40 鳳凰暦2020年4月25日 土曜日朝 小鬼ダンジョン


 休日もできるだけ早くダンジョンへ、という鈴木くんの方針で、気合の入った酒田さんに引っ張られて、あたし――高千穂美舞は、なんと7時50分にダンジョン入りした。


「ヒロちゃんは7時45分に入るみたい。まだ5分負けてるね、高千穂さん」


 寮の朝食の時間と、アタック後のギルドでの換金を考えれば、9時スタートが普通の感覚だ。寮の朝食は7時半から8時15分までだし、ギルドは9時半オープンなのだ。


「……岡山さんの意識が高過ぎる」


 後日、岡山さんからこの同じ日に外ダンで6時に入ったと聞いて、目と口をぽかんと大きく開いてしまうのは仕方がないと思いたい。


「とにかく、タイムアタックだね!」

「ゴールのボス部屋手前で次の作戦を考えて、どんどん縮めろ、だっけ」

「目標は40分を切ること、って、それでも鈴木先生のソロより10分は遅いとか、もう、鈴木先生が凄すぎるね!」


 相変わらず、鈴木くんのワンコだ……。


「でも、今日は5回って言われてるから、その後はちょっとお出かけでもしようね、高千穂さん」


 そう、楽しそうに笑う酒田さん。


 ……1往復がだいたい1時間半で、5往復だと昼食含めて8時間ぐらいはかかるって、酒田さん、気付いてないの? スタミナポーションも2、3本は必要だし。あ、でも、平日の放課後ぐらいの時間はあるのか。平坂駅前のファッションビルでクレープ食べて帰ってくるぐらいの時間はあるかもしれない。それに遣うお金のゆとりも。


 お昼ごはんの時に、酒田さんに話して、夕方のお出かけには五十鈴とそのペアの子も誘っていいか、確認しようとあたしは心に決めた。もちろん、クレープはあたしのおごりで。





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