『……という訳で、脳筋ギルマスからおまえが説明しとけって言われたから電話したのよ』

「ありがとう、阿部さん。学校には報告書を出しておくわ」

『ねえ、その彼、大学から１億円毟り取ったって、本当なの？』

「その話は私も知らないわ。噂は聞いたけど」

『そっか。ま、たまたま受付があたしだっただけで、誰が受付してても、驚いたのは確かね。とんでもない子が出てきたわね。んじゃ、ごめんね、残業、頑張って』

「……頑張るわ」

　本所――ダンジョンアタッカーズギルド平坂支部から私――宝蔵院麗子に電話があったのは、ここのシャッターを下ろした後だった。あっちは２４時間営業だけど交代制で、こっちは夜勤がないけど、何かがあったら残業になる。残業代は給料としてはありがたいけど……。

　また、アレが仕出かした！　どうしてボス魔石だけ納品するのよ！

　それに、また、有り得ない時期での、有り得ない犬ダンクリア。あの陵でさえ、犬ダンへの挑戦は夏休みに入ってからだったのに。クリアなんてもっと後だった。

　ボスの魔石だけの納品・換金は有り得ないけど、あそこの一般のアタッカーが犬ダンのボス魔石を現金取引で渡すってことも有り得ない気がする。そもそも、あそこの一般のアタッカーはまずボス戦に挑んだりしない。

　それよりも、アレの実力だけは間違いなく、高いから、ボス魔石以外はマジックポーチの中で眠らせてるだけかもしれない。

　それでも、この状況が魔石の現金直接取引の疑いがかかるものなのは間違いない。私としては――ヨモ大附属出張所の業務として――報告書を作成し、学校へ提出するしかない。

　私は追記で私見として、マジックポーチに他の魔石が保存されている可能性があることを書き加えて、学校へと提出した。

　……あとは、佐原先生がどうにでもしてくれるとは思うけど。

　そう思っても私はどうしても頭の奥で警鐘が鳴り響くのを止められなかった。アレに関することは嫌な予感しかしない。

　……わざと？　わざと私の仕事を増やしてない？

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