57 鳳凰暦2020年4月27日 月曜日朝 小鬼ダンジョン3層 ボス部屋
金曜日以来の、久しぶりの朝の共同作業です。土日の二日間できなかっただけで、もう久しぶりと感じてしまいます。そして、今日から、真の意味での共同作業となるのです。
私――平坂桃花は、本日、十分に気合を入れてやってきました。朝の待ち合わせであいさつを交わし、登校中にボス戦は一緒に戦わせてほしいと彼にお願いしてあります。今日から、ボス戦では彼にはタンクをしてもらうのです。
「じゃ、入るな」
「はい」
少し、緊張していますけれど、大丈夫です。ここまで走ってきた疲れもありません。力は出し切れると思います。もし、私がピンチに陥ったとしても、必ず彼が助けて下さると、そう信じられます。
ペアを組むタンクが攻撃を受け止めている隙に私がメイスを振るうだけです。ゴブリンソードウォリアー以外のゴブリンたちでは何度も経験してきました。絶対にできます。
ボス部屋へと飛び込んだ彼が、ボスの雄叫びをものともせず、前に出ます。
私は震えながらも足を前に踏み出し、2歩目で震えが治まりました。また震えからの回復が早くなっています。そして、そのまま前へと進みます。彼に遅れてはなりませ……あ、あれ?
「さ、攻撃して!」
そう言って私を振り返った彼は、ゴブリンソードウォリアーのバスタードソードをファンブルさせ、それを拾おうとした右手を踏みつけて床に固定し、その彼を押し退けようとゴブリンソードウォリアーが押し出してくる左手のスモールバックラーシールドをメイスで叩き返して何度も弾き飛ばしています。
どう見ても弱い者いじめでゴブリンソードウォリアーに土下座をさせているようにしか見えませんけれど……。
確かに、ゴブリンソードウォリアーの攻撃は、全て、彼によって封じられています。完璧に封じています。動きも封じていますし、姿勢は低く、とても攻撃しやすい状態になっています。ある意味では完璧なタンクだと言えるのでしょう。
……でも、このタンクは、私が知っているタンクとは、かなり違うものではないかと思います。ええ、間違いなく、私が知っているタンクとは違うものです。初めてみました、このようなタンクは。
私、直接戦うこのボスとの初戦闘は、ただ横からメイスでボスの頭を殴るだけになりました。
本来のボス戦とは、こういうものではないと、流石に私も思うのです。
次は水曜日です。次回は、彼にはタンクではなく、声援を頼み、私をソロで戦わせてもらえるようにお願いしたいと思います。そうしないと、私はあのボスとはまともに戦えそうにありません……でも、そうすると、これはまた、彼との共同作業とは呼べない何かになるような気がします……。
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