【三章完結】地味令嬢は家族に無視され、学園で蔑ろにされても、明るく前向きに生きていけます。そして何故か『悪魔』と呼ばれる男性に求婚されました。何故!?
第36話、もしかしたら、舐めていたのかもしれない……①
第36話、もしかしたら、舐めていたのかもしれない……①
アーノルドが前に居て、隣には笑顔でアリスの身体を抱きしめるようにしながら座っているアスモデウス、アリスはただ今の状況をどのように説明したら良いのかわからないまま、とりあえずなすがままの姿でその場に座っている。
先ほどのアーノルドとアスモデウスのやり取りを見たと同時に、アスモデウスがアリスの事を心配してくれているのはわかっている。主人と言う存在を大切にしているとわかるぐらい。
あの時のアスモデウスは間違いなく、選択肢を間違えていたらアスモデウスを殺すつもりでいたのかもしれないと考えると、寒気を覚える。
『七つの大罪』の魔導書の中に居る『彼ら』は主人を大切にしている代わりに、周りの存在たちに敵意を持つ者たちが多い――以前、アリスはこの魔導書を持った時に、傍に居てくれたシロとクロが教えてくれた。
アスモデウスはアリスに害をもたらそうとしている存在ならば、容赦しない。きっと、笑顔でアーノルドを殺すかもしれない。
それを考えると余計に青ざめた顔をしてしまう。
「――アリス」
「ひゃいッ!?」
馬車の中で揺られながら、アリスは変な反応をしてしまった。
名前を呼ばれ、顔を見上げるとそこには無表情のままアリスに視線を向けているアーノルドの姿があり、その顔を見た瞬間、アリスは何故か汗を流し始める。
様子がおかしいアリスに声をかけてくれたのだろうと考えつつも、うまく反応が出来ないアリスの身体は固まったままだ。
そんなアリスを心配して声をかけてくれたのかわかるのだが。
「大丈夫か、顔色が悪い」
「あ、え、い、いや、そ、その……え、えっと、ば、馬車!」
「お、おう……」
「わ、私、馬車初めて乗りました!ふわふわなんですね、座っている所」
「馬車が初めて、か?」
「はい、初めてです!」
「……」
笑顔で答えるアリスに対し、アーノルドは何も言えなかった。
変な事を言ってしまっただろうかと、アリスはアーノルドの顔つきが一瞬にして変わったのがわかったので、思わず青ざめた顔をしていると、隣に座っていたメイド服のアスモデウスが笑いながらアリスの頭を撫でた。
「フフ、ご主人様、別にアーノルド様はご主人様に怒っているワケじゃないんですよー」
「え、ち、違うんですか?」
「馬車が初めてって事に驚いている事と、ご主人様……アリス様が予想以上に冷遇されていたんだなぁって事を考えているんですよ」
「……あ」
アスモデウスの言葉に、アリスは目を見開いた。
一応、アリスは『伯爵令嬢』と言う事になっている。
しかし、彼女は父や母から存在されていないモノと扱われ、もう数十年会話などしていないし、双子の兄弟とも話なんてしていない。
唯一、家族としてはなしているのは、リーフィア家を追放されてしまい、騎士となった兄、リチャードだけだ。
伯爵令嬢が馬車に乗っていない、と言う事はこの世界では珍しい。
寧ろ、伯爵令嬢と言う扱いではない。
アリスは再度アーノルドに視線を向けると、彼の目つきが徐々に変わっていき、明らかに何かに対して苛立っている。
「……潰すか、リーフィア家」
なんて、明らかに害のある言葉を言ってきたので、流石にまずいと認識したアリスが声をかけた。
「あ、アーノルド様!」
「……なんだ、アリス」
「あ、あのですね、リーフィア家は流石につぶさないでください!って言うか潰す気満々ですね!」
「ああ、声に出ていたか……安心しろ、完膚なきまで潰しておく」
「いや、だからやめてくださいって言ってるじゃないですか!あ、この人もある意味話を聞かない人だ」
止めないと間違いなく目の前の男は容赦なくリーフィア家を、父や母、そしてその他を潰すつもりでいるのであろう。
帰ってきた返事が明らかに笑顔で、何かを企んでいる顔だ。
これは阻止しなければいけないと思ったアリスが再度声をかけ、アーノルドに説明する。
「あのですね、もう私にとって、家族と言う存在は、リーフィア家と言う存在はどうでも良いんですよ!もう、家族には期待していないし……何より、話しかけたところで相手にしないのは向こうなんです。私は存在しない家族ですから」
「……ご主人様」
「アリス……」
「き、気にしていないですから、だから潰すって言うのはやめてください。両親はともかく、下に兄弟がいるので、路頭に迷わせる事はしたくないんですよ……」
下の兄弟は双子だったはずだが、アリスの頭の中にはどんな顔だったが、どんな存在だったか既にわからない。しかし、流石に路頭に迷わせたくないのでそれだけは避けたかった。
アリスにとって、家族と言う存在はもうどうでも良い存在。
だから、アーノルドに手を下させるつもりもなかったし、絶対に目の前の男は容赦しない。何せ、学園内では『悪魔』と呼ばれている存在なのだから。
青ざめた顔をしながら答えるアリスの姿を見たアーノルドは、静かに息を吐く。
「……お前が言うなら何も言わない」
「はぁ、良かった……」
「別のやり方を考える」
「あ、やっぱ話聞いてないなこの人」
もう一度説得しなきゃダメだと、アリスはこの時思った。
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