スナブノーズ

 個人的にスナブノーズが好きという贔屓目を引いても、護身用やホームディフェンスではDAのリボルバーが最適だと思っている。


 オートだろうとリボルバーだろうと、民間人やオフィサーの護身用としては激しい銃撃戦は滅多に起きない。頻繁な再装填もシューティングレンジにでも行かなければ経験は少ないだろう。


 FBIも嘗てはS&WにFBIスぺシャルという3インチモデルのリボルバーを製造させていたくらだ。普段の護身用としては銃身が短く携行に適していてほしいが使う時は少しでも銃身が長い方が有利という微妙な折衷案から考案されたのだと思う。勿論、今では38口径6連発は米国の司法機関では使われていない。(余談だが、筆者はFBIスペシャルが好きすぎてコクサイのM10FBIを買い込んでインドアで使用していた)


 紙幅は限られているので、停止力の信仰は別としてテーマとする。


 リボルバーは安全装置が無く、引金を引けば直ぐに撃発し、不発でももう一度引き金を引けば次弾が撃発される。弾倉ではないのでリブが無い。ということは、バネがへたる心配もしなくていい。これだけ見てもリボルバーを推したい。


 どこで拾い読みしたか、嘗ての米国でのホームディフェンス講座でリボルバーの活用法として、『2発一組』で発砲するというのがあった。ダブルタップの流用だ。初弾はスネークショット。これで近距離の悪漢の顔や胴に向けて発砲して怯ませて、次弾のソフトポイントで命中させて、その隙に逃げるというものだ。リボルバーを戦うピストルではなく、逃げる時間を稼ぐ道具と見做した使い方だ。当時、これに似た方法が沢山、生まれた。オートでは実包が詰まった弾倉を差し込みのまま、抽斗の奥に仕舞って、いざ使う時になると、弾倉のバネがへたって装填不良を起こしたり、パニックになってスライドやセフティの操作を忘れて居る場合が多い。

 対してリボルバーは実包を詰めたまま、抽斗の奥や金庫の中に置きっぱなしでも相手より素早く掴むことができれば、辛うじて生き延びれられる可能性が高くなる。


 訓練された、戦う人間の使う、高性能な、それでいて補給の心配をしなくてもいいピストルとは違う。いつ使うか分からないが、使う時は『自分が生き延びられれば良い』道具だ。能動的に使うのではなく、受動的な道具。自ずとピストルの待機時間が長くなる。


 その国の法律や州法もあるだろうが、現在でもS&Wは22口径で7発以上装填できるスナブノーズを製造販売している。勿論、他のメーカーも差別化こそ図っているが、民間向けにスナブノーズを製造販売している。


 現場で働くオフィサーや戦場の真ん中の兵士ならば護身用としてサイドアームとして強力な多弾数が採用されるのは当たり前だ。


 だが、自宅や街中では弾頭の撃ち込み過ぎは……過剰な防衛として裁判に負けてしまう事が多い。緊急避難的に50口径で撃って相手を撃ち殺してもオーバーキルとして扱われる場合が割と多い。


 そこで、弱装弾や小口径で怯ませて、或いは負傷させて行動不能にさせて難を逃れるのが消去法で有利だったりする。致死たらしめる威力は時に足手まといになる。


 今のところ、日本国内では縁の遠い話だが、国内で銃砲に関する法律が軟化してコンシールドが許可されたのなら……? と【黄色い花の紅 】を読みながら耽った次第。


 これは私個人のスナブノーズ大好きを語っているだけなので、護身用火器に一家言ある方々は私の与り知らぬ場所で大いに語ってほしい。


 忘れてはいけないのは、現在の38口径でも100年前の38口径でもバイタルゾーンに当たると凄く痛いという事実だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る