災害性ストレス、ご存じですか?
私は普段はちゃらんぽらんなマダオだが、防災に関してだけは少しばかり言いたいことが多い人間だ。
と、言ってもプレッパー気質の防災マニアではなく、過去に何度か被災した経験から、非常持ち出し袋くらいは用意している程度。
消防庁の非常持ち出し袋のリストは最近は改善されたが、いつまでも昔のままのリストだと思い込んでいると少し難儀するかもしれない。非常持ち出し袋に少しでも興味を持たれたら消防庁のHPや自治体発行の防災ハンドブックを見てほしい。
今回は、被災直後から訪れる災害性パニックについて話そうと思う。
災害性ストレスとは急性症状で、巨大災害に直面して何とか難を逃れた時に最も多く発症する。
具体的な症状として原因不明高血圧、耳鳴り、眩暈、消化器系の不調、不整脈、不眠、うつなどだ。
非日常に晒されて脳がパニックを起こして自律神経が暴走している状態に近い。
個人差により一過性のものあれば慢性化するものもある。
私も二十代の頃に、健康体を誇っていたが災害に遭い、2日後から突然、『薬が効かない』不調が噴き出て、3日ほどまともに歩けなかった。味覚も鈍くなったと思う。
体力がある若い世代や、持病や障害を抱えていない方は体力と気力で何とかカバーできるだろうが、避難して生き残ったのに避難所で突然死を迎えるお年寄りの数は決して少なくない。災害性ストレスが原因の一つだと言われている。
最近は災害医療や災害心理学などの技術や学問も進み、災害性ストレスは必ずやってくるという認識が広まっている。
生き残ってしまった、助けられなかった、捨ててしまった、などの罪悪感がさらに拍車をかけて避難所での災害関連死に繋がる。
どんなに防災の備えが万端でも災害をゼロにはできない。一部の防災促進団体では防災ではなく減災という言葉を用いて、意識の向上に努めている。
確かに、ゼロにできないので減災が適切かもしれない。
兎角、装備や備蓄だけではすべてを守ることはできない。
勿論、災害の記憶が『世間では薄くなっても』、被災した人間からすれば昨日の事のように記憶されている。食卓に握り飯が出ても、避難所で……一番苦しい時に食べていたものが握り飯だと、味覚や嗅覚、視覚が古い記憶と深く結びついてフラッシュバックを起こして握り飯嫌いになるばかりか体調を崩してしまうこともある。(なので私は非常食は好きな食べ物だけ詰め合わせてはいけないとよく言う)
少し前の防災ハンドブック的な書籍では災害性ストレスはあまり言及されていなかった。
人間が精神的に弱くなったのではない。それを重要視する余裕が少なかった。
近年では時代も変わり、個人のプライバシーをいかに守るか? という問題から、様々な『避難所でも不自由の軽減』が模索され、実験されている。
それでも災害性ストレスだけは防げないだろう。防ぐのは難しいと思う。耐えられる人間は少ないと思う。避難所に逃げてきて率先して直ぐにリーダーシップを発揮している剛の者でも、何かしらの使命感や義務感で以て勢いで動いているだけで、数日遅れで、ふとした拍子に気が抜けて寝込んでしまうこともある。
どうか、非常持ち出し袋と非常備蓄だけで満足しないでほしい。
いつの世も、どんな場面も、予想していない体調不良が思わぬ伏兵となってあなたの道を阻害する。
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