45 鳳凰暦2020年4月25日 土曜日夕刻 犬ダンジョン
2周目もボス戦は爆裂玉1発で即終了。魔石とドロップしたプレートアーマー――換金すれば15万円ぐらいのどっちかと言えば当たりのドロップ――を回収して、転移陣へ。
プレートアーマーはタンク希望なら、外ダンの初期装備としては悪くない。これもマジックポーチ保管。とはいえ、マジックポーチも、最小だと畳一畳分だから、そろそろ考えないと。
1層へ戻って、現在の時刻は18時17分。これなら、1層の外周通路を奥まで行って、リポップ待ちして戻ってくるぐらいの時間はある。
「よし、じゃ、岡山さん。もう一回……」
「ちょ、ちょっと待って下さい、鈴木さん!」
「え?」
「今日はもう、ここで帰りましょう。奈津美ちゃんともゆっくりお話、できますし、お義母さまもお待ちでしょうし。それに、わたしも、流石に今日はもう疲れました」
岡山さんが僕の袖を捕まえて、上目遣いでこっちを見ながらそう言った。眼鏡の向こうの瞳はちょっと潤んでる。く、眼鏡っ子かわいいぞ、こら……。あと、おかあさま、の言ってる感じが漢字2文字のような気がしたのは僕の気のせいだろうか?
……まあ、外周トレイン魔法焼き討ちドロップ作戦は、1周で階層を1、2、3、4、5、4、3、2、1、2、3、4、5、6と回って、合計で14回、それを2周したから28回はできたし、ここで1層往復の2回分を追加しなくても、放課後の小鬼ダンの後、夜に来ればいいか。岡山さんも、泣きそうなくらい疲れたみたいだしな。
そういえば、寮生の岡山さんはいつも7時45分スタートか。今日は6時スタートだったし、終わりはいつもより30分くらい早いけど、始まりはいつもより1時間45分も早かったから、そりゃ疲れるかもな。
「そうだな。じゃあ、ギルドに寄って、ボス魔石の納品と換金を済ませたら帰ろうか」
「はい。申し訳ありません。ありがとうございます」
ほっとした表情の岡山さんを見て、僕は気を引き締めた。
「でも、時間ギリギリまで頑張れるように体力もつけていこうな」
「………………はい」
小さくうなずく岡山さん。きっと、体力不足を少し恥じているに違いない。
それから二人で外のギルドに寄って、犬ダンのボス魔石をそれぞれ納品して、換金した。そうすると、ダンジョンカードのGの文字がFに変化した。犬ダン、クリア、完了。
これで、平坂ダンジョン群の、特殊な管理下にない、一般のダンジョンは入場可能になる。
それからは、家に帰って、食事をして、奈津美も一緒に三人で、二階の僕の部屋でドロップした魔石の仕分けをしたり、プレートアーマーのようなマジックポーチのスペースを奪うドロップ品を押し入れに片付けたりして、仕分けと片付けが終わったら岡山さんは奈津美にお風呂へと連れ去られ、1階に下りたら酔っぱらった母二人に絡まれ、父さんはそんな僕を助けてくれず、という感じで岡山家も合わせて家族で楽しく過ごした。
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