かつてソロキャンと呼ばれたもの

瘴気領域@漫画化してます

ソロキャン

 ソロキャン――と呼ばれるアクティビティが流行ったのは21世紀のはじめ頃だという。

 それはただ、ソロ単独でキャンプを楽しむという意味だったのだそうだ。


 しかし、23世紀に至った現在ではそうではない。

 コンソールを操作し、完全自律式テントの床を透明にする。

 すると、眼下には真っ白な塩で覆われた荒野が広がっている。


 高濃度の放射性物質を含んだNaCl。

 それに覆われた大地に近づけば、純人類など数秒で血を吐いて死ぬ。


 テントの壁を透明にする。

 360度が見渡せる空間に、私はふわふわ浮いている。

 あちこちに、私と同じソロキャンが浮いている。


 反重力装置に、太陽光と地磁気発電。

 それから排泄物を完全にリサイクルしてくれるカロリー自決装置。


 そして、コンソールを叩けば自由大地時代の無数のコンテンツ。

 200ゼタバイトに及ぶそれは、文字通り一生かかっても消費しきれない。


 数百メートル先のテントに手を振ってみる。

 当然、反応はない。

 みんな、みんなソロ孤独だから。

 ソロキャンに引きこもっているから。

 どこまでも続く青い空に、引きこもっているから。


 無数に浮かぶテントの群れの中で、私は今日も滑稽に手足を振り回す。


(了)

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