第12話
妖刀騒ぎのお陰で予定が少し狂ったが、ガチャから出てきたアイテムで
本日の目玉商品は強化用ナノマシン(中)。今日はこれを使って色んなことを試してみる日だ。
「成程成程……仕組みが大体分かってきたぞ」
「サンプル数が少ないのに凄いな」
「あと三つか四つくらい素材を出してくれたらほぼ完全に解析できるのじゃ」
今はリリアンがナノマシンに付与されている魔法の術式を解析している。上手くいけば自分たちで一から進化素材を製造できるかもしれないらしい。
「この進化素材とやらは複数の術式が組み合わさって出来ておるのじゃが、その中で中核を成しておる『存在の位階を引き上げる術式』。これはとんでもない代物じゃぞ」
「確かに、言われてみたらすげーことしてるよな」
「下手をすれば神すら作り上げることが出来るぞ。正教会の連中は泡を吹いてぶっ倒れるじゃろうなあ」
神すら作れる、か……スケールがデカすぎて想像も出来ん。まあ、リリアンが楽しそうならそれでいいか。
「ふう、こっちの作業は終わったぞ。それで、これを使ってやりたいことがあると言うておったな?」
「ああ悪いな。ちょっと気になったことがあってね」
前の世界では素材とキャラクターを合成する他に、素材同士を合成することが出来るゲームもあった。そして俺の
という訳で持ってきました。メディックフィクサーとかいうロボットの腕パーツと、最初のガチャで出てきた銃一丁。サンドラール式という聞いたこともないゴツい小銃だ。こいつらをナノマシンに食わせてみようと思う。
大きめの台に乗せた腕と銃に景気よくナノマシンを振りかけると、変化はすぐに表れた。
「おおー。腕としょーじゅー?がどんどん溶けておるぞ!」
「普通の容器に移し替えた時と成体デクノボーにぶっかけてみた時には反応が無かったから、多分成功したんじゃないかな?」
ナノマシンはSF作品において、ファンタジーにおける魔法のように万能の存在として描写されている。もしガチャ産ナノマシンが創作のそれと同じ性質を持っているなら、他の機械を取り込ませ情報を記憶させることが可能なのではないか?
「要はナノマシンっぽいことは何でも出来るんじゃないかってことだ」
「なのましんって凄いんじゃなー」
イマイチ理解して無さそうな口ぶりだが、そもそも俺の方だって詳しいことは何にも分からない。多分本当に知識のある人が聞いたら殴り殺されそうなことをほざいている気がする。
さて、腕と銃を飲み込んで体積が三倍以上に増えたナノマシンの中にいよいよ胎児形態のデクノボーを乗せてもらう。明日になればどんな子に育ったかが分かるだろう。元気で強い子になれよー。
◇◇◇
翌日。強化済みナノマシンを吸収して成長した新たなデクノボーの姿を見て、俺の仮説は正しかったと確信した。
肉と機械がぐちゃぐちゃに混ざりあったような胴体に銃の右腕、白い救急箱と装甲に覆われた左腕。本来は進化素材ではない銃と腕の要素が見事(と言うにはグロテスクすぎるが)に反映されていた。
素材を媒介にすれば、普通の物品でも強化パーツとして組み込むことができる。これがナノマシンだけの特性なのか、他の素材も同様の性質を持つのか、素材との相性は考慮すべきか否かなど、詳しい調査は必要だがこのデータは非常に有用だろう。
「それはいいんじゃが、こやつの見た目はもうちょっとどうにかならんかったのかのう?アンデッドみたいで好かんのじゃが」
「ガピッ、ピガガガガ……」
「わ、すっごい落ち込んでる。人をゾンビ呼ばわりはダメだぞリリアン。ちゃんと謝りなさい」
「えっ、あっそのぅ、ご、ごめんなのじゃ」
「ギギッ、ピー」
どうやら彼(?)にもしっかり自我が芽生えているようだ。ピガピガ言うたびに顔のモノアイがチカチカ点滅している。よしよし、君にはサンディという名前をあげよう。君の両腕になったアイテムから取った名前だ。覚えておきなさい。
「ピピーッ、ガッガッ」
機械が混ざっている割に随分と感情豊かだ。スピーカーでも組み込んでおけば言葉を喋れるようになっていたかな?ちょっと惜しいことをした。
「グエ?」
「おっ、メーダおはよう。ちょうど今新しい仲間が出来たから紹介するぜ。コイツはサンディ。生まれたてほやほやだから先輩として良くしてやってくれよ?……ん?どうしたサンディ?何か問題でも、おわぁ!?」
「オゴーッ!?」
「ぎゃあ!腕からなんか変なの出しとるぅ!」
けたたましいアラーム音を発しながら突然サンディが暴れ始めた。正確にはひょっこり現れたメーダを攻撃している。
まさかメーダを敵だと認識したのか?とりあえず全員で彼を取り押さえ、メーダは敵ではないと懇切丁寧に教え込んだ。どうやら俺とリリアン以外は全員敵だと思っていたようだ。さ、先が思いやられる……。
案の定、今度はベロスにも襲い掛かった。取っ組み合いの大喧嘩になったため病み上がりのメーダがお説教をしに行く羽目になってしまった。いつもあなたには助けられっぱなしです。毎度毎度本当にすいません。
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