第18話 征く者、添う者、分かる者

「くくっ」

「む?」

 四郎丸が近づくのを数歩下がり様子を伺っていた果心の耳に、不可思議な笑い声が聞こえた。初めこそか細かったその声だが、やがて大音声へと変わった。

「くくく、くくっく、はーはっはっはあ!」

 その割れんばかりの大音声になるにつけ、思わず四郎丸も眉を顰めた。

「おい、由井正雪、何が可笑しい。それとも、気でも触れたか?」

 その問いにも答えることなく、ただただ義弼は壊れた絡繰細工のように笑い続け、

「はーは、はは・・・・・・たわけえ!!」

 ピタリと笑い止んだ途端に果心を、そして四郎丸をと順繰りに睨みつける。ぎょろりと目玉を引ん剝き、こちらを凝視する義弼の明らかにおかしい首の動き。それの上に乗っかる顔には、怒りと喜びと苦痛と諦めがない混ぜとなった表情。

 その鬼気迫るモノに流石の四郎丸もたじろぎ、近づく足が止まった。

「孤が・・・孤が!貴様らの手におちるなぞ、天が許しても孤が許さん!」

「強がりは止せ。これ以上、お主に何が出来よう」

 顔を引き攣らせながらも、果心は丁寧にそう諭す。

「それはどうかなあ!?」

 しかし、にちゃりと不気味に笑った義弼は果心を睨めつけたまま、床を蹴り後ろへと倒れこんだ。

「な!?」

 なんということだろう。義弼は自らを大穴へと投じたではないか。あまりに予想外の行動に、思わず四郎丸も果心もそれを呆然と眺めていた。

「いかぬ、四郎丸!」

「っく!?」

 正気に返った果心がそう命じるも、気押されて少し身が引けていたのが仇となった。捕らえようと伸ばした四郎丸の手は、寸のところで空しく空を掴む。

「はーはははははあ、見たか果心!見たか下郎!これが、これが孤が奥の手よ!」

 駆け寄り、大穴を覗く果心たちを満面の笑みで見上げつつ、義弼はその身を贄に儀式を為すべく宣唱の言葉を上げる。

「かつて、関八州へ破滅をもたらし悪新皇よ!我が魂を喰らい、愚かなる者どもへ天の裁きをぉぉ―!!」

 そうして義弼は大穴の中、どろりとした淀みに呑まれていった。それを漫然と見送ってしまった果心たちは、互いを渋い顔で見合わせる。

「糞!おい果心、これからどうなるんだ?」

「儂が分かろうか!それより―」

 その時、光が走った。義弼を呑み込んだ大穴より、天を貫き柱として天を支えんばかりの1筋の閃光が。

「この光、この気配・・・まさか、成ったというか、遷現が!?」

 「正解」と言わんばかりに、眩しい光の照射は続く。そしてそれに伴い、地中から何かが湧き出るかのように大地は震え、光と共に吐き出される大風がガタガタと堂舎を揺らした。

「おい、何だか分からんが・・・拙いぞ」

 何が起こっているのかは四郎丸には分からないが、その振動が堂舎へと良くない事は確かだ。現に梁は大きく軋み、パラパラと木くずがあちこちより落ちて来ている。どう楽観的に考えても、安全な状態では無い。

「・・・うむ、うむ!兎角は逃げるぞ!!」

 そう言われるが早いか、四郎丸は果心を小脇に抱えて走り出す。

「お主もか!?」

「黙っていろ、舌を噛むぞ!」

 果心を抱えていない方の手で鞘走らぬよう抑えつつ、四郎丸は出口めがけて飛ぶように走る。しかしいや増す振動に足を取られ、中々真っ直ぐは走れない。

(これでは、間に合わん!)

 既に蔀は大風に負けて弾け飛び、床板は大穴付近よりめくれ上がってきている、一刻の猶予も無い。四郎丸が「南無三」と堂舎より跳び出したその時、ぐわらんぐわらんと揺さぶられに揺さぶられ、とうとう耐えきれなくなった梁がどうと落ち、堂舎は跡形も無く崩れ落ちた。


「やれやれ、見向きもしねえか・・・」

 果心を小脇に抱えて立ち去る影を目で追いつつ、道峻はやれやれと呟いた。発砲時の火薬と熱による火傷で、禿頭も相まり相貌は何とも言えぬ凄味がある。

「あの阿保公方も、まさか俺に邪魔されるたあ・・・まあ、良いか」

 驚愕に歪む義弼のあの顔を思い出すだけで、自然と笑みが漏れる。あの馬鹿面が見られただけで、骨を折った甲斐はあるというものだ。

 それに、気のせいやも知れぬが果心はこちらを見ていた、ような気もする。アイツも、よりにもよって自分に2度も救われるとは思ってもなかったろう。

「・・・しっかし、阿保公方も<僧兵>も甘いこった。腕を落としたくらいで俺を無力化出来るたあ」

 無論、困難な事は事実。特にあの場合、果心に当ててもならず、義弼の命を奪っては―人間が腹や胸にくらうと前屈みになってしまう―ならず、さりとて左手の馬上筒を撃たせてはならずと両腕を失った身にしては難儀が過ぎる。

「まあ、難儀くらいなら、果たせて見せるが腕利きの証だあね」

 倒れ伏していると見せかけ種ケ島を抱くように構え、痛みを無視して足で引いた引き金。そして、放たれた弾丸は狙い過たず義弼の左肩を抉りとれた。これは逃げる相手に撃った訳ではないから、『因果妙』ではない。

「つまりは俺の腕、いや・・・足か?ま、何でもいいや」

 衝撃で義弼は馬上筒を取り落とし、果心は無傷。オマケに左肩へと玉を喰らった為か、体勢も左に傾いた。そのおかげでこその果心の曲芸、その一助となったとあれば。

「まあ、十分だあねえ」

 しかし、何という皮肉だろうか。生前は命を奪えず名を落とし、新たに生を受けて尚命を奪えぬ事を望まれ、しかして最後は命を奪わず状況を打開した。あまりの奇縁、その馬鹿馬鹿しさにククッと喉が鳴る。

「はあ。しかし、ここまで・・・か・・・・・・」

 最早堂舎は倒壊寸前。腕が無いため這いつくばることしか出来ない我が身にとって、脱出なぞは夢のまた夢だ。無論、果心らに縋っていれば助けてもらえたかもしれないが、そんな事は道峻の意地が許さぬ。

 せめてと、身を捩じらせて仰向けとなるがそこまでが限界、バッタリと背中を床へ合わせた。

「ま、最後に成功出来た・・・んだ。二度目の生・・・としちゃ・・・・あ、万々歳・・・さね・・・え」

 呵々と笑い、充実した気持ちで目を閉じると、すうっと意識が遠のいていく。その後、体が泥人形に戻ったのが先か、落ちて来る梁に押し潰されたのが先か。

 そんな事は最早、彼にとってはどうでもよい事である。


 1歩、入り口間際より大きく跳ぶ。

 2歩、響く轟音ともうもうと迫る埃を背後に着地後、更に跳ぶ。

 そして3歩目に堂舎の入り口前に設けられていた廊下へと着地しようと思ったのだが、

「げ!」

 『堂舎が倒壊する』ということを甘く見ていた。倒壊と共にその廊下も壊れ、四郎丸の眼の前には破断した床材がにょっきと突き出している。「このままでは死ぬ」、そう判断した彼は、担いでいた果心を前方へと放り投げた。

「なあ!?」

 思わず驚声を上げた果心を他所に、四郎丸は自由になった両手を使いその先端部を前転の要領で飛び越える。郷では格好つけだけの技と蔑まれていたものだが、成程どんな技にも使い道はあるものだ。

「よっと」

 そして、そのまま空中で何回転かしつつピシリと着地を決め、すかさず立ち上がって振り向き、

「やったか」

 と決め台詞。後ろから聞こえた「ふべ!?」という粋でない声は、この際聞こえないこととした。

「やったか、ではない!!」

「無事か、やはり」

「やはり、でもなーい!!」

 そう言って両手を振り上げ抗議の意を示してくる果心だが、全身が薄汚れていること以外に怪我など変わった様子は無かった。立ち上がって両手を振っている事から四肢に負傷も無い様で、やはりと言おうか(言ったが)並大抵の女では無い。

「そう言うな。あのままだと危なかったんでな。それに・・・お前なら、多少無下に扱っても無事だと、信じていたさ」

「・・・嫌な信頼じゃのう」

 口も回るという事は頭も無事だったようでなにより。口には出さないが心配は四郎丸もしたのだ。ただ、その心配のカタチが少々露悪的だっただけのこと。

「何とも好き口舌。どうやら、ご無事なようで」

「ああ、なきま・・・どうした!?」

 己の従者の声のする方へと振り返った四郎丸は、その風体を見て大きく目を剥いた。

「ああ、これですか?大したことは御座いませぬよ」

 その言葉を信用出来るほど、四郎丸の眼は悪くない。襤褸布のような装束は同じとは言え、その布地を彩る赤黒い染み。それは思わず掴みかかることを四郎丸に自制させるほどには縦横に走り、痛々しい。

「敵かの、泣丸」

「左様で。恐らくはもう一体の式霊とやらでしょう。何やら唐土もろこし風の装束をした女御にて」

 そういつも通りに努めて紡ぐ言葉の折々に、辛そうな吐息が混ざる。

「ふむ、唐土風・・・その様子じゃと、派手にやられたようじゃの」

 しかし、そんな泣丸の状態を無視するかのように、果心は情報の共有を急がせた。傍目には無常に思えるかもしれない。が、果心は知っている。この手の従者においては下手に気遣うより普段通りに扱う方が好ましいことを。

「いえいえ。派手に汚れて見えますが、体の傷は大したことは御座いませぬ。まるで手矢の如き獲物でした故、鎖帷子に阻まれ深くは刺さっておりませぬ」

その代わり、とプラプラと手慰むように振って見せた刀は無残に毀れ欠け、鞘に納めることすら難しいだろう

「物は無いのか?」

 当然、四郎丸も彼のそういう性分は承知も上だ。なので果心を咎めることはせず、会話に加わった。

「ええ、残念ながら。刺さった物も含めて、霞のように消えてしまいました。して・・・そちらの首尾は?」

「かくかくしかじか。残念じゃが、画竜点睛を欠いたようじゃ。諸々の事象から判断するに、遷現の儀式自体は成ったようじゃ。しかしあの口ぶりから生贄の具合は不十分。ならば、どうなったか・・・それは分からんのう」

 実際、倒壊した堂舎からは先ほどまでの轟々とした嵐は何処へやら。辺りはしんと静まり返っており、時折聞こえるのは瓦や建材の破片が重力に耐えかね落ちる音ばかりである。

「ふむ。であれば遷現為りしも式霊足らず、という可能性も?」

「そうじゃの。このままここを抑えておくだけでよければ、儂も気が楽なのじゃが・・・」

 しかし、果心の表情は「それはあるまい」と雄弁に語っていた。事前準備が不十分だった果心の儀式ですら短時間、式霊が遷現したのだ。

「所で泣丸、もう1体の式霊はその後どうなったんだ?」

「そう、それ。暫くはベンベン掻き鳴らしつつ梢の向こうから放ってきておったのですが、突然パタリと居なくなってしまいまして」

「居なくなったあ!?」

「はい。若しやすれば、主を失い逃げ出したのか、とも思いましたが・・・主殿、彼の首班が飛び込んだのは」

「俺たちが逃げ出す、一寸前だ」

 であれば、時間的な帳尻が合わぬ。四郎丸も果心も、思わず「むう」と口を真一文字に結んだ。

「・・・まあ、式霊と言っても、人と同じく故あれば裏切るものじゃ」

「お前が言うかね、それ」

 戦国の梟雄が言うには、その台詞はいささか諧謔が過ぎた。

「煩いの。中での醜態を察し、ついて行けんと逃げ出しても不思議は無い・・・か。それよりも―」

 ずうん、と地面が揺れた。

「「「!?」」」

 皆、一斉に倒壊した堂舎跡へと目を向ける。倒壊による揺れであろうか。否、既に九分九厘倒壊しているのだ、あれ程響く揺れを生じさせようが無い。それを証明するかの如く、2度3度と合間を空けて続く揺れは続き、その揺れでからん、からんと音を立てて破片が地面を叩く。

「果心、こいつぁ・・・」

「そうじゃ四郎丸、来るぞ!」

 そう、話す間も揺れは続き、その間隔は短くなり、ついにはぐらぐら、ぐらぐらとまるで地震のように3人を襲う。

 そして跡の中心、大穴があったらしき場所からは墨汁を煮詰めたような、黒々とした粘性のあるような液体の様なものがぼこりぼこりと湧き出している。

 最早、疑う余地は無い。距離を取るべく各々ばっと飛び退いた、その瞬間、

「キィ、キイイイイイイイイイィィィィィィ~!!」

 水車が軋むような、閉まりの悪い長持を無理やり閉めるときのような。名状しがたい何とも不快な、声とも音とも言い難い音と共に、湧き出していた液体が一塊になったような黒い、唯々黒い、ぶよぶよとした球体が姿を現した。

「ッ!?」

 眼前の、あまりの存在に呆気にとられ、言葉を失ったらしい四郎丸の代わりに泣丸がおずおずと果心へと問いかけた。

「か、果心殿、あれが?あんなものが?」

「ああ、そうじゃ」

 そう言う果心も、らしくなく動揺しているのか放心しているのか、声に力が無い。

「あれが式霊、平将門。そのなりそこないじゃ」


 ソレは困惑していた。仮に人並みの感覚があればと仮託しての話だが。

 地の底で揺蕩っていたソレを「来たまえ、来たまえ」と呼ぶ声。その方を向けば何時ぶりだろう、鈍く輝く小さな光。

(あそこへ、いきたい)

 何時しかソレの中に力が満ちていた。か弱いが、ここから抜け出すくらいは容易い力だ。すいすい、すいすいと水を掻くように、飛ぶように。

(よばれている、よばれている。ひかり、ひかりだ、もっとひかりだ)

 そうして、光をくぐった瞬間に、再びソレの世界は暗闇だ。

(どうしてだろう、どうしてだろう。くらい、くらい。さむい、さむい)

 ぐるりと見渡す目も、周りの音を聴く耳も、ここはどこと問うための口も、ソレには無い。何も無い。ぶるん、ぶるんと体を揺らす、それしか出来ない。

(だれか、だれか。なにをすれば、どこへいけば、あったかい)

 その時、遥か彼方、那由他の彼方とも感じられるほど遠くに。薄く、微かに、しかし確かに輝く、先と同じように自分を呼ぶ光だ。

(いこう、あそこに)

 ぶるぶると体を揺らして、がたがたと邪魔者を蹴散らして。


「いかぬ、動き出したか!」

 初めはぶよりぶよりと揺れるばかりであったその球体であったが、やがてある一方へと明らかな志向性を以て動き出した。一瞬、瓦礫に動きを止められるような素振りも見せたが、そんな端材では障壁代わりにもなりはしない。ゆっくりと、しかし確実に、のたりのたりと進んで行く。

「どうやら引っかかってたように見えたが、やはりそうそう、良いようにはいかんな・・・。しかし・・・本当にあれがか?」

 未だに目の前の、あんまりにもあんまりな物体の正体に得心のいっておらぬ様相の四郎丸が未練がましくブツブツ言ってくるので、果心はびしゃりと言ってやった。

「しつこい!恐らくは・・・贄が足らなかったか儀式が不完全じゃったか、或いはその両方で完全な人の形には出来なんだのじゃろう」

 故にまだ、時間はある。事実、将門モドキの進行は極めて鈍重で、蝸牛の歩みの如しだ。

「しかし四郎丸よ。泣丸の奴を退がらせて、本当に良かったのかの?」

「ああ、お前も言ったが勝機は五分五分も怪しいんだろ?だったら、若し俺たちが敗死した時に備えて天海へ使者を遣る必要がある」

 当然、それが言い訳なのは言うまでも無く、問うまでも無いことだ。

「確かに、これだけ悪しき気が蔓延しておっては念話も碌に出来ぬしの。一応、天海に念を飛ばすだけは飛ばしたが・・・」

 それに、と四郎丸はポンと何もない左腰を掌で叩く。

「そうでなくとも、我が父祖の刀は借り物だ。返さねばな」

「今更、律義者気取りかの?」

「いんや、親藩なぞに借りを作りたくないだけだ」

 そう言って、四郎丸はニヤリと笑った。

「ぬかしおる・・・しかし、お主は命を懸けて事を成そうとするクセに配下にはそれを認めぬとは、まったく自分勝手な奴じゃのう」

「それが、上役の特権さ。・・・それに、俺たちとは違ってあいつは未だ真人間、生き残るべきだ」

 そう呟く四郎丸の握る手には、今は何もない。が、果心はそこに流れる気の巡りから、確かに刀が生まれるのを見た。

「結局、お主も儂と同じ。輪廻の理から外れてしまったやもしれぬの・・・」

「なあに、俺が言い出したことさ」

 事も無げに語り、にかと向けて来る笑顔に皮肉の色は勿無いのだろう。が、だからこそだろうか。果心の胸はその屈託の無さにしくしくと痛んだ。

「さてさて、戯けとる時間は無いぞ四郎丸」

 そんな罪悪感からか、四郎丸から目線を反らすかのように将門モドキを見詰め嘯いた声は、どことなくうわずっていた。

「・・・ん」

 さっきは果心を玩具にした四郎丸も、流石にそれを無暗に揶揄わぬ程度の分別はある。果心の強がる横顔を横目でチラと覗き同じように視線を移すと、

「そうだな」

 と軽く頷いた。そして無意識に懐に手を伸ばし、書状を握ろうとしたのを自覚すると、

「しかし・・・泣丸の奴も死に急がれては困る、というのは分かるが・・・この折にこんなものを渡されてもなあ」

 そう、クシャリとほくそ笑む。

「そうじゃな・・・儂に宛てたものも持っておるとは、まったく」

 同じく、果心も懐に手を回せば同様の書状が1通。なんでも泣丸曰く、「天海僧正からお預かりした書状です」とのこと。何でも、各々に関する事由について記されているらしい。

 無論、こんな鉄火場で急に渡されても即読める訳も無く、今は大事に懐に抱え込むお荷物に過ぎなかった。

「読みたければ生き残れ、という事か。まったく」

「じゃろうな。儂が言うのもなんじゃが、まったく小憎たらしいことよ。・・・それより四郎丸、お主・・・本当に良いのかの?」

 策の為に、袈裟の内側にあつらえた小袋より木札を取り出しつつ確認する。

「ああ。俺には他の良策など思いつかん。なら、良いも悪いも無いだろう?」

「まったく、よくもまあこの短時間で、この梟雄松永久秀を信頼出来たものじゃの」

 言葉は呆れの要素が強いものの、その声色は曇りなく優しいもの。そして、

「まったくだ」

 呵々と笑う四郎丸の声音もまた、同じように。


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