第8話無人島生活3日目

「……んっ………んんっ…」


  すぐそこには無防備に眠る美少女が…。しかも国民的アイドルといっても過言ではない女の子。決して一般人でモブの俺なんかと交わる事の無い道を進んでいた女の子が手を伸ばせば届く距離で眠っている。そして、そんなに近い距離に居るという事は当然彼女の艶かしい寝息が耳に入ってくるわけで…。


 ―って、眠れるかぁぁぁーーー!!しかも彼女からはとても甘く鼻腔を擽る花の様な香りがシェルター内を充たしている…。 何故だっ…!?漂流してた筈だよね?この島に流れ着いたんだよね?


 ―おかしくねっ!?  


 俺は試しに自分の匂いをくんくんと確かめると当然というか…汗臭い。そりゃあそうだよな。シェルター作ったり、ハンモック作ったり、色々していたし、汗位かくわな…。


 コレが世に聞く女子特有の甘い薫りというやつなのだろう…。 そんな事を考えながらシェルターの入り口の方に視線を向けると外は明るくなってきているのが分かる。優花を起こさない様に静かにハンモックを降りた俺はバッグから着替えとタオルを取り出し拠点近くの川へと向かった。



*****


 ―チャプッ…


 川の水を手で掬う。かなり冷たい。川の水って冷たく感じてしまうよな…しかし外の気温は温かい為、水浴びを行う事にした。体もちゃんと清潔にしとかない病気になったりしたら大変だしな。


 素早く服を脱ぎ全裸に…。足からゆっくり川に入り寝そべり浸かる。川の深さは30センチもない。


「うおっ…ふぅ〜 冷たいけどそれは最初だけ…慣れると気持ちが良いもんだな…」


 川で汗をかいた体を洗い流しついでに食料も探す。川の中の石をハグるとエビやらカニが姿を見せる。エビは網とかなら簡単に獲れるだろうが今はない…。試しに獲ってみようとするが…ピュンピュン素早く逃げていく。うん、無理だな…。


 カニなら採れるか?バッ―っと、一匹獲ってみるとなんとサワガニだった。綺麗な川に棲息していてよく素揚げや素焼きで食べられている2~3センチのカニ。寄生虫がいる為生食は絶対にしてはいけないけどな。ここ重要!


 とにかくどんどん石をはぐったりどかしたりしてサワガニを獲っていく。獲ったカニは着ていた服を結び袋状にしたモノに入れていく。たまにサワガニのハサミに挟まれる事もあるが 痛って感じる程度…。


「ふぅ〜 結構獲れたし、サワガニは何と言っても味が良いからな。素焼きにして昨日作った塩をかけたら絶品だろう、コレっ!そういえば優花ってカニは大丈夫かな?嫌いなモノはないって言ってたから大丈夫だよな」


「豊和く〜ん? どこぉ〜?」


― 優花の声? そうか、起きたんだな。


「ここだ〜!ここに居るよ〜!」


 優花の姿が森の隙間から見えたので俺は川を上がり、獲ったサワガニを手にウキウキしながら優花の方へと向かう。


 優花も俺に気が付いて…


「あっ、豊か……キャア〜〜〜〜〜!」


「どうしたんだ、優花?」


「ふ、服っ!?豊和君、み、見えてるから〜〜っ〜〜〜」


「あっ―」



 ─失念していた。俺は体を洗い流す為に裸になっていたんだった…。こりゃ、とんだ失敗だな…。


 優花は両手で赤くなった顔を隠している。俺が服を着るまで時折指の隙間からチラチラとこちらを 見ている視線を感じるのは流石気の所為だよな?


 んっ?今、完全に視線が交差したよな?いやいや…優花が俺の裸に興味あるわけないよな…



*****


「う~〜〜 は、恥ずかしくて豊和君の顔…まともに見れないよ~」


「わ、悪い…忘れてくれると有難い…」


「そんな簡単に忘れられる訳ないよっ!?」


「ほ、ほらっ!―カニっ!カニが焼けたぞ優花!嫌いなモノはないと言ってたし、カニは食べれるよな?」

「た、食べれるけど…」

「さあ、さあ、食べた食べた!」

「う、うん。あ〜ん…パリっ!パリっ…もぐもぐ…ごくん…あっ…このカニ美味しい…」 「だろ? サワガニって言うんだ」

「へ〜 サワガニって言うんだね」


 2人で美味しくサワガニを食べる。パリパリと甲羅ごと食べるんだ。大人ならこういう時ビールと一緒にだろうな…。


 サワガニを食べてお腹は満たされたから次する事を優花と話しながら考えて行動に移すとしますか…。

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