52 鳳凰暦2020年4月26日 日曜日お昼頃 学生食堂
食堂でペアの宮島さんと向かい合って素うどんをすすりながら、あたし――伊勢五十鈴は、今日のダンジョンアタックを思い出す。まあ、思い出すほどの内容もないけど。
宮島さんとあたしで4回ずつ戦って進み、そこから折り返して3回ずつで、合計14回の戦闘で14個の魔石。偶数だから均等に魔石は7個ずつだ。本当に偶数で良かった。奇数になって、基本的な取り決めであたしがひとつ多く受け取るのは本当に心苦しいから。
それから二人でギルドに魔石を納品して換金、そして訓練場に行って素振りなど、お互いに確認し合って、気持ちだけは頑張ってる。大津はムカツクけど、あれで宮島さんの話をじっくりと聞けたのは本当に良かった。
うどんがなくなり、お汁だけになったどんぶりを見つめて、宮島さんがつぶやいた。
「……あみちゃんが言ってた人が、ヘルプに入ってくれたら、お昼にうどんじゃないものも、食べられるようになるのかなぁ」
あたしはそれを聞いて、美舞が食べていたメニューを思い出した。
先週の月曜はまだ素うどんだった。それが、野菜炒め定食、ささみあげ定食、からあげ定食、カツカレーへと進化した。あたしが毎日素うどんを食べている、その、目の前で。
あたしはあれを、美舞のやけ食いなんだと思い込みたかったのかもしれない。美舞もあたしと同じような立場で、同じぐらいしか稼げてないって、思い込みたかっただけなんだ。
でも、真実は、それだけ、稼いでいたということ。昨日のクレープがそれを真実にしてくれた。何あれ、クレープってあんなオシャレな感じなの?
「昨日のクレープ、美味しかったなぁ……」
「美味しかったねぇ……」
あたしたちは目を合わせず、それぞれがそれぞれのうどんのどんぶりを見つめながら、そんなやりとりをしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます