011 コリンとカイリ

 傭兵ギルドとのやり取りを終えて、アルクトスのコロニーへと航路を進む母艦ピーターワン


 ブリッジでは年の頃は13歳ぐらいの髪型はサイドテールで、地味な色をしたワンピースを着ている双子と思われる少女が不安そうにしていた。


「あんた達なかなかいい腕してるらしいわね!どう?ムジナ一家なんて辞めてウチ虹の剣で操舵手と砲手をやらない?」


 捨てられた子猫の様に身を寄せ、震えながら抱き合う双子に向けて勧誘を始めるテレイアである。


「お、お姉ちゃん……僕達どうするの?」


「大丈夫、私が喋るわ……」


 双子のお姉ちゃんと呼ばれた方が、深い深呼吸をするとテレイアに答える。


「私の名前は"コリン"こっちが妹の"カイリ"よ」


「よろしくね、私はこの傭兵団虹の剣団長テレイアよ」


「こっちはG・S乗りのアイリス、あっちに座ってるのがケレス、今はここに居ないけど格納庫に居るのがベスタよ」


「あの人が凄い動きしてたG・S乗りの人……」


『お二人もいい腕してましたよ』


「私と妹はずっとムジナ一家に休み無くデブリ回収艦で働かされていたから、その辺の半端な船乗りよりは上手よ、特に妹の射撃は天才なの!」


 終始おどおどしていた姉のコリンだが妹のカイリを褒める時だけは語尾を荒げる。


 それだけ妹が好きなんだろうと俺は思った。


「え~と、テレイアさん……私達の腕を買って貰えるのはありがたいのですが……ここで働くことはできません!」


「あら、どうしてかしら?待遇はムジナ一家よりも遥かに良くするのに」


「それは……」


「…………」


 テレイアの問いに深刻な顔になる双子の姉妹


「私達は元々"戦争孤児"で……」


「お姉ちゃん!ダメッ!!」


 妹のカイリが声を荒げたが、姉のコリンが笑顔で答える。


「この人達は大丈夫よカイリ……お姉ちゃんは人を見る目あるから!」


 妹を落ち着かせたコリンは話を続ける。


「戦争孤児になった私達は孤児院に預けられたのだけども……その孤児院の院長が亡くなってしまって、院長の息子が孤児院を継いだんだけど…」


「そいつがろくでもない奴で!孤児院に居た子供達を全員ムジナ一家に売り飛ばしたの!」


「親が守った者を……ろくでもない奴ね!」


「ムジナ一家に引き渡された私達は奴隷の様に働かされたわ……主に他国領域に侵入してのデブリ窃盗や、危険なハーツガスの無許可摂取、でも……私達は逃げられないの」


「どうして?」


「"1人でも逃げたら"残された孤児院の仲間に酷いことをするって言われたの!」


「……ムジナ一家、想像以上にゲスな連中なのね」


 テレイアは怒りを隠しきれない様子でコリンの話を聞いている。


「ですので、そちらの申し入れはありがたいのですが……」


「事情は分かったわ!残念だけど、仕方ないわね……アルクトスのコロニーに帰ったらある程度のお金を渡して解放するわ!」


「ありがとうございます!」


 コリンは安心した表情になってテレイアに礼を言った。


 だが彼女達の解放の意味はムジナ一家に戻るということ――


 再び危険な仕事をさせられる現実が待ってるのか……。


 ん?待てよ……もしとしても危険なのは変わりないか!


 俺は結局こっち側傭兵団も"堅気"とは呼べないじゃないか、などと思っているとコリンとカイリが話はじめる。


「ほら、見たでしょカイリ!お姉ちゃんの言った通りいい人じゃない!」


 ゆるんだ表情になったコリンとは対照的に青ざめた顔で何やら落ち着きのない動きを始めるカイリ、震えた声で何かを呟く


「ご、ごめんなさい……お姉ちゃん、どうしよう……どうしよう」


「ど、どうしたの?カイリ!?」


あの人達ムジナ一家に黙ってたら怖い事されると思って……ごめんなさい」


 カイリは手に持ったスマホの様な媒体をコリンに見せて泣き出した。


「まさか…カイリ、ここの"位置座標"をムジナ一家に!?」


「うっ……う、うっ」


「テレイアさん!」


「えぇ聞いたわコリン……ケレス何か異常は?」


「お嬢様、こちらに接近するG・Sの機影を確認、今の所は数1です」


「把握したわ、ケレスはベスタに連絡してG・Sの出撃準備を、アイリスは出来次第発進して!」


『了解しました、テレイア艦長』


 俺は急いで格納庫へと向かおうとするがカイリが持っていた端末を見ながらコリンが声を荒げる。


「危険だわ!こっちに向かって来ているのはムジナ一家の"G・S乗り用心棒"通称"五袋ゴブクロ"の1人よ!」


五袋ゴブクロ?強いので?』


「えぇ……テレラ惑星同盟軍やレベリオ帝国軍に所属していた凄腕G・S乗りで、ムジナ一家が惑星同盟や帝国と揉め事になった時も五袋ゴブクロが出ていって1個中隊を潰したって聞いたことがあるわ!」


 なるほど、この世界での猛者か……戦うことでこの世界のG・S乗りがどれぐらいの強さなのかという良い"指標"になりそうだな


『教えてくれてありがとうコリン、では行って来ます』


「ちょ……ちょっと!聞いてたの!?投降した方がいいわよ!」


 コリンの言葉を無視して、俺は小走りで格納庫へと向かう。


 そんな中、後ろでテレイアの声が小さく俺の耳に入った。


「大丈夫よコリン、彼女アイリスは最強の戦闘AI"黒兎"なんだから!」


『…………』


 強く期待されるってのは鼓舞とプレッシャーの表裏一体な感情を与えてくれるな――っと思いながら俺は戦いへと向かうのであった。




◆◇◆ 機体紹介のコーナー ◇◆◇


 テレラ惑星同盟軍 旧世代量産型機【ラスター・2】


 全長 10m

 重量 20t

 推力 3000kg

 装甲材質 オリハルコン・一部合成金属

 主動力  ハーツドライブ

  

 テレラ惑星同盟軍で10年前までは主力量産機であった。


惑星同盟軍からの払下げ品として一般でも流通されてしまってる。


 スピードは無いが装甲の厚さと重さとパワーがあり、重機として使われることもある。


 主な武装 オリハルコン弾ピストル(実弾)

        オリハルコン電震ナイフ

        ビームライフル

        ビームガン

        ビックオリハルコンシールド

 

◇◆◇           ◆◇◆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る