第12話優花の過去②

 あっという間に学校を転校する当日になってしまった…。手紙を書こうか迷ったけど結局、書けず終い。何も出来なかった自分に無性に腹が立ったが後の祭りだった…。


 私の最後の登校日…。クラスの皆から転校する私にお別れの品や寄せ書きを貰った。私からはクラスの皆に筆記用具を…。


 彼とは一言も話せないまま学校が終わってしまった…。自分の不甲斐なさに泣きたくなる…。私達家族はこの町を去り新しい転居先へ向かった。


 新しい家に着いてからようやくクラスメイトから貰った物を確認。みんな色々な物をくれた…。下敷きや鉛筆…手作りの人形等…。   


 そして彼が私にくれた物はうさちゃんの消しゴム。私がうさちゃんを好きなのを覚えてくれていたみたいで、そんな些細な事だけど嬉しくて涙が止まらなかった。


 寄せ書きにも目を通していく…。彼の寄せ書きの言葉は、


『新しい学校でも頑張ってね。あんまり話せなかったけどまた会えたらうさちゃんの話をしよう!うさちゃん好きの同士よ!』


  その時初めて彼もうさちゃんが好きだったのだと気付いた。そうじゃないとあの鉛筆持ってる訳無いよね。彼は自分の大切な物を泣いていた私にくれたんだ。


 私の初恋…。私はまた彼に逢いたい。そしてこの初恋を実らせたい。 そう思った私の性格は劇的に変わった。積極的にアイドルのオーディションを受け見事に合格。勉強もしっかり頑張った。 


 一心不乱に頑張ったお陰でアイドルとしての活動はありがたい事にかなりの人気を得られる事になった。


 そして、高校を機に一人暮らしを始める。勿論あの町に住む事にしたの。昔の友達に会って彼の事を聞き、彼が行く高校へ入学する事も出来た。入学の際クラス分けの名前を確認すると彼の名前と私の名前が同じクラスにあった。


 運命が味方してくれてると思った。


 でも入学後もなかなか喋る機会が訪れなかった。積極的に行くつもりだったのに彼を見るとドキドキして行けなかったんだよね…。


 そんななか修学旅行に急遽行く事に決まったのだ。何でも政府内で突然そういうのが決まったとの事だった…。


「チャンス!頑張れ優花私っ!」


  意気込んで居た私を嘲笑うかの様に旅行先に向かう途中で飛行機が急速に傾き…宙を舞う人もいた。何でこんなことに…?怖い…怖いよっ、豊和君…


 そう思い彼の方に視線を向けて…豊和君の姿を視界に入れた瞬間…私の意識は遠くなったんだ…。



******


  ─意識が戻った時に辺りを見渡すと何処かの海岸だった…。そしてこちらに向かって慌てて走ってくる豊和君の姿…。


「あわわわわ、ゆ、夢かなっ!?私に向かって豊和君が走ってくるぅぅー!?何で!?どうして!? ―待って待って!?こ、これって…ぎゃ、逆にチャンスかも?この際、ここがどこかなんて些細な事…。私の気持ちを伝えるには絶好のシチュエーションよね?耳に聴こえるのはさざ波の音。そして2人はそれをBGMにき、きしゅ… い、イケル!やるのよ、私ぃぃぃーーー!?」


  豊和君に視線を戻すと既に私の目の前には豊和君の姿が…


 ―そして…次の瞬間、私の視界から豊和君が消えた…。


「…えっ!?」


「くそっ!文句は後で聞くからっ!」


 私の足元から豊和君の声…。


 下に視線を向けると…しゃがみ込み何かをしようとしてる豊和君と……私?


「ええっ────────!?どうなってるの!?な、何で私がもう1人っ!?何で何で何で!? よ、よく見るとこのおへそに繋がってる光る紐みたいなものは何!?」


  混乱する私を尻目に豊和君は私のブレザー、ブラウスのボタンを外していく…。


「ちょっ!?ちょっちょっちょっ、ちょっと待って待って!?と、豊和君に毎日いつ見られてもいいように可愛い下着は着けてるつもりだけどっ!?きょ、今日は勝負下着じゃないからっ!?―って違ーう!?そうじゃないでしょ、私ぃぃぃ〜」


  ─ブラジャー胸上へとズラされ…


 ぷるん…ぷるるん…


「わ、私の胸ー!?胸が露になってるぅー!?まままま、待って!?ま、まだ早いよ!?こ、告白もまだなのに…。あっ!私のおっぱいがぁぁー!?あっ…あっ…きしゅ…きしゅされてりゅぅぅぅ!?わ、私の唇…ファーストキス…感触が何も伝わって来ないよぉー!?」


 ― って、私の頭は混乱していて…若干ピンク色だった事は認めます…。豊和君の行動は私を全て私を助ける為だった。必死になって私を助けようとしてくれている。私は息して無いんだなと分かる。やがて…


「…だ…めか?……ゴメン…ホントゴメ…ン」


 豊和君がそう言葉を洩らした瞬間…


 私は引っ張られる様に私に吸い込まれていった……。


  ─そして…目が覚めると知らない天井。木の枠、土や葉っぱ等で作った天井…。上体を起こすと私の体は少しユラユラと揺れる。


 何かなと見ると竹で作られたハンモックの上に寝かされていたみたい…。全て手作りの様に見える。


 ハンモックから降りて、入り口と思われる場所からは火の灯り?と、地面に置かれたペットボトルのお茶。そして地面に書かれた言葉を見る…。


「…ホント…あの頃と貴方の優しさは変わってないんだね…。よし、現状の把握からしないといけないけど折角豊和君が傍に居る…。頑張れ私!やるのよ、私!」


  積極的に行くから覚悟してよね?私はそんな思いと共に彼の元へと向かった…。



「豊和君…必ず…堕としてみせるからね?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る