RDW+RTA +SDTG(T―SIM) ~鈴木の育てゲー(育成シミュレーション)~
59 鳳凰暦2020年4月27日 月曜日昼休み 国立ヨモツ大学附属高等学校・中学校内ダンジョンアタッカーズギルド出張所3階第8ミーティングルーム
59 鳳凰暦2020年4月27日 月曜日昼休み 国立ヨモツ大学附属高等学校・中学校内ダンジョンアタッカーズギルド出張所3階第8ミーティングルーム
僕は高額換金でギルドの美女さんの顔色を青ざめさせてかなり気分がいい状態で、岡山さんと合流して集合場所のミーティングルームへと歩いた。
「……確かに均等に魔石を配分するのは契約の通りですが、それでも、ほぼ何もせずに300万円を超える金額を手にするのは、複雑な気持ちです」
「でも、処刑鬼の鎚矛を発注したんだよな? 換金して手に入れたうちの3分の2くらいは支払いに遣うことになるし、そうやって、稼いだ分をしっかりと遣わないと、強くはなれない」
「鈴木さんに教えて頂いた通り、処刑鬼の鎚矛というメイスは発注しました。高校生が買う武器じゃないと、受付の方が驚いてらっしゃいましたが……確か、昨日、外のギルドで見た平坂第2ダンジョンのドロップ品でしたか?」
「地獄ダンに自分で入って取ってくるのはできなくはないけど大変だし、ギルドで買えるんだから買った方が今は早いな、どう考えても」
「これで、オークと戦えますか?」
……正直、処刑鬼の鎚矛があればオークごときはあっさり倒せる。そして、オークごときはあっさり倒せるようになってもらわないと、岡山さんが一人の時に何かに狙われたら、自分で自分の身を守れない。
今は活動場所のほとんどが寮も含めてヨモ大附属の校内で、外ダンは僕と一緒だからなんとかなるとは思うけど。
「それは大丈夫。ゴブリンとコボルトとオークを従えてるオーガからのドロップ品だから。オークどころかオーガまでは大丈夫なはず。ちなみに、普通に販売されてる武器だとこれが最高級の武器になると思う」
「オーガのドロップですか……では、それを使ってこれからも頑張りますので、よろしくお願いしますね。それで、今度は豚ダンジョンのオークの魔石を貯め込むのですね? 自分を鍛えながら?」
「その通り。ついでに豚ダンのクリアも狙う」
「……小鬼ダンをクリアして、犬ダンもクリアした場合は、神殿ダンジョンを目指す、と教科書には書いてあった記憶があるのですが?」
「あー、それは、一般的なルートなんだけど、ちょっと、ね。また、いずれ説明するから」
ちょうど、目的の場所である第8ミーティングルームについたので、話はそこまでとなった。ノックして、返事を待って、中へと入る。
「……ほんものの、すずきくんだ」
「よ、よろしくお願いします」
ミーティングルームの中では、新メンバー予定の二人が、僕の方を見ていた。
……まるで僕の偽物がいるかのような発言を。え? いるの? まさか?
相手が僕を見知っていて、僕は相手を知らないというパターンは、これまでの短い人生でも何度も経験してきたけど、この高校だと、初ダンの実習で、学年主任の先生がシーンとした中で僕の名前を口にしたから、僕だけが一方的に知られてるんだと思う。
あれって、個人情報保護法に違反してるって人権侵害で訴えることはできないかな? さすがに無理か……教師が生徒の名前を呼んだだけだし……。
僕は紹介してほしいという気持ちを込めて、高千穂さんをまっすぐに見た。なぜか、高千穂さんは顔を赤くして、僕から目をそらした。なんで?
仕方がないので、僕は同じように酒田さんの方を見た。
「あっと……鈴木先生、紹介しますね。こっちがモミちゃんで、こっちが伊勢さんです」
「……モミちゃん?」
「モミちゃんは、宮島紅葉さんです」
大丈夫か、その愛称? なんか、陽キャが調子に乗って大変なところを触ってきそうな名前だけど⁉
ええと、伊勢と宮島、伊勢と宮島……志摩と安芸、かな? うん。連想できるし、覚えられそうな気がするな。
「そういえば附中普通科の寮のお風呂で、みんながモミちゃんをよく揉んでたよねー。モミちゃんけっこー大きいから」
「ちょっと、あみちゃん! やめてっ! それにみんなじゃなくてそんなことしてたのはあみちゃんでしょっ! 初対面な人になんて紹介するのっ!」
……ガチでその愛称っていじめなのでは? あ、附中普通科からの転科組か。二人は元々、友達なんだろうな。大丈夫か、附中の普通科……。
「あ、あのあの、すす、すみません。宮島紅葉です! がが、頑張りますので、どうか、よろしくお願いします!」
ロケットの発射みたいにビュッと立ち上がって、ぺこりと頭を下げた宮島さん。顔、真っ赤にしてかわいそうに。あんな話をされたらそうなるか。かわいいけど。
酒田さん、悪ふざけが過ぎるな。宮島さん、宮島さん、安芸の宮島さん、けっこー大きい宮島さん、と。
「伊勢五十鈴、です。美舞……高千穂さんとは附中の頃から仲良くやってました。どうかよろしくお願いします」
……高千穂さんって、名前、みまい、って言うんだな。美しく舞う、か? まさに岩戸さんかもしれない。おっと、そうじゃない。名前、名前。伊勢さん、伊勢さん、伊勢志摩さん、っと。
いや、それよりも、とにかくクランメンバーが増える喜び! これで3ペアクランだな! 盛り上がってきた! 僕の中では!
「同級生だし、丁寧な言葉とか、別に気にしなくていい。岡山さんから書類は預かったし、あれを書いてくれたなら、必ず成長させる。育成に自信はあるから、放課後、可能な限り早く、小鬼ダン前広場に集合で。酒田さん、どうすればいいか、説明、お願い」
「はい、鈴木先生! 大丈夫です! ボス部屋用の着替えの用意まで既に説明済みです!」
「っ! 酒田さん⁉ それは⁉」
ついさっきまでなぜか僕から目をそらしてた高千穂さんが慌てて振り返って、酒田さんの発言を遮るけど、間に合ってない。というか、それ、酒田さんの自爆なのでは?
「……鈴木さんはスルースキルをお持ちですから、あぶみさんのいろいろな発言はしっかりと聞き流して下さいね?」
「あ、うん……」
岡山さんから、なんかすっごい圧がかかってる? しっかりと聞き流すって何かおかしいよな?
「ヒロちゃん、ひどい……」
「あぶみさん、ひどくはないと思います。確か、さっきのような発言は、最近の女子高生なら、自爆しましたね、というように言われるものではないですか? 鈴木さんには聞き流してもらわなければ困ります」
「自爆……? あっ……」
今度は酒田さんが顔を真っ赤にした。
いや、僕は気づいててこれまでずっとスルーしてきたんだけど、酒田さんのアレは……。
こうして、酒田さんの乙女の尊厳をほんの少しだけ犠牲にしつつ、新たに二人、僕のクランに仲間が増えたのだった。
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