六曜を意識した話

 実はここ二週間ほど、六曜というものを意識しながら生活していた。


 とは言っても、期待するようなスピリチュアルな話ではなく、『昔の人間の時間や曜日感覚』について興味が出たので少しだけ体験してみようという試みだった。


 結果から言うと、鼻で笑っていた迷信が真顔になる心理学に繋がっていた、というオチだ。


 先勝、友引、先負、仏滅、大安、赤口。

 これからが日常に浸透していることで、人々は逸る心を抑えて時には慎重に、時には効率よく生きていたのでは思った。


 一応簡単に説明すると、六曜とは……いや、もっと簡単に説明すると、明治時代以降も連綿と続いて現在でも一部の界隈で用いられるこの民間信仰は――



 先勝:午前中に為す事を為せばよい結果が出る

 友引:葬儀を行うのならこの日が良い

 先負:大切な事は一旦保留して様子を見よう

 仏滅:何をしても裏目に出る悪い日だからおとなしくするのが良い

 大安:何をしても良い結果に出るのでアクティブに行こう

 赤口:祝い事は避けた方が良い


 という意味がそれぞれある。

 これを頭の隅っこに置いて、本日の六曜を意識して生活してみた。


 全く六曜を守る気もなく生活していたのだが、だからこそ気が付いたのかもしれない。


『誰も見ていなくとも悪いことはできない。お天道様が視ている』

 ということに。


 これは一種のカラーバス効果だ。

 カラーバス効果とは、意識している事柄ばかりが何故か耳目にしてしまうという心理効果だ。


「今日は先勝だから先に相手先に出向いて契約を取り決めよう」

「今日は友引だから、もしかしたら思わぬ人の訃報が公式から発表されるかもしれない」

「今日は仏滅だから怪我をしないように注意しよう」


……などだ。


 勿論の事、私は信仰心が薄い人間なので「今日は赤口だな」「そういえば次の大安はいつだっけ?」程度で、六曜の通りに意識を強くして生活は全くしていない。


 その私が、半分以上、興味本位でごっこ遊びをしているだけの私が、これは一種のカラーバス効果だと分かった途端に、これは昔の人が信仰心に篤い中でも、自分を律する術を心得ていたのではないかと思った。


 そうすれば無用な逸りでミスもしないだろうし、無謀な博打も控えるだろうし、商談の段取りもしやすかっただろう。


 これは全くの素人の見解なので専門の学問を修めている方からすればバカバカしいと一笑に伏されるだろう。


 今回の記事は、手帳の片隅に書かれている六曜が気になった人間が気まぐれで遊んでいただけの結果報告だと思ってほしい。

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