エモーショナル

 エモーショナルという言葉自体……実は苦手だったりする。


 曖昧な響きなので少しばかり敬遠していた。

 しかし、最近その片鱗を味わったような気がする。


 時々、無性に巨大なものが見たくなる事が有るのだ。


 それは巨大なダムだったり、神社の見上げるような御神木だったり、波止場に停泊している船舶だったり。


 この曖昧模糊とした感情がエモーショナルではないだろうか? と思ったので、日常の中にもこれに似た感情を奮起させる『何か』は無いか? と少し注意して散策をしていた。


 その結果、何でもない物に芸術的概念を抱くものが全てそれに該当するのではないかと視点を切り替えて見回した。


 マンホール、廃墟、立ち退き直前の廃屋、撤去待ちの柵や階段、山のように詰まれたタイヤ、無秩序に電線が引かれた電信柱、放置されて久しい自動販売機……。


 何でもない、廃れて、忘れられて、取り壊されて無くなってしまう物体に儚さが付きまとう。……そんなものに、一瞬だけの美しさを感じるようになってきた。それは錯覚だろう。きっと錯覚だ。


 その儚い物に寄せる想いがエモーショナルの根源ではないかと。


 これもまた、今までに何度か記事で書いている思秋期でしょうな。


 私の感性が偶々、寂れたものに美しさを感じ始めていただけで、もっと活動的な人間なら蕎麦を打っているかもしれない。古民家カフェを開いているかもしれない。これも何回か記事で書いている。


 放ったらかしにされて廃れいくものに感じる美しさに自分を投影しているから琴線に触れたのかもしれない。



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