51 鳳凰暦2020年4月26日 日曜日お昼頃 国立ヨモツ大学附属高等学校・中学校内ダンジョンアタッカーズギルド出張所


 今日も3層で頑張った。満足した気持ちで、ギルドへ換金に行ったあたし――設楽真鈴が入ったカウンターには、この前、バスタードソードを見ていた時に話しかけてくれた美人な人だった。


「あら、あなた?」

「どうもです。換金、お願いします!」

「はい。ああ、もう3層なの? すごいわね」

「えへへ。やっぱり3層は、まだ少ないですか?」

「そうね。いない訳じゃないけど、ほとんどが1層か2層の魔石ね」

「そっか。うんうん。あ、ボスの魔石って、換金してる人、いるんですか?」

「……いるわよ」


 ……今の間は、ひょっとして。聞いちゃいけないことだったかも⁉


 やっちゃったかも、と思ってあたしはもじもじとしてしまった。


「……はい、換金、終わったわよ。ダンジョンカードを返すわね」

「ありがとうございました!」

「そうそう。来週、バスタードソードのレンタルが始まるわよ」

「え?」

「ちょっとした試験があるみたいだけど、それに通れば、バスタードソードを借りる許可がもらえるわ。挑戦してみたら?」


 バスタードソード!

 長さは竹刀に近いし、持ち手は両手で持てるし、今、あたしが一番憧れてる剣!

 おお、テンションが上がってきた!


「はい! 頑張ります!」

「そう。頑張って。応援してる」

「ありがとうございます!」


 あたしは浮かれた気分でカウンターを後にした。


 バスタードソード、バスタードソード……。


 そんな感じで、頭の中はバスタードソードでいっぱい。そこで得られたはずの重要な情報は、あたしの中では忘れられ、重要性を失ったのだった。





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