第18話 異変の進化と深化①

「――――はい! マツル君にはギルドマスターからの支給品として素敵なプレゼントがありまーす!!」


 早朝、俺とホノラが“目無しの魔獣”発生の原因を探るべく出発しようとしたところをパジャマ姿のギルマスに呼び止められた。


「朝っぱらからテンション高いですね......それで、俺への支給品ってなんですか?」


「やっぱり気になるかい? 気になっちゃうよね!? よしそんなマツル君にはこれをあげちゃおう!」


 朝からこのテンションはキツイな......ダメだホノラ。相手は仮にもギルドマスターだ。幾ら朝からコレだからって殴ろうとするんじゃない。


 俺に手渡されたのは一冊の本だった。しかし表紙と背表紙しか無いぞ?


「『月刊ギルド!! 新人冒険者入門シーズン特別特集号』?」


 何だこの元の世界の少年誌のような絵柄は......まさか異世界でデフォルメキャラを見ることになるとは思わなかったぞ......


「そのとーり! この本はギルド本部から月に1回出版される全冒険必読の総合情報誌なんだよ! 普段はランクアップの秘訣とか魔道具の魔法通信販売とか昔の神話に絵を付けた読み物とかが載ってるんだけど――――」


 ほぼ日本の少年誌じゃねぇか!!!! 


 絶対これ日本人が出版の片棒担いでるだろ!


「――今回は新人冒険者が沢山ギルドに来る時期だから、今までに確認された魔獣や魔物のありとあらゆる情報が詰め込まれた売り切れ必至の最強号なのだ!」


 めちゃくちゃ便利じゃん! 異世界の少年誌すげーな!


「つまり、これを使って目無しの魔獣討伐を捗らせてね...って事ですよね?」


「そう! それで、こんな朝早くからなんのクエストに行くの?」


 俺達がこれから向かうのは魔獣に占領された隣の村の聖堂だ。どうやらDランクの“下位戦猫レッサーキャット”が数頭だけらしいので、手始めにこの依頼から行ってみるかという事になったのだった。


「隣の村って事は“チッチエナ村”か......確かに歩けば半日位かかるね。じゃあ、俺は戻ってもう一眠りするから、行ってらっしゃぁ~い」


 ギルドマスターは大きなあくびをしながら立ち去っていった。いくら早朝とは言え呑気にまた寝るのか......


 おっと、早めに行かないと今日中に帰って来れなくなってしまう。急がねば!


「それじゃあホノラ! 隣の村までしゅっぱーつ!」


「おー!」


 俺達は日が昇り始めた薄明るい草原を行くのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る