32 鳳凰暦2020年4月24日 金曜日昼休み 学生食堂


 この日、あたし――伊勢五十鈴は、親友、高千穂美舞に問いかけることにした。


「……なぁ、美舞?」

「うん? どうしたの五十鈴?」

「なんか、悩んでる?」

「あー……まあ、悩んでいるというか、悩んでいたというか。いろいろあって、入学してから、状況に流されてた、わかる? ここじゃ、全部は言えないけど」

「わかる……」

「学級代表なんて呼び名だから、まるでクラスの真ん中にいるみたいに聞こえるけど、実際はクラスから浮いてて、外されてる立場なんだって、そういう呼び名をみんなは都合よく利用して、あたしに押し付けて、自分たちは好き勝手にやってるんだって」

「うん。大変だったな、美舞は、うん」

「だから、どうせ状況に流されるんなら、自分からそっちへ進んでみようかと思ったら、悩んでるのが馬鹿らしくなっちゃって」

「そ、そうなんだ……」


 ……み、みま、いが……美舞が……どうも完全に、開き直ってる、みたいな感じがする。


 今日の美舞は、カツカレー500円を食べている。まさか、とんかつ定食500円ではなく、そっちでランクアップ……しかも、そっちを選ぶのか? というチョイスで。


 だから、ついに、勇気を出して、聞いてみた。聞いてみたら、この開き直った感じで。

 開き直っての最高額メニュー。あたしだったら、昨日の魔石じゃ、マイナスになってる。最初の入金を削るのは、合宿費や旅行費の支払いのタイミングで苦しくなるから避けた方がいいんだけど、やっぱりやけ食いかぁ……。


「……五十鈴も大変でしょ? 何かあったら言って。助けるから」

「美舞……自分も悩んでんのに、あたしのことまで。ありがとう」

「いいの。あたしたち、親友だもの」


 親友だと思ってくれているのは嬉しい。だから、今のあたしたちの昼食格差に早く気づいてもらいたい。来週には美舞も少しは気持ちが落ち着いて、素うどんに戻ればいいんだけど。


 あたしは本当に間抜けにも、そんなことを思っていたのだった。





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