70 鳳凰暦2020年4月28日 火曜日夜 国立ヨモツ大学附属高等学校女子寮


 机の上のコンパクトなカレンダーを見て、明日は魔石エネルギー記念日で休みだと思い出した私――矢崎絵美は、仮病で学校を休むのは一日だけ、という外村の言葉の意味をようやく理解した。私が休まなくても明日は学校の方が休みなのだ。


 私は学校を休むのではなく、ダンジョンへ行かずにこの部屋に引き籠る。それだけで会田たちには十分な仕返しができると外村は言った。


 学校を休んだのは今日だけだが、ダンジョンは昨日も入ってない。明日も入らないのなら、3日間連続でダンジョンに入っていないことになる。






「誰かのダンジョンアタックを妨害するのは許されないからね」

「妨害? 私は……」

「ソロでやりたい訳じゃない人を強引にソロにするのは、妨害だよ、妨害。やりたくないソロなら、ダンジョンに行きたくなくて当たり前。でも、仕返しはそれで十分。ダン禁はねー、被害を受けた人がダンジョンに入れなかった分よりも多く、禁止されるんだから」

「ダン禁?」

「そ。ダンジョンへの入場禁止処分。ダンジョンカードで制限されるから、こっそり入るとかも絶対にできないね。あと、授業は別室でのWEBになるかな」






 昨日の外村との会話はそういう流れだった。


 私は外村の話に乗って、仮病で学校を休んだ。その方がショックを受けてるというアピール度が高いから。休んだ結果、精神的には楽になったのだから、実は仮病とも言えないのかもしれない。

 逆に今は、あっちが精神的に追い詰められている。


 実際、今日も会田はこの部屋まで謝りたいとやってきて、ノックだけでなく、ドアノブを握って開けようとした。それが謝りたい人の行動か、と思った。カギをかけててよかった。

 今日も、外村が追い払ってから食事を届けてくれた。


 あのあせり具合なら、本当に外村の言う通り、私が休むだけでも会田にはダメージがある。

 同じパーティーだった男子は女子寮に入れないから、その分も、あせってるのかもしれない。なんとかしてくれ、とか、会田が言われている可能性は高い。


「月城はそもそも、モモっちにかっこつけるためにソロでやりたいとか言い出したんだよねー。それに矢崎さんが巻き込まれるのは完全に筋違いっしょ。矢崎さんは、本当に、もっと怒っていいと思うなー。あ、このあと、あたしがよーく知ってる先生に、電話で矢崎さんのこの状況のこと、しっかりと伝えるから、そのつもりで」


 今日はそれを聞いて、うなずくとともに、月城という馬鹿な男にあきれた。下らないことに巻き込まれたと思うと、苛立ちとともに悲しくもなる。


 もし、私がもっと、ちゃんと人と関われたら……やっぱり違ってたのかもしれない……。





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