第11話優花の過去①
豊和君は憶えていないだろうな…。
小学生の時に私にしてくれた事なんて…。
―それはちょっとした事だった。クラスの男の子達の悪ふざけ…。当時流行っていたウサギのうさちゃんというアニメのキャラの鉛筆を男の子達に取り上げられて折られてしまった…。当然、私は泣いてしまった。
だって、とてもお気に入りだったし…。
先生が近くに居た事もあり男の子達はすぐに先生に怒られて泣いて謝ってくれたのも憶えてる…。
その出来事はすぐに男の子達の親にも伝わり弁償という形で、その日の内に私の家にその男の子達とその親がやって来て《鉛筆は》返して貰ったんだ…。でも…うさちゃんの鉛筆は初回生産分だけの限定販売だった…。だから同じ物は売り切れてしまっていて無かったんだよね…。その時はとても…とてもショックだった事を今でも憶えている。
その翌日…。気分は優れないけど学校へ嫌々ながら向かったんだよね…。
「昨日は災難だったね。アイツ等考えて行動するタイプじゃないから…」
「…そうそう」
「男子って子供っぽい所があるから」
「まあ、僕達も子供だけどね?」
学校に着いてすぐに私は男の子と女の子に話し掛けられた。同じクラスの末広君と
「…う、うん」
「あれ、お気に入りだったんだろ?」
「っ!? …うん」
「だから、ハイッ!あげるよっ」
─可愛くラッピングされた物を末広君から手渡された。
「…えっ?」
「あげるって言ったんだよ?俺には必要無いものだからさっ!」
「あれ?豊ちゃんもアレ好きだった…もがもがっ―」
「黙ってような、凛?」
「でも…私…こんな貰えな…」
「良いから良いからっ!内緒なっ!要らないなら捨ててくれて構わないからっ!ほらっ、行くぞっ、凛」
「―もがもがもが…」
私がソレを返す前に末広君は田原さんの口を塞いだまま先に自分達の席へと戻ってしまった。 私は暫くボーゼンとしていた気がする。
何度か返そうと思ったけどあんまり話した事が無い事と男の子に話掛けるのが恥ずかしくて返せなかった。学校が終わり家に帰ると末広君から貰ったラッピングされた物が気になった。
『要らないなら捨ててくれっ!』
―と、言ってたしたいしたものでは無いよね?高価な物なら勇気を出して返そうと思い開けてみる事にした。
ペリッペリッ!
─っとテープを剥がしてみると中には一言書かれたメモ用紙と私が折られた物と全く同じあのうさちゃんの鉛筆が…。
【うさちゃん好きは泣くより笑えってうさちゃんも言ってるよ】
メモに書かれたその言葉を見て私は笑ってしまった。心が温かくなった。私はその2つを大切にしまい込んだ。私の宝物…。別の事で彼に返そう、そう思った。
チョロいとか言われても仕方無いけどその日から彼に惹かれた。
その日から彼を目で追う事も多くなった。
彼はよく田原さんと一緒に居る事が多いだよね。どうやら家が隣で2人は幼馴染みみたい…。…羨ましいな。
しばらく経っても私はまだ彼とは話せないでいた。目で追いかけたり、心の中で彼に話し掛けるだけ…そんな日が続いて過ぎ去っていき…そして…
そんななか私は父の仕事の都合で転校する事になってしまったんだよね…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます