EDC
私はEDCを愛好している。
……と言っても、ナイフやライトの類ではなく、手帳やハンドタオル程度のものだ。
EDC。
Everyday Carry。
毎日持ち歩く道具を総じてそう呼称する。
EDCと聞いて海外の愛好家がディスプレイして画像に収めたもの想像する人には説明不なのかもしれない。
日本国内に於いては、海外のように命に直結する非常事態はあまり想定されていない。それは平和と利便性の恩恵に与っているから他ならない。街中を歩くのにコンパクトオートと予備弾倉、ナイフ2本以上、タクティカルペンを常備しないといけない地域は国内には無い。そもそも、違法だ。
できるだけ少ない物を、シンプルにスマートに。
EDCの組み合わせはこれに限るだろう。
スマホとコインケースだけ有ればいいという方も居られるだろうし、プライベートでも仕事でも通用するように筆記用具やスマホやタブレットのアダプターやケーブル、小型の外部記憶などを持ち歩く方も居られるだろう。
ライフスタイルにより様々な選択が広がるEDCであるが、今回のテーマとしてはもう少し状況を絞って、【国内都市部での日用を意識した組み合わせ】に焦点を当てたい。
日本では刃物の携行は軽犯罪法に抵触するのでお勧めできない。刃渡り6cm以下なら問題ないと仰られるだろうが、それも職質下警官の胸先三寸で決まる。また、どんなには渡りが短くとも、ロック機構を具えていれば違法だ。
持ち歩きたい気分はよく分かるが、ナイフだけはお勧めできない。状況によっては学童用ハサミでもアウトなのだ。日本人の刃物アレルギーはそれだけ異常だ。何もしていなくともナイフを持っていますと言うだけで連続殺人犯と同じ目で見られる。私も過去の苦い記憶からナイフの携行は早々に止めた。
何も無くとも、ハンカチとポケットティッシュは誰でも持っている。「それくらい当たり前だろう」と思われるかもしれないが、EDCとは本来、そのレベルまで軽いモノなのだ。
最近では折り畳みの買い物袋や折り畳んだレジ袋をバッグに入れている方もいるだろう。日が落ちてから帰宅される方は小さなライトをキーホルダーに取り付けているかもしれない。今では少数派になったが、自然破壊を防ぐためや無意味な伐採を止めるためにマイ箸なるものを常備して持ち歩ている人が居た時代もある。
ミニマリストを目指す方で手ぶらでも問題無いと放言される方が多い。それについては私は何とも思わない。考え方は人それぞれだ。ただ……ただ、少し考えてほしいのは、手ぶらが一番と放言しておきながら、いざという時に自分の不用心や不用意を全く悔いず、他人から涼しい顔をして物を借りておいて散々使っておいて「ほら、手ぶらでも問題ないだろ」と振舞うのは個人的にどうかと思ったり。
夏になり、殺人的に暑くなり、何もかもを捨てて身軽になりたいと思う機会が多くなるだろう。
そんな時に本当に必要な物だけ身に付けてフットワーク軽く行動できれば少しはストレスが軽くなるのでは?
……などと、ポケットの少ない涼しい衣服に着替えながら考えていた。
それまで着ていた衣服のポケットの中から様々な物が出てくる出てくる……。
人間は普段全く使わない物を携行していて、たった一回でも、その物で用が足せたのなら、その物は自分にとって必要な物だと勝手に思い込む動物だ。それがEDC沼の第一歩だ。
余談だが、最近の職務質問の対象は百円均一の小型ライトも範囲に入るらしい。コロナ禍に生まれた、フィンガーリングとⅬ字型の金具が一体になっただけの、ボタンを押すためだけに作られたシンプルなEDCツールも警官に見つかると面倒になるらしい。
それはそれとして、皆様も自分が普段からポケットやバッグに【万が一】や【何かの時に備えて】や【あると便利かもしれないから】という考えで何気なく放り込んでいるアイテムを全部並べて眺めてほしい。
その素晴らしいアイテムたちにさらに何か足したくなりませんか? これはもう不要かもしれないと改めたい物はありませんか?
さあ、どうです?
EDC沼はいいぞ。
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