第10話都合がいい島
昼御飯に鳩の蒸し焼きとミニトマトを食べた俺達はまず夜御飯の確保に動く事にした。
森の中心へと向かうとまた見た事がある野菜ばかりが視界に入って来る。キャベツにジャガイモ、サツマイモだ。
やはりこの島は何かおかしい。下手に知識がある分それが分かってしまう…。知らなかったらラッキーで済むのだろうけど…。都合良くこんなに普段スーパーで見かける様な野菜が生えてるいる訳無いんだよな…。
俺は当初、昆虫でも何でも食べれるモノは食べる覚悟でいたのだが…。ただ生き延びるという点ではこんなに心強い事は無いんだけどね…。
「豊和君。この島凄いね!キャベツにジャガイモ、サツマイモ迄ある~!」
「…本当だね」
優花は嬉しそうに笑っている。まあ、優花が嬉しそうだからいいか…
「やっぱりこれも普通は無いモノなんだよね?」
「うん。まぁ、考えても仕方無いし分からない事だらけだから美味しく食べて快適に暮らしていけると前向きに考えようぜ!」
「うん♪」
「―取り敢えずまた野菜は食べれる分だけ取るようにしようか?」
「了解で~す!」
野菜をバッグに詰め周囲を探索。リンゴにミカン…。最早何でもありだなこの島は―と思いつつもしっかりと果物も収穫しておく。それにしてもやっぱり日中は森の中でも暑いな。
「優花、ここら辺で少し休憩して水分補給をしようか」
「うん」
「はい。先にどうぞ」
先日優花に渡したお茶のペットボトルを水筒代わりにして煮沸済みの水を入れてきた物を優花に渡す。
「ありがとう……んっ…ごくごくっ…はぁ~生き返るね…はい豊和君も」
「サンキュー……んっ…ごくごくごくっ…ぷはー…ホント生き返る」
「…ぁっ!?」
「んっ、どうかした?」
優花はどうかしたのか?顔が赤い気がするけど…
「う、ううん。何でも無いよ」
「そ、そう?それにしては何か焦ってるというか…」
「べ、べべ別にそんな事…ないよ…」
そう言いながらも何か落ち着かない様子の優花。チラチラと目線がある一点に向かっている様な…
はて?
……あっ!
「間接…キスか…」
「気付いても言わなくてもいいんだよ豊和君!?私だけ意識しているみたいじゃん…」 「わ、悪い。でも、ほら、アレだ!人工呼吸だってしたわけだし、他に水を入れる容器もまだ無いし、サバイバル中だから気にしすぎたら…」
「よ、余計に恥ずかしくなってきたんだけどっ!?それ位私も分かってる…もん」
「え〜と なんかスマン!」
恥ずかしさや照れ臭さから水を口に含み視線を優花の顔から下に逸らして…
「ぶぅー! ゲホッゲホッ…」
「大丈夫豊和君?」
優花が慌てて近付いて来てくれた。―んだけどそれが不味かった。大丈夫と言おうと顔を上げると丁度目の前には優花の胸。
汗でシャツというか…とにかく俺が貸した服が透けて見えているのだ…
「ゆ、優花っ!む、胸!?」
「胸? ……あっ!? ととととと、豊和君のエッチ」
「ち、違っ! み、見たくて見た訳じゃ…」
俺がそう言うと優花の目が細くなり…コレってジト目ってやつだよな?俺何かマズッた?
「…私のは見たく無いって事?」
「それは違う!―って言うか見たいか見たく無いかで言えばそりゃあ興味はあるけど、とにかくほらっ、水分をもう少し取っておいたら? ハイッ!」
「まだ話は終わってないけど?」
「か、勘弁してくれっ!?―ってちょっと待って…アレは…」
「誤魔化した…」
「良いから…ほらっ、あそこ見てみて!」 「!? …アレは何かな?」
「…山羊…だな…多分…」
「山羊迄いるんだねぇ」
「まあ、たまに無人島のサバイバル動画でも山羊がいる時はあるけど…」
「そうなの!?」
「ああ、サバイバル動画では捕まえて捌いて食べてたよ。食べきれ無い分は確か燻製にしてたっけっ…」
「じゃあ…捕まえるの?」
「う~ん。弓矢を作るか、罠を作るか…それとも山羊を飼うかになるよな…」
「えっ!飼えるの山羊!?」
「ああ、準備が当然いるけどな…。それにもしかしたら他にも山羊がいそうだしな。一匹だけとは思えないし…。それに何と言っても牛と違って消毒しなくてもそのまま飲めるんだよ、山羊の御乳は…。」
「そうなのっ!?」
「うん、味は確か母乳に近いとか、人によっては野生的な味とか言ってる人もいるけど、こんな所で摂取出来る栄養と考えればかなり貴重かも…」
「ぼ…母乳/////」
「優花…頼むから…そ、そこに反応しないでくれる?」
「そ、そんなに反応していないからっ!?」 「あ、ああ…」
「もう~ 豊和君の…馬鹿ぁ、スケベ」 「ええーっ!?今のは優花がスケベな事を考えてたんじゃあ…」
「何か言った?」
ギン!!
鋭い優花の視線…これは黙れと言う事だな…
「―いえ、何も言ってません」
女性に逆らうものでは無いと認識させられる出来事だった。女性は怒らせてはいけないよな…。まぁ、山羊の件は一旦置いて置くとして…休憩が終わったら拠点に戻る事にするか。
一応拠点への帰り道に仕掛けてる罠を確認してからな。
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