第13話 そのカフェの女店主を守れ! 3rdミッション

 山頂付近まで関さんのイタ車レ〇サスで進むと、見晴らしの良い高台に、本当に高級フレンチレストランがあった。


『サミット・ヴィスィタ』という看板が見えた。

 広い駐車場には、何台も高級車が止まっていた。その中に高橋の白のB〇WSUVもあった。

 関さんは、気づかれないように、イタ車レ〇サスを高橋のB〇Wから離れた場所に駐車させた。


「よし。やはり思ったとおりココだったな」

 関さん、近藤さんと僕は、イタ車レ〇サスを降りる。

「いいか。レストランではバレないようにしろよ。特に〇〇君は、その格好だと、すぐにバレそうだな・・・。う~ん、普通すぎる」


 僕は、確かに平凡なキャップを被っている位なので、目線を隠して誤魔化すこと位しかできないだろう。関さんも、近藤さんもサングラスや付け髭、長髪のカツラなどで変装しているのだ。こちらは、どう見ても普通ではない。


 関さんが、思案する。


「そうだ。いいものがあるぞ」

 そう言って、トランクをあさる。

「ほら、帽子と眼鏡。う~ん、まだこれだけだと心許ないな・・・。よし、服も変えよう。これを着てくれ」

 そう言って、黒いヘヴィメタの帽子、黒ぶちの丸い度なし眼鏡、オタクアニメのアイドルキャラがプリントされたピンク色のシャツを渡された。


「・・・・」


 さすがに、これを着るのは、恥ずかしい!

「遠慮しておきます」


 関さんが、顔を近づけドアップで迫って来た。

「馬鹿者!恥ずかしがっている場合か。いいか!泉天ちゃんのなんだぞ。恥じらいを捨てろ!〇〇君、君は、泉天ちゃんをあのから守りたくないのか!」


「ハッ!」


 そうだ!僕は、泉天さんをあの高橋から守らなくてはいけないんだ!


 ヘヴィメタが何だ!アニオタが何だ!

 僕は、恥じらいを捨てた。

「わかりました。着ます!」

「そうだ。わかってくれたか。〇〇君」 

 そう言って、関さんは、僕の肩を抱く。


 しかし・・・・。


 着替えて見て思ったが、この格好で高級フレンチ店に入ったら返って目立つのではないだろうか? 僕だけでなく・・・、この3人が。


「よし、入るぞ」


 店内は、広々としていて、黒い床に白いシーツを敷いた洒落たテーブルがいくつも並ぶ。天井も高い。窓側は紫外線をカットするガラス張りとなっており、眺望が望める。窓の外側にはテラスがあり、テラス席もあるようだ。

 

 この高級感あふれるレストランに、どう見てもオタクにしか見えない3人が入る。

 僕は、泉天さんと高橋が、ガラス張りの窓際の席に腰かけているのを確認した。


 僕らは、そこから離れた壁際の席に座った。

 男3人、それもオタクにしか見えない男達が、フレンチというのは、違和感を通り越して不快感すら抱かられないか心配になる。

 

 メニューを開くと、コース料理が基本だ。昼でも最低一万円・・・。

 関さんが出してくれるというのはありがたいと感謝したくなった。

 関さんが、一万円のコース料理を、3つ注文した。


 僕らは、泉天さんと高橋の様子を確認する。

「ここからだと、さすがに何を話しているかわかりませんね」

「まあ、あのにやけたイケメン野郎が変な事をしないか見張るのが目的だからいいさ。気づかれたらマズいからな。いいか、あの野郎が泉天ちゃんのとしたりしたら踏み込むぞ」

「マジですか?」

「当たり前だ。あの野郎が泉天ちゃんに触れでもしてみろ。すぐするぞ」

「さすがに、それは飛躍しすぎじゃないでしょうか?」


「甘い!」


 関さんと近藤さんの言葉が唱和する。


「〇〇君、君は泉天ちゃんの魅力がわかっていない。あのアニメの女神さまのような癒やし系の顔にあのボンキュッボンのナイスバディ。そのギャップに男は魅了され、翻弄されるんだよ!特に、あの・・・、うえへへへ・・・」


 関さんと近藤さんがだらしなくニヤケ出す。


「泉天さんでいやらしい妄想は止めてください!」

 僕は、堪らず声を上げた。


「あ!マズいです。泉天さんがこっちをジーっと見ています」

 僕は、慌てて視線を逸らした。

「大丈夫だ。この完璧な変装が見破れるわけがない」

「いや、多分僕のこの格好を不審に思ったのではないでしょうか?」

「ふふふ、安心しろ、〇〇君。そのオタクともバンドマンとも取れる完璧な変装を見破れる筈がないさ」

 その根拠のない自信が危険だと僕は感じた。


「ヤバいです!泉天さんが、席を立ってこっちにやって来ます」

「何!ここでバレるわけにはいかん!泉天ちゃんと視線を合わせず、自然体でやり過ごすんだ」


 カツコツカツコツ・・・


 泉天さんが近づいて来る。心臓がドキドキと鼓動するのが聞こえる。

 

 コツッ!


 泉天さんのヒールの靴音が止まった。すぐ横にいるようだ。

 僕等は、泉天さんの方を向かないようにしてジッとしていた。

 僕の心臓が高鳴り、冷や汗が首筋を伝う。


「クスっ」


 え?


 泉天さんが笑ったように感じた。そして、泉天さんは、奥のトイレの方に行ったようだった。


 なんだろう?


 気付いたのに、わざと見逃されたのか?

 泉天さんが、去っていくと、冷や汗がドッと出てきた。



 それから、泉天さんと高橋は、会話をしながら食事をしていたが、メインディッシュを食べた辺りで泉天さんが時間を気にしているように見えた。


「いいか、よく見張っておくんだ。繰り返しになるが、あの野郎が泉天ちゃんの手を取ろうものなら、現場を押さえるぞ。現行犯逮捕だ」

 関さんがそう言うと、僕と近藤さんはコクリと頷く。 


 食後のティータイムに、高橋が何かを言ったようだが、泉天さんは首を横に振り、頭を下げているように見えた。

 これは、高橋が何かをを言ったのだろうか?

 そして、泉天さんはそれを断ったということか?


 高橋が、店のアテンダントを呼んだ。会計をするようだ。料金を確認すると、高橋がクレカを出した。

 どうやら、店を出るようだ。


「よし、こっちも会計だ」

 関さんがアテンダントを呼ぶ。

「いいか、ここからが大事だぞ。あの野郎が泉天ちゃんをに連れ込むかもしれん。これは、何としても阻止しなければならない。さあ、二人が店を出るぞ」

 泉天さんと高橋が、店を出て行くのを確認する。僕等も会計を済ませて急いで外に出る。


「ムムム、あんの野郎!」

「これは許せませんねえ」

 高橋が、泉天さんの腰に手を当ててエスコートして、B〇Wの所まで歩いて行くのが見えた。

 二人が車に乗って駐車場を後にするのを確認すると、僕等もダッシュして関さんのイタ車レ〇サスの所まで行く。


 僕等は、急いで車に乗った。


「いいか、何としてもあのイケメン野郎から、泉天ちゃんを救うぞ!」

「おーッ!」


 イタ車レ〇サスによる、B〇W追跡が始まった。


                    (このイタい話は、まだつづきます)

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