98 鳳凰暦2020年5月2日 土曜日夕方 平坂駅前商店街


 母が早く帰れとうるさいので、出口付近で土系統の第2階位マジックスキル『フルリペア』を使って、僕と岡山さんの武器の手入れを済ませると、豚ダンは16時と、かなり早めに出た。


 そのまま、平坂駅前商店街の100円均一の店に立ち寄る。


「……百円均一のお店とか、久しぶりです」

「意外と、支払は高くなったりするのが、残念」

「あ、魔法少女になれるステッキ……」

「あれ、300円。どこが百円均一か」

「ふふふ、鈴木さんらしいです」


 目的は防音用のイヤーマフと、サングラス的なゴーグルだ。


 うろうろと探して店内を二人で歩く。なぜだか岡山さんがとても楽しそうだ。百円均一が好きなのかもしれない。女の子はこういういろいろと物があるお店は好きそうだし。僕は目的の物以外は買わないタイプ。でも、目的の物なら、どんな目で見られても買う。魔法少女になれるステッキとか。


「あ、この髪留め、奈津美ちゃんに似合いそうです」


 こんな時でも奈津美のことを考えてくれている岡山さん。それは、奈津美も懐くはずだ。兄としては負けられない思いがある。


「買う。入れて」

「あ、はい。鈴木さんは何をお探しですか?」

「僕は……あ、あった……って、ぐ……」

「どうしました、鈴木さん? あ……」

「イヤーマフが……」

「これ、値札が1000円、ですね?」


 なぜこの店は百円均一を名乗ってるんだ? 意味がわからない⁉


 叫ばずに耐えた僕を誰か誉めてください。


 僕は血が出そうなくらい唇を強く噛みながら、イヤーマフをふたつ、買い物かごに放り込んだ。かごの中を見ると、奈津美のために岡山さんが選んだ髪留めは300円だった……。


 今すぐ看板を下ろせと言いたかった。





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