110 鳳凰暦2020年5月5日 火曜日夜 国立ヨモツ大学附属高等学校女子寮
あたし――伊勢五十鈴は、岡山さんが配ったプリントに目を通す。
それは、『GWのクラン打ち上げのご案内』という題がついたプリントだった。宛先は『クランメンバーの皆様』で、差出人は『クランリーダー 鈴木彰浩』になってる。
どんなこだわり⁉ まるで学校から配られる『学校祭のご案内』みたいな感じなんだけど?
「……岡山さん、これって」
「鈴木先生がおごってくれるってことだよね? ヒロちゃん?」
「確かに、あみちゃんの言う通り、参加費、無料になってるし……」
「どのようなお考えなのかは、わたしにもわかりませんが、少なくとも、おうちでパソコンに向かっていた鈴木さんはなんだかとても楽しそうでした」
「……」
矢崎さんは無言で首を傾げていた。……と思ったら、口を開いた。
「……有名な、お店?」
「え、それホント、エミちゃん?」
「どれどれ? すきやき梧桐? うーん。地元じゃないから、知らないかな? ここに、地元の人、いないし」
「スマホはまだ学校預かりだから調べられないね……」
「……そんなことよりも、あの鈴木くんが明日は午前中の、しかも11時でダンジョンから折り返して活動終了にしてることが気になるんだけど? それって12時にはみんなダンジョンから出てる時間だし?」
……いや、美舞⁉ そこ? あたしはどっちかというと、すきやきってところがもう気になってしょうがないんだけど⁉
「うん。高千穂さんらしいね。真面目だね! あたしなんて、すきやきってパワーワードが気になって他はもうどうでもいい感じ」
「……あたしも」
あたしは控えめに酒田さんに同意した。宮島さんも矢崎さんもこくりとうなずいていた。よかった。仲間がたくさんいる。
「確かに、高校生が打ち上げとかですきやきなんて、有り得ないから、そこが気になるのもわかるんだけど……」
……いや、だから、美舞⁉ そこなの? 大事なのはどれだけ美味しいのかってとこじゃないの?
そもそもあたし、家でやるんじゃないすきやきって、初めてなんだけど⁉ みんな、そんな経験ある訳⁉ え? すきやきって、実は外食の定番なの⁉ そういうものなの……?
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