第15話 そのカフェの女店主を守れ! ファイナルミッション
「逃がさんぞ。えせイケ野郎!」
関さんのスイッチが入ってしまった。
「関さん、安全運転でお願いします」
イタ車レク〇スを急バックさせ、車輪をドリフトさせて急発進する。
そして、道路に出ると、峠道のコーナーを車体をドリフトさせてビュンビュン降って行く。
「うぎゃーーーーーッ!」
やめて~~~~~~~!
M〇ゴーストじゃなからんだから~~~~~~~!
(※繰り返しになりますが、作者は、しげの先生をリスペクトしています。)
しかし、見当違いだった。
高橋は、そのまま泉天さんをプリマヴェーラまで送ったのだ。
買った食材などの荷物も、高橋がプリマヴェーラまで運んいた。
そして、高橋のB〇Wがプリマヴェーラの駐車場を去るのを確認すると、関さんがイタ車レク〇スをプリマヴェーラの駐車場に止めた。
「よし!泉天ちゃんに何事も無かったぞ!」
「良かった、良かった」
「うむ、任務完了だ」
「イエーイ!」
「わっはっはっはっ」
男3人が、健闘を讃え合った。
コツコツ
そこに、急に僕が座っていた助手席側のドアの窓が叩かれた。
泉天さんが、ニッコ~リして立っていた。
「げっ?もしかして気づかれたか?」
「いやいや、完璧な変装だったはずだぞ」
「さすがに○○君の変装はやり過ぎたのでは?」
「僕もそう思います」
「3人ともいいから降りてきてください!」
「はい!」
泉天さんの日頃聞くことのない怒声に慌てて僕等はイタ車から降りた。
3人揃って泉天さんの前に整列する。
「何ですか?ずっと後を付けてきたりして」
「あれ、バレてたの。おかしいな。完璧な変装だと思ったのに」
「こんなハデな車は、すぐにわかります。それに、レストランの○○君の恰好は目立ち過ぎましたよ」
「ああ、やっぱり・・」
「で、何で後をつけたりしたんですか?」
「いや。○○君から、泉天ちゃんが変な男に連れていかれたと聞いたから、これは泉天ちゃんの危機かと思って・・・」
「はあ?」
泉天さんが、僕の方を睨む。
「ちょっと、僕、変な男とは言ってないですよ。ちゃんと泉天さんの先輩の方と言ったじゃないですか!」
僕は慌てて、関さんに抗議する。
「そうだったか?まあ、それで泉天ちゃんの危機だと思ったわけで。何かあったらいつでも助けに入ろうとな。えせイケメンは信用ならんからな」
「何ですか、それは。別に何もありませんよ」
「え?何かあいつ言ってきたんじゃないの?告白とか」
それ、直球すぎるでしょ!
「えーと、確かに付き合えないかと言われましたけど・・・」
泉天さんの頬が、少し赤くなり、恥ずかしそうに小声となる。
「で、何て答えたの?」
「こ、断りましたよ。私には、プリマヴェーラがありますから」
「おお、さすが泉天ちゃんだ!〇〇君良かったな」
「はい、まあ・・」
「何だ。こいつ。照れやがって。ハハハ」
関さんが、ニンマリして僕の背中を強く叩いた。
「痛てッ!」
「さあ、終わり終わり、良かった良かった」
「良かった良かった」
「さあ、近藤さん帰ろう、帰ろう」
「ですな」
関さんと近藤さんは、それぞれの車に乗って去って行った。
ちなみに近藤さんの車は普通のシルバーのト〇タ車だ。何で、こっちで追いかけなかったのかと今更ながらに思った。
二人を見送った後、泉天さんが僕をジーっと見ているのに気付いた。
「えーと、何でしょう?」
僕は、ポリポリと頬を搔く。
「さあ、何でしょうねえ」
そう言うと、泉天さんプイっとそっぽを向き、カフェの方に歩いて行った。
「泉天さん、ま、待ってくださいよ~」
「○○君のせいで、明日の仕込みがまだできていません。これから付き合ってもらいますからねえ」
泉天さんが振り返り、笑顔で言った。
「わ、わかりました。頑張ります!」
僕のせいでは無いと思ったが、そこは、置いておいた。
高橋という厄介な奴のせいで、気が気でなかったが、いつもの泉天さんだ、と思って僕はホッとした。
とんだドタバタ劇となってしまったが、不思議と心が晴れやかだった。
家で悶々と泉天さんの帰りを待っていたら、こんな気持ちにはならなかっただろう。
僕は、関さんと近藤さんに感謝した。
翌日、午前11時頃。
Cafe・プリマヴェーラ。
カラン、カラン
「いらっしゃいませ」
高橋が入って来た。手にノートPCを持っている。
「髙橋先輩・・・」
「やあ、泉天。僕は、暫くここに通わせてもらうことにしたよ。君の考えが変わるのを待とうと思ってね」
そう言って、高橋はニカっと微笑んだ。
何だ、こいつ。
振られたのに、立ち直り早すぎないか?
「先輩、お仕事は、大丈夫なんですか?」
「ふふふ。僕は、会社の代表だからね。こいつさえあれば、仕事はできるさ。今はリモートワークだよ」
高橋は、PCを指しながら言う。
「あの~、ここでお仕事するつもりですか?」
「まあね。ご心配なく。ちゃんと注文するからさ」
「先輩、他のお客様の迷惑にならないようにお願いしますね」
「わかっているよ。ああ、泉天の顔を見ながら仕事をすると捗りそうだな」
「もう、やめてください」
「ははは、泉天は、可愛いな」
泉天さんが照れているのを、高橋は楽しそうに見ていた。
僕は、そのやり取りを、横から黙って食器を洗いながら、見ていた。
そして、高橋は急に僕の方を振り向き、挑戦的な視線を向けた。
「○○君。これから、よろしくね」
「は、はい」
はあ・・・。
また厄介ごとが増えた気がするのだが・・・。
(エピソード「そのカフェの女店主を守れ!」おわり)
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