66 鳳凰暦2020年4月28日 火曜日午後 国立ヨモツ大学附属高等学校1年職員室


 5時間目の空き時間に昼休みの報告を求める。


「それで、バスタードソードのレンタルの試験は?」

「5人中、一人だけです、合格は。あと、完全に勘違いしたメイス使いが一人いました。その場で試験とかなく不合格にしましたよ」

「そりゃ、まあ、そうだな」


 わし――佐原秀樹は、昼休みにバスタードソードのレンタルのための試験を担当した伊集院先生と話をしていた。


「合格の一人は、あれか?」

「1組の設楽です。驚きました。単純な戦闘力なら既に平坂よりも上だと思います」

「……ショートソードでゴブリンを一撃確殺、しかも連続5体だからな。剣道でかなりできるヤツだとは聞いてたが、本当に合格したか」

「試験の後、一緒にギルドへ行って、限定の解除と、バスタードソードのレンタル、済ませました。その足で訓練場へ行きましたよ、あいつ。にやにや笑いながら。剣狂いですかね?」

「才能があるのは間違いないだろう。だが、やっぱり基準が厳しかったか?」

「どうなんすかね……まともに刃も立てられん連中が、力づくでショートソードを振り回すのと、設楽が一瞬でゴブリンに斬り込むのは、明らかに違いましたから。3層できっちりと戦えるようになって、ボス戦を考える頃には、ショートソードでゴブリンを一撃ってのはもっと増えるんじゃないっすか? 厳しいというより、これは設楽が別格かな、と」

「……3層で戦える、か。そのくらいの時期には、8万円くらい、ちょっと頑張れば貯められるんだが」

「そういや、そうですね。ま、そこでバスタードソードを借りて、もうちょっといい武器までお金を貯められるって考えたら、トータルでは生徒のプラスになる気はします。貯めて買うのはマジックポーチでもいいかもしれないっすね」

「そうだな……」


 ……バスタードソードだけは、他の武器と違って、予備をレンタルできんようにしとく方がいいかもしれん。予備はショートソードでも構わんだろうし。


 この先、増えるだろうバスタードソードのレンタル対象となる生徒をイメージして、わしは追加するルールについて上に話を通すことについて考えていた。





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