第11話 そのカフェの女店主を守れ! ミッションスタート

 翌朝10時頃。


 ピンポーン・・・。

 ピンポン、ピンポン、ピンポン、ピンポン・・

「おーい。いないのかー!」

 チャイムに出ないでいたら、玄関から男の声がした。

「やばい!関さんだ」


 忘れていた!


 今日は、緑ノ里みどりのさと(この辺りの地名)の周辺を案内してやると言われていたんだった。急いで、階段を駆け下りる。

 でも、泉天さん狙いなのはバレバレなんだよな。僕はどうせダシに使われたのだろう。

「遅いぞ。10時に迎えに行くと言っただろう」

「すいません」

「で、泉天ちゃんは?」

 関さんが、家の中を覗き込むように見る。

「さっき出かけましたよ」

「あー、何だよ。泉天ちゃんいないのかー。一緒にと思ったのになあ」

 関さんが、露骨にがっかりした。

 やっぱりな・・。

「で、どこに行ったの?」

「泉天さんの先輩の高橋さんと云う方と今日は買い物と食事に行ったようです」

「高橋?そいつはまさか男か?」

「はい。先日が久しぶりの再会だったようです」

「で、そいつは、イケメンか?」

「そうですね。爽やかな感じの大人の男の人という感じでしたね」

「○○君、何で止めなかった!」

「ええ、そんなことを言われても・・」

「馬鹿野郎!先輩ヅラして『久しぶり~』なんて尋ねて来る男は、泉天ちゃん狙いの下半身野郎に決まってるだろう!」

「ええ~と、それは偏見ではないですか?」

 エロ男でなくイロ男に対する・・・。

「嫌、俺様の直観がピピっと来たぞ!」

「その通りですね~。そう言う輩は、実に信用できませんねえ」

「近藤さん!」

 近藤さんこのひと、いつの間にやって来たの?

 関さんの横からヌーっと顔を出したんだけど!


「こうしちゃおれん。さあ、○○君。泉天ちゃんのピンチだ。追うぞ!」

「マ、マジですか?」

「どこに行ったか心当たりはあるか?」

「恐らく、ショッピングモールかと。いつも週末はそこの市場で食材の買い物しますので」

「よし、行くぞ!」

 関さんと近藤さんが顔を見合わせて言う。

 何気にこの2人は、仲が良いのかもしれないな。

 

 街道沿いのプリマヴェーラの駐車場まで行くと、見たことがないほど派手なピンク色の車が止まっていた。それも、ボディにアイドル服を着た黒髪のアニメキャラがプリントされている。


 え?これって、車では?


 よく見ると、車のノウズに「L」のエンブレムが。高級スポーツカーのレ〇サスRCのクーペだ。うわ~、憧れの高級車が・・・!

 しかし、レ〇サスをイタ車にするとは、勇気があるなあ。オーナーはどんな人なんだろうか?

「うわ~、派手な車が止まってますねえ」

 これに乗るのは、勇気がいるなと思っていると・・・。


 ガチャッ


「よーし、追うぞ。〇〇君、助手席に乗れ。近藤は後ろな」

「えーー!このイタ、レ〇サスは、関さんの車ですか?」

 僕は、言葉を失った。

「どうだ、カッコイイだろう?『輝折たん』だぞ。可愛いだろう?みんなから注目の的だぞ」

 関さんが顔を近づけて力説する。

「そりゃそうですけど・・・、僕は遠慮しておきます。では」

 

 嫌だ!

 こんなことで注目されてたまるか!



 そう思い、僕は、家に引き返そうとすると、腕を掴まれた。

「待て、○○君。君は、見た目で人を判断するのか?」

「え?」

「オタクには、人権が無いと思ってるだろう!」

 関さんがどアップで迫ってくる。

「そんなこと思ってないですよ!」

「そうか。じゃあ、俺の『輝折たん』号にも乗れるはずだ。さあ、〇〇君、これは、君のオタク道への踏み絵だ。さあ!」

 関さんが、鬼の形相の顔を僕の顔に近づけて言う。

「僕、オタクになるって言ってませんが・・・」

「何よりもだ・・・。〇〇君、泉天ちゃんのなんだぞ!」


「ハッ!」


 そうだ。僕は、イタ車を前にして目的を忘れていた。

 あの高橋から泉天さんを守ることだった。

 イタ車が何だ!いいだろう。乗ってやろうじゃないか!

「わ、わかりました。行きましょう」

「よし、乗れ!」

 僕らは、関さんのイタ車レ〇サスに乗り込んだ。


※すいません。作者はイタ車好きですし、レ〇サスも乗れれば乗りたい憧れの車です。


「行くぞ!待っていてくれ。泉天ちゃーん!」

 関さんは、バックで急発進すると、ドリフトをして街道に乗った。

「うわ~、危な!関さん、安全運転でお願いします」

「大丈夫だ。フフフ」

 嫌、目が座ってるから。

「いや、だから安全運転でお願いしますって。ウギャーッ!」

 関さんは、街道のカーブや峠道をドリフト走行で攻めて行く。

 頼むから、峠道のコーナーを『〇Fゴースト』※張りに責めるのは止めてください!危険すぎますよ~~~!

 

※絶対皆さんは、峠道を攻めたりしてはいけません。危険運転は、しないでください<(_ _)>。作者は、しげの先生をリスペクトしています。



 どうやら無事にショッピングモールに着いたようだ。

「はあ、死ぬかとおもった・・・」

「○○君、いたぞ!」

 駐車場に入り少し走っていると、泉天さんと高橋が前を並んで歩いているのが見えた。

「よし、俺たちも降りて後をつけるぞ」

 僕たちは車を降りた。

「この車目立ち過ぎませんか?注目されてバレたら終わりですよ」

「安心しろ。に移行するから」

 おお~!さすが、高級車レ〇サス。そんな機能があるのか!

 そう言うと、関さんはトランクを開け、何やら取り出した。

「おーい、○○君。そっちの端を持ってくれ」

「はい・・・。え、これ?」

 そして、僕と関さんはイタ車に灰色のをかけた。

「これで、俺の『輝折たん』号とは気づかれんだろう」


 ステルス・モードとかカッコイイ言い方しないでよ!

 カバーかけるだけじゃん!


 駐車場に止めた高橋の車を確認する。外国の高級車B〇Wの白のSUVだ。

「どれ、落書きしてやるか」

 関さんが黒のマジックを取り出した。

「やめてください!犯罪ですよ。そんなことより二人を見失いますよ」

「それもそうだ。急ごう」


 後をつけて行くと、泉天さんと高橋は、思ったとおり市場に向かって歩いていた。高橋は、何度もニカっと白い歯を見せて笑う仕草をしている。

「やはり、いけ好かん奴だ。イケメンなのが一番気に入らん」

「ですね」

 関さんと近藤さんの意見が一致する。

「あ、あの野郎!」


 高橋の手の動きが怪しい。手を繋ごうとしているのか、腰に手を回そうとしているのか?

「むむ、やはりあいつは良からぬことを考えているぞ!」

「泉天さんの危機ですよ。これは!」

「そ、そうでしょうか?」

 しかし、泉天さんが、突然、興味のあるお店のショーウインドーに走ったり、立ち止まったり、近くを通った犬に挨拶をしたりして高橋のは悉く失敗に終わる。

 泉天さんは、これをやってるのだろうか?行動に不自然さは無く、いつもの泉天さんの行動なのだが。


「ああ、やっぱり」

「信じられん。全てかわしたぞ!やはり泉天ちゃんの天然はすごいな!」


 2人が市場に入った後、暫くすると、泉天さんは食材などをタンマリ買っていて、高橋が大量の荷物を持ち、フラフラしながら出て来た。

「えらく買うんだな」

「はい」

 僕は頷く。あれをいつもは、僕がやっているんだから。


 2人は、高橋の高級車B〇Wまで来ると、高橋がバックドアをを開け荷台に買い物した持ち物を入れる。


「ふう、食事行こうか。ちょっと離れてるけどいいレストランを予約してあるから」

 少し離れた場所の車の陰から様子を伺っているとそう聞こえた。

 二人がB〇WのSUVに乗った。


「よし、俺たちも追うぞ!」

 関さんがそう言うと、イタ車レ〇サスに乗り、高橋のB〇Wを追いかける。


 B〇Wは高速道路に乗り、2つほど先のインターで降りた。そして、県道に乗り、暫く進むと山を登って行く一本道を進んで行く。

「これ?ばれるんじゃなですか?この車ハデですし」

「そうだな。わからないように距離を取るか。どうせ一本道だし。ここは、確か山頂付近に高級フレンチレストランがあったはずだ。きっとそこだろう」

「よく知ってますね」

「前に行ったことがあるからな。ちょっと予約要れられるか確認してみるか」

 関さんが脇に車を停めて、お店に連絡を入れる。


 やはり、イタ車だが高級車レ〇サスに乗っていいたり、高級フレンチレストランを利用したりしているところを見ると、関さんは金持ちなのだろうか?


「ラッキーだ。今日は空いてそうだ。行くぞ」

「関さん、すいませんが、僕、フレンチ食べられるほのお金持っていないですよ」

「細かいこと気にするな。俺が出すから」

「あ、いえ後で払いますよ」

「いいんだよ。若いのに遠慮するな」

「す、すいません」

「ご馳走さま~」

 近藤さんがヘラヘラしながら言う。

「ダメだ、お前からは貰う!」

「うぐぐぐ・・」

 近藤さんは、ガックリと肩を落とした。


                   (まだつづきます。お付き合いください)

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