68 鳳凰暦2020年4月28日 火曜日放課後 小鬼ダンジョン3層


 キリちゃんが目を細めてこっちを見てる。


「……マリンちゃんがさらにおかしくなった」

「おかしくなったはヒドイ!」

「いや、わかる。ソード2匹をほぼ一瞬で切り捨てて、飛んできたアーチの矢も弾いたって、何だそれって感じ」


 今日の3層での初戦闘後に、パーティーメンバーのキリちゃんたちにそんなことを言われたあたし――設楽真鈴は、ちょっとだけすねてみた。

 憧れのあのバスタードソードを手に入れての初ダンジョンでテンションはMAX。水を差されたくないと思ってもあたしは悪くないと思う。


 昨日までのショートソードの慣れが残ってるから、まだちょっとだけ違和感はあるけど、たぶん興奮状態も含めて絶好調だと思う。


 今、全中の個人戦をやり直したら優勝できる自信がある。あ、バスタードソードだと殺人事件になるからダメかな?


「……もう、ボス部屋の道は覚えたよな? 設楽がコレなら、今日はルートを変えて、3層で戦う数を何回か増やすのはどうだ?」

「……いつも、最後の残り時間は1層のゴブリンだもんね。マリンちゃんがさっきのアレを続けられそうなら、今までの最後の分を計算して、4回か5回は、3層の戦闘を増やせるんじゃない?」

「まあ、3層の500円魔石に目が眩んでるだけだが……設楽、やれそうか?」

「んー、まだちょっと違和感はあるけど、やっていけば修正はできるし、たぶん、あたし、今、かつてないほど絶好調」

「あれで違和感あんのかよ⁉」

「ちょっと、ここダンジョンだから」

「わ、わりぃ……でも、わかんだろ?」

「いや、わかる……設楽があまりにも規格外過ぎる……」

「マリンちゃんだから……」

「ホント、それな……」


 なんでいつも、全部あたしが悪いみたいになるかな?


「とりあえず、三條場くんの意見を採用して、キリちゃんの計算を合わせて、いつもと違うルートを今から戦闘12回分進んで、休憩してから戻る、で、どう?」

「それなら安全マージンの範囲だな」

「500円魔石も増える」

「マリンちゃんって、最強かも……」

「あははー、キリちゃん、それは誉めすぎ」


 あたしは単純だから、ちょっとした誉め言葉ですぐに前向きな気持ちになるけど。


「よし、DJバーガーのチーズバーガーセット、今日はいっぱい追加で」

「500円ってことだな」

「マリンちゃん単位で、ね」


 よし、今日もいっぱい稼ごう!


 もうすぐ、最後のパーティーシャッフルだからね! このパーティーでやれるうちに、目一杯狩るよーっ!





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