遠くに行った初恋が気が付けば近くで実った話。

くうき

プロローグ:初恋、帰って来たってよ。

「それで、今日はクラスで残念なお知らせだ。来年から、一緒の学校じゃないやつが出る。」


所属しているクラスの担任が突如として言い放った言葉に突然生徒はざわざわとし始めた。そして、ざわめきが鎮まるまで待って先生はダンマリを決め込んだ。


「竹西。」


「はい。」


先生が言ったとともに、一人の少女、竹西………竹西咲たけにしさきが起立して教卓の前に立った。


 そこから、竹西はいろんな思い出だったり感謝を述べて教卓から、自分の席に戻った。俺、桐野幸助きりのこうすけは隣の席にいた彼女が戻ったとともに、彼女が小さな声で耳元に声を充ててきた。


「ホントに、ありがと。」


たった一言だけだった。たった一言。それだけなのに、対して彼女のことを知っている訳でもない。ただ、隣の席だったからよく話すことが多くて………。無自覚に心のどこかが締め付けられていく。




 でも、それがどんな気持ちと形容すればいいのかまだわからなかった。




 竹西が転校してから数年、もう大学の受験シーズンになっていた。これまでの間に、幼馴染が幾度となく合コンみたいなことをセッティングしてくれたりとあったが、俺の頭の中はずっと、竹西のことでいっぱいだった。………なんか、言い方変態っぽくね??


 そんなある日、料理部に所属していた俺は突如、同級生である少女から幼馴染を紹介してくれない?と言われ言われるがままに紹介したら………なんやかんやあって付き合い始めた。まぁ、それはそれは周囲を考えずに砂糖5㎏分くらいの甘さでいちゃつくは、それを見てなのか幼馴染がうっとおしくなったのも覚えてる。(ちなみに感謝はめっちゃされた。)


 またまた、ある日、ちょうど幼馴染が部活を引退した後に一緒に帰った日のこと。俺は思い切って相談をしてみた。


「なぁ、雄二。」


「ん、どしたよ?幸ちゃん。」


「いやさ、今付き合ってるだろ?お前。」


「いやぁ、その件はホントに「いや、そうじゃない。」………」


ホント、気を抜くとこうだよ。そして、惚気が火の玉ストレートで飛んでくるんだから。まぁ、軌道修正だな。こっから。


「まぁ、恋をするときってさ、どういう感じ??」


と、質問を投げかけると、雄二………もとい松井雄二まついゆうじはあっけらかんと答えた。


「う~ん、胸のあたりがな、キュ~ってなって苦しくなる。そして、誰にも渡したくない!!って気持ちになってそこから、あっ、俺はこの人が愛しいんだなと思う。って感じ??」


「っ!!」


雄二に言われた言葉に、中学の頃に襲われた感覚が蘇ってくる。言い方が随分大ごとだが、正直に言おう、しょうもない。でも、この気持ちに遂に気が付くとができた。


「そっか。」


「??なんか、すっきりしてるな?幸ちゃん。」


「あぁ、かもな。」


俺は、あの気持ちが恋だと知った。人生で初めての恋・・・また、大げさだけど。でも、それが引き金になったのか、俺はずっと一個だけ引き摺るようになってしまった。


「こうやって連絡先も知らなくなるくらいだったら告白して玉砕でもするんだったああ!!」


と、親も寝ている夜の時間にひっそりとヘラるは精神がおかしくなりかけるとかでまぁ、3年前のことを引き摺って受験に臨む。結果は何故か合格できた。何でかね??




 そうして、今、俺は大学生になり入学式を終えてから数日後のオリエンテーションへ向かう。そして、教室に何故か1番乗りになってしまい気まずい空間で待っていた時だった。


「……………」


「……………隣、いいかな?」


「・・・へっ??」


耳元に、優しい声色が刺激するように入ってくる。そして、声を掛けられた方向へ向くと。


「久しぶり。桐野君。」


「も、もしかして竹西!?」


「うん、そうだよ。奇遇だね。同じ大学の同じ学部何て。」


「あ、あぁ。」


少ししどろもどろになりながら答えを返す。桜の花びらが一枚教室に入ってきた。それと同時に竹西は微笑んだ。俺の鼓動は跳ね上がる。




赤い糸は静かに手繰り寄せてくれた。それだけに今は感謝している。


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