35 鳳凰暦2020年4月24日 金曜日放課後 小鬼ダンジョン3層


 今日も、あたし――高千穂美舞と酒田さんへの鈴木くんからの課題は3層ボス部屋前までのタイムアタックだ。その後は思う存分3層の狩りをしていいとのこと。3層は、稼げるから。そして、本日のタイムは47分だった。


「まさか、走るペースを上げて、1層のゴブリンを交代の単独戦闘に変えるだけで5分も短縮できるなんて……」

「1層の釣りからの2対2は、2層のための訓練だったよね。だから、もう2層でちゃんとできるなら、いらないって考えたんだ」

「その発想が酒田さんのすごさかも」

「そして、ここからはまた3層で稼ぎ時が!」

「それも大事だけど、次はどうやってタイムを縮めるか、考えないと」

「あ、それね。このまま3層での戦闘経験を積むだけでも、1回あたりの3層の戦闘時間を短くできるから、今から稼ぐことが時間短縮の練習になるよね。1回ごとの戦闘時間が短くなれば、9回の戦闘でまだ2分はいけるよね」

「……なるほど。3層はアーチがいるから矢が気になってどうしても慎重になるもの。3層の戦闘時間はまだまだ詰められる」

「それと、まだ工夫できるとしたら、今は、釣りは釣り、で考えてるけど、釣りに入る時に、例えばメイスで腹に一撃入れてから躱すとか、そうしたら次のバックアタック1発ですぐ1匹消せそうだけど」

「それ、後でやってみようか。それができたら2層でも3層でもタイムを縮められそう」

「もちろん。それと、高千穂さんも、まだ走るペースは少し上げられるよね?」

「きついけど、できる。鈴木くんに散々走らされてきた成果かな……」


 ……本当に、走るダンジョンアタックって何?


 この日、3層の入口までアーチ前の3匹を倒しながら戻ったら、ちょうど誰かがやってくる声が遠くに聞こえたので、すれ違う前に奥地を目指した。たぶん、昨日と同じ、1組のパーティーだろう。すれ違わなかったということは、昨日よりあたしたちは早く行動できているということ。


 そのまま奥へと戦いながら突き進み、途中で酒田さんがスタミナ切れした時に、昨日の反省を活かしてあたしも一緒にポーションを飲んで、この日、3層だけで一人あたり、ソードの魔石56個、アーチの魔石28個、合計四万二千円を稼いだ。1層と2層の魔石もそれなりにあるから、たぶん、この先、あたしはもう学食のメニューの値段を気にする必要はないと思う。


 それどころか、レンタルじゃない、個人の武器が買えそうなぐらい、稼いでいた。それって1年じゃなくて、先輩たちがしてることなんだけど……。





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