、胸がぷるぷる揺れるジェスチャーを、またするテラスちゃん


「い、いきなりどうしたんです?」

「あたし、蜘蛛の大きさよりも

 お姉ちゃんの押し付けられた胸の大きさに意識が行っちゃってさ」

「あ…じゃあ、さっきの(でかい…)って、胸の事だったんですか?!」

赤い顔でうんうんとうなずく彼女

やっぱりこの子、ヘンタイドスケベちゃんだー!?


「…生きて帰れたらさ、ウズメお姉ちゃんの踊り、ちゃんと見せてよ」

「い、嫌ですよ…えっちな目で見るじゃないですか」

「あたしは見たいの!えっちな目で!

 5秒とかそんな短いのじゃなくて、ちゃんとした踊りを最後まで!」

「わ…わかりましたよ…ちゃんと生きて帰れたら、ですよ……」

「やったー!」

うう…ここでやる気落とされたら困るし、仕方ないよね…


「ま、まあ、その話は置いておいて…次調べましょうよ」

「はーい♪」


次は、テラスちゃんが逃げてきた方の通路…

左の通路を、じっくり探索する


「逃げてくるとき、何か目に留まったものとか、ありました?」

「流石に急いでたから、確認する暇なかったよ…」

右の通路には何もなかったし、左には何かあって欲しい…


「…!扉がありますよ!」

白く無機質な、両開きの鉄の扉

扉の上の壁に、黒い文字でB1・1・2・3・5・6・7と書かれている

そして、扉の横の壁には、白い三角形のマークがある

…何の記号だろ、これ?


「これは、古代文明の遺産『エレベーター』だね」

「…エレベーター?」

「建物の上下移動に使われていたマジックアイテムだよ」

上下移動………ということは…?!


「そ、それなら…ここから脱出が…!」

「いや…まだ早いよ」

テラスさんは、白い三角形のマークをポチポチと押している

…あ、それボタンだったんだ…


「やっぱり……」

あ、なんかダメそうな雰囲気…


「古代文明のマジックアイテム『機械』は

 雷の魔力で動かしているんだけど…知ってる?」

「はい!これでもラグナロク所属でしたから!」

古代人はその『機械』を使い、豊かな生活を送っていたと言われている

その文明がなぜ崩壊したのかは…長くなるので置いておこう


「この機械はボタンで動く仕組みなんだけど、雷の魔力が切れてて動かないんだよ」

「そ、そうですか……」

ぬか喜びかー…


「雷の魔力を適切な線に通せば、動かせるはずだけど…

 あたしの魔力属性は、炎と光だから…」

「二重属性?!」

今さらっと言ったけど、属性は普通、一人に一つ

二重の人間は、一万人に一人いるかどうかのはず…


「ふぇー…テラスちゃんって、努力も才能もすごいんですね…」

「でも、魔法の最大威力は下がっちゃうんだよねぇ。二重属性って」

「下がってあの威力なんですか…」

まほうのせかいすごいなぁ


「…あ、そうだ

 機械なら『雷コン』で動かせるんじゃないですか?」

雷の精霊は、なぜか『機械』に憑りつき、『機械』を動かす魔力…電力になる

どうしてそうなるのか、その仕組みはまだ解明されていない


しかし、古代文明の遺跡を探索する冒険者にとっては、有益な性質であった

様々な属性の魔力を雷魔力に変換しそこから雷の精霊を生み出す

特殊なマジックアイテムが作り出される


それが、雷魔力コンバーター…通称、雷コン

古代遺跡を探索するときに、できれば欲しいものの一つである


「動くだろうけど…持ってないー!あれ結構高いんだよ?!」

「そ、そうですよね…冒険初めだと手が出ない金額…」

機械は生活に便利なものが多く、買い集めてる貴族も多い

その機械を動かせるアイテムは、量産体制が整いはじめた今でも

結構な値段で取引されるのだ


「ラグナロクでも、持ってない方には貸し出してましたよ」

「お、そういうとこはしっかりしてるんだね」

実は、貸し出し制度始めたの、私なんですよ!

初心者さんでもギルドに入りやすいように工夫して…

…って、そんな自慢してもしょうがない…謙虚に行こう、謙虚に

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