010 宇宙のお掃除
傭兵団としての初仕事から数日が経った――
あれから幾つか仕事をこなしたが、"荷物運び"や"輸送車警備"など、戦闘も無く地味な業務ばかりだった。
今日はアルクトス領内にある小惑星付近の
俺は
【テレイア】「はぁ~……最初以外は地味な仕事が多いわねぇ」
【ベスタ】「"虹の剣"はGランクの弱小傭兵団じゃからのぅ」
【テレイア】「実力はあるのに……やっぱある程度の人員も増やさないとダメね!」
【ベスタ】「わしは大丈夫じゃが、ケレスはやる事多くて大変じゃろうて」
【テレイア】「そうね!早く楽させてあげないとね」
そんな会話を聞きながら俺は黙々と金属の瓦礫をかき集めていたが、
《アイリス、レーダーに機影と小型の艦影を確認》
【ケレス】「艦長、こちらに近づく機影と艦影と思われるものを確認、G・S3、Dサイズ艦1、小型艦3」
【テレイア】「何かしら?他の作業船は来ないはずだけど……アイリス、念のため戦闘態勢を!」
『了解、テレイア艦長』
俺は
ここはコロニー外なのでどんな武装でも自由だ。
黒兎、セーフティ解除は?
《既に済んでおります、アイリス》
母艦を守る以外、特に
【ケレス】「不明艦から音声通信が届いてます、繋げますか?」
【テレイア】「頼むわ」
………………
【ゲストA】「おい!てめぇら誰の許可得て俺ら"ムジナファミリー"の島荒らしてんだコラァ!ブチ殺すぞ!!!!」
【テレイア】「どうやら新手の
【ケレス】「デブリが増えるのでお勧めできません艦長……」
【ゲストA】「なんだぁ!?女ぁ!てめぇ死にたいらしいな!おいテメェら、あいつらをスクラップに変えて売り払っちまえ!!!!」
レーダーの機影達がこちらへ向けて急接近を始める。
母艦から背後で援護されると逆に戦況が読み難くなる……やる気満々のテレイアには申し訳無いが、こちらで先行して単騎で制圧させてもらう。
俺は敵機が放つ弾幕を難なく躱すと、敵の背後に回り込み、敵機肩部や足に付いているバーニアに向けてビームガンを撃った。
ドン!ドン!と
《敵G・S3、行動不能》
残りは敵母艦と思われる1隻とG・Sよりも小さな小型艦3隻か、艦砲射撃の準備も遅いな、このまま接敵してやるか。
【ゲストA】「なんだ!何が起きた!?G・S班何やってんだ、接敵してくるぞ!……え?機体が動かない?スラスターがやられただとォォォ!?クソッ!全砲門開け、絶対近づけるな!!!!」
もう遅い、ってか音声垂れ流しで動きバレバレだよ。
俺は敵母艦の背後を取ると銃口を向けて音声通信で警告する。
『貴艦の真後ろを取りました、1分以内に砲門を全て閉じてメイン出力を完全に停止してください、でないとブリッジに撃ち込むことになります』
【ゲストA】「クッ……!」
その時だった。
敵の小型艦の一隻が、唯一付けている小さな砲塔から俺に向けて白い
なんじゃあれは?
《どうやらデブリ回収用の粘着ワイヤー弾、通称
《デブリに向かってアレを撃って吸着成があるワイヤーでそのまま引っ張って回収することが出来るんです》
《あの小型艦はデブリ回収作業艦の様ですね》
なるほどね、当たったらネバネバ糸で動きを止められてしまうかもな、一応避けとこう。
俺はヒョロヒョロと飛んでくるトリモチ弾を軽く回避して小型艦のスラスターを破壊しようと思った時――
あぶね!
回避した先に2発目のトリモチ弾が着弾しそうになり、素早くスラストレバーを操作してなんとか躱すことが出来た。
あの小型艦、ノーロックで"偏差撃ち"してきたぞ!
《あのデブリ回収艦にはロックオンシステムがありません》
あの艦にはロックオンシステムが無いのか、まぁだからこそ経験による反射神経と当て勘で動けるんだろうな
しかし、こんな実力があるのに何故"デブリ回収艦"に回されてるんだ?と考えていると……
【ゲストA】「おいやめろ!デブリ回収の
クソガキ?あの小型艦を操作してるのは子供なのか……?
まぁとりあえず降参するらしいから、これで制圧完了だな
………………
…………
……
以前の時の様にテレイアが傭兵ギルドに連絡すると、ギルドの艦隊がやって来た。
傭兵ギルドは1国の軍隊並の規模なのか?
俺は
手錠をされ捕えられたムジナファミリーが護送艦に乗せられる様子が映し出されている。
柄の悪い中年や老年の男達が護送される中で場にそぐわない様な"2人の少女"が目についた。
『あの子達か、デブリ回収の小型艦を操舵してたのは……』
「あの子達がどうかしたの?アイリス」
俺の呟きにテレイアが食いつく
『いえ、中々の"腕"をしていたので』
「へぇ……黒兎のアイリスが褒める実力があるのね!」
テレイアは一瞬の迷いも無くギルドの担当者に音声通信を繋げるとこう言った。
「こちらテレイア、護送中被疑者の中に2人の女の子が居るでしょ?彼女達はこちらで用意した"内通者"よ!護送しないで返してちょうだい!」
【ギルド担当員】「え!?その様な話は聞いておりませんが……」
「当たり前でしょ?うちの団が
【ギルド担当員】「確かにリストには入ってませんが……」
「じゃあ決まりね、2人をこちらの艦に
テレイアの勢いにギルドの職員はこれ以上何も言い返せずに、2人をこちらの艦に運ぶ動きを始めるしか無かった。
俺はテレイアの行動力と決断の早さに感心するだけであった。
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