18 鳳凰暦2020年4月21日 火曜日放課後 小鬼ダンジョン 隠し部屋


 今日は、鈴木さんと隠し部屋です。てっきり、高千穂さんたちと一緒に動くと思っていたので驚きましたが、正直に言えば、わたし――岡山広子はとても嬉しいです。


「もっときっちり! 赤い宝石のところで当てる!」

「はい!」


 今はリポップ待ちの訓練中です。『一撃二殺』のための練習で、鈴木さんが百円均一のお店で買ってきて下さった大量のピンポン玉と、魔法少女になれるステッキで訓練しています。

 魔法少女になれるステッキは百円均一なのに300円だったそうで、鈴木さんはかなり不満を述べてらっしゃいました。

 これはとてもシュールな訓練かとは思いますが、これもおそらく鈴木さんの愛情です。わたしにはそれが全てです。もちろん受け入れます。


 魔法少女になれるステッキは、その先端が星型で中心に宝石のようにカッティングされた赤いプラスチックがはめ込まれています。

 鈴木さんがピンポン玉を2個、ぽいぽいっと放り投げて、わたしはそれをステッキの一振りで、どちらも先端の赤いプラスチックで跳ね飛ばさなければなりません。なかなか難しいです。ステッキを振るライン上に動くピンポン玉をきっちりとおさめるのですから。


「ただ当てるだけじゃダメだな。振り始めだと当てても威力がないから。当てるのは威力も出るタイミングになるように意識して」

「はい!」


 あと、メイスと比べてこの魔法少女のステッキが軽過ぎるのも、難しい原因かもしれません。威力はどのタイミングでも出ない気がします。でも、言い訳はしません。全てが鈴木さんの愛情だと信じています。


「あの、鈴木さん」


 訓練しながら、会話します。鈴木さんはながら行動が好きです。効率がいいと言います。


「うん?」

「今日はあの二人と一緒でなくて、よかったのですか?」

「ここでボス魔石を貯め込むのもあの二人のためだから」

「あ、そういうことですか」

「明日の放課後はまた、あの二人と動いて、ボス戦は2回に分けて、ボス魔石を増やそうと考えてるけど。岡山さんはソロでボス戦、僕があの二人のボス戦に……」

「あの二人のボス戦はわたしに任せて下さいっ!」

「えっ、あ、うん。別にそれでもいいけど……仲良くなれたみたいで良かったな」

「はい! 仲良くして頂いてます!」


 ……危なかったです。二度あることは三度あるといいます。あぶみさんの乙女の危機は回避一択です。あの時、わたしが慌てて叫んでしまいましたので、おそらく鈴木さんも気づかれたとは思いますが。


 ピピピっ、ピピピっ、とキッチンタイマーが鳴ります。


「さ、準備しよう」

「はい」


 もはや、作業と化したボス戦です。

 今週、金曜日の放課後は予定を空けておいてほしいと鈴木さんから言われていますし、その次の土日は外のダンジョンへ連れて行って下さるという約束なので、ここの作業はしっかりと繰り返して、土日の分も魔石やバスタードソードを手に入れたいと思います。


 時間的に土日の分というのは不可能ですが、気持ちだけはそう思って頑張りましょう。





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