第2話鏡の実用

朝、リナは起きると鏡に向かってクラスメイトのサトシという子の好みの顔にして下さいと、お願いした。母の言う通りなら、今日一日その効力が続きサトシに興味を持たれるはずである。


登校してサトシに挨拶した。挨拶を返してくれたが、彼はリナの雰囲気が変わったことに驚いたようだった。


「きみ、リナさんだよね?」

「ええ、そうだけど、何か?」

「何か印象が変わったけど、メイクでも変えたの?」

「いやだわ。何もしてないわよ」


そこから二人は世間話で盛り上がった。やはり母の言うことは本当だったのだわ。ひょっとしたらサトシくんが人生初の彼氏になるのかもと、リナは胸が高鳴った。


しかし翌日リナは、ひどい生理痛におそわれた。動くのも辛いほどで、いっそ今日は学校を休んでしまおうかと思った。

だがせっかくサトシといい感じになってきたのだから、今日欠席するのはもったいない気がした。

そこで鏡に、生理痛を治して下さいとお願いした。願いは叶えられ痛みは嘘のように治まり、学校へ行くことができた。


サトシにリナはにこやかに挨拶した。彼もにこやかに挨拶してくれた。

だがその後の会話が全く盛り上がらなかった。最初は憧れのアイドルを見るような目でリナを見ていたサトシの目は、ただの不細工な女を見る目に変わってしまった。サトシは、そっぽを向いて男友だちの方に話をしに行ってしまった。


リナは深いショックを受けた。確かに願いが叶えられるのは一日一度だけで、今日は別のことに願い事を使ってしまったが、ここまで極端に対応が変わるものなのか。


もう一度、サトシ好みの顔にして下さいとお願いしようかと思わないでもなかったが、何だか虚しくなってしまってそれは止めた。

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