最強の拳銃或いは銃

 拳銃活劇小説を書いている手前、或る程度は銃火器については語れるが、人に解説できるほどの知識はない。好きな銃は有っても、それは『実用』ではなく、ロマンとしての……壁に飾って楽しむ銃と同列の好きという感情に近いからだ。


 という前置きをして。


 「最強の銃は何ですか?」


 と、よく質問されるが、少し前なら「もっと定義を狭くしてください」「どのような状況の話ですか?」などと真面目に答えていたが、最近では「未知の惑星を探検する時に携えたい一挺。それが『あなたにとっての最強の銃』です」とやんわり答えるようにしている。


 何処の誰が何を以てどういった状況で『最強』を求めているのかという広がりが無限なので話は終わらないことを知っている。


 それに何より、若い頃は軍隊や特殊部隊でプルーフされている銃火器のみが『銃である』と息巻いているお若い方が、装弾数や停止力やメンテナンス性や命中精度や生産性や汎用性などで好きな銃火器を羅列するのだが、面白い話に、一周回って年季の入った銃火器オタクの方は『自分が普段からコンシールドキャリーするのなら?』という観点で好きな銃火器を語る傾向が多い。


 私が三十二口径の自動式や短銃身の回転式が好きなのも、もしかしたら知らないうちに一周回っているからかもしれない。


 確かに、ずぶの素人よりはたくさんの銃火器を知っているかもしれない。

 しかしそれは活劇小説を書く上で資料として何度も同じ資料を読み返しているうちに覚えた旧いデータだ。


 私は最新式の銃火器には食指が動きにくいので、常に最新鋭に興味を示しているわけではない。必要な時に必要なだけの資料が有ればいいと考えている。情報として今現在の銃火器の潮流を知ることはあっても、それが作中で活かせない可能性が有ると優先順位は下がる。


 大元をただせば、創作の中の銃火器なのだから、見た目はコルトガバメントでも中身は百万発入りのコスモガンでもいい。要点はガバの姿をしていながらなぜ中身はコスモガンなのか? というギミックを読者が興味をひかれるような嘘八百を並べて尤度の高い文章を紡ぎ、エンターテイメントとして完成されば満足だ。


 残念なことに私は銃火器のスペックが羅列された小説はどうしても目が滑ってしまう。「つまるところ、その凄い銃を使ってどんなアクションを見せてくれるか?」または「どのように見せるか?」という点に傾注してしまう。


 銃火器が全ての勝敗を決する物語は、個人的には問題視している。銃は人を殺さない。人が人を殺すのだ。


 飽く迄、銃を使う人間を書きたい。その心情を書きたい。その中で、何故その人物がそんな珍妙な銃を相棒としているのかを書きたい。


 創作をしている人間としての視点から見てしまうので、物体としての銃火器をスペック羅列だけの主人公に据えた物語には一歩引いてしまう。

 勿論、銃火器が登場するその作品が【独白するユニバーサル横メルカトル】的な設定だと言うのなら興味は掌を返す可能性が高いが。それは是非とも読んでみたい!


 簡素ではあるが、ここらで筆を置きたいと思う。

 ……これ以上書くとお気持ち表明の大開陳になりそうな予感がする。

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