009 カポーーーン

 テレイア、ケレス、ベスタがトラックから降りるとテレイアが俺に命令する。


「正面の機体のは生きてるんじゃない?アイリス、コクピットをこじ開けて頂戴!」


 しかし、既に"セーフティ"を復旧させてしまっていたので、俺は黒兎にその仕事を任せることにした。


 俺の機体は仰向けに倒れている敵機の胸部装甲を引っぺがす。


 すると中のコクピット内部で潰れたカエルの様な姿勢をした柄の悪そうな中年の男が気絶していた。


「ケレス、こいつの手と足に手錠を!ベスタはホワイト・ポーンの点検チェック、私はギルドに連絡して任務報告とこいつを回収する人員をよこさすわ!」


 3人は各々の仕事に取り掛かる。


 特にやる事が無くなった俺はトラックの荷台にG・Sホワイト・ポーンを乗せ、機体から降りるとベスタの近くで点検の様子を眺めていた。


「黒兎のシステムがこんなに強いとはのぅ、たまげたわい!」


 ベスタがG・Sホワイト・ポーンに繋げた端末のモニタを見ながら話す。


『ありがとうございます、ベスタ』


「しかし操縦が"AI"っぽくないのぅ……この右腕うわんを見てみぃ」


『あっ!』


 ナイフを遠投したG・Sホワイト・ポーンの右腕関節部から油圧オイルが、少量ではあるが漏れていた。


お主アイリスの戦い方はまるで"1戦に全てをす"様な戦いじゃ……マニュアル通りに制御した戦い方をするAIとは思えぬ」


 そうだ、これはゲームじゃ無いんだ。


 バトルが終わって次のマッチングしたら機体が全回復なんてしない、無茶な動きを何度もしたらマシンにガタが来てしまうこともあるだろうさ。


『申し訳ございません、今後は気を付けます……』


「いやいや!別に責めている分けでは無いぞい!」


 そう言ってベスタは小さな体で俺を抱きしめた。


「お主は凄く頑張っておる……恐らくわしらを守ることを考えずに戦っていたら辛い役回りをせずに敵を制圧出来たんじゃろうに……」


『…………』


「お主は大切な"仲間"じゃ……自身を守る為にも何も気にせずに全力で戦ってくれ!わしも全力でメンテしたるからのう!」


 背中に感じる小さな温もりと"仲間"という言葉――


 孤独にゲームばかりやっていた俺の、機械アンドロイドの身体の奥底であるはずの無いの回路を暖かく照らした気がしたのであった。


 ベスタを心配させないように、今後はなるべく人を殺さずに制圧するか。


………………


…………


……


 30分後、ギルドから派遣された職員がぞろぞろとやって来る。


 職員達はケレスが手錠をかけたマフィアの男を護送車に収容したり、俺が破壊した敵機のチェックをしたり、テレイアから事情を聴いているようだった。


「捕えた男は確かに"ムジナファミリー"の構成員ですね、懸賞金も掛かっています、まぁあの男以外は"ミンチ"になってるので不明ですが」


 そうテレイアと話している職員の男が答える。


「じゃあ懸賞金は貰えるのね?」


「はい、データが確認出来次第、登録口座に振り込まれます」


「捕えた男の懸賞額は"50万senセン"、積荷運搬金"10万senセン"それと希望でしたらそちらが倒したG・Sをサイクル屋に売買することをしますが?勿論回収費やギルドの取分を幾らか頂いた金額をお渡しします」


「そうね!お願いするわ」


「ではこちらにサインを、引き続き運搬任務をお願いします」


 テレイアは書類にサインすると事後処理はギルドの職員に任せ、再びトラックで運搬任務を継続するのであった。


………………


…………


……


 その後、何事も無く運搬任務を終えてコロニーの繁華街へと戻って来た傭兵団"虹の剣"の一行。


「お嬢様、ギルドから"120万senセン"の入金が確認できました」


 手に持った薄型タブレットを見ながらケレスがテレイアに報告する。


「よし、これでしばらくは生きられるわ!みんな初仕事ご苦労様!」


「ふい~、一時はどうなるかと思ったがなんとか傭兵団としてやってのけたのぅ」


「そうねベスタ、どんどん仕事を受けて大きな団にしましょう!」


 ご機嫌に肩を切って歩くテレイアの後をついて行くと、繁華街のとある施設で足を止めた。


「皆、疲れたでしょ?お風呂でも入ってさっぱりして行きましょう!」


『え!?』


 どうやらテレイアが足を止めた施設は所謂いわゆる"銭湯"であった。


「もちろんアイリスもね!」


 えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!


 4は銭湯に入ると、受付で支払いを済ませ更衣室へ……俺以外の3人はお構いなしに服を脱ぎ始めるが、俺は頭の中が真っ白になった気分で目の前のロッカーを眺めるだけでだ。


「アイリスもさっさと脱いで行きましょう!大丈夫よあなたの身体はちゃんと仕様なんだから!」


 テレイアは俺に近づくと服を脱がせようとし始めた!


『わ、分かりましたテレイア、自分で脱げるので先に行っててください』


「ふふふ、照れなくていいじゃないなんだから!」


 そう言うってテレイアは大きな浴槽がある部屋へと向かっていくが、その時、俺は彼女の大きくはないがツンとした美乳と引き締まったお尻を見てしまう。


 身体の肉付けの時に付けたがしっかりと反応してしまった……なんでちゃんとこんな"機能"を付けているんだ!


 しかも情けないことに、に付いたおわん型の美乳にも反応してしまってる!


 まずい……とりあえずタオルで隠しさっさと風呂に入ってしまおう。


 カポ――――ン風呂シーン特有の音


 俺はタオルで身体を隠して前かがみになりながら、湯船で入浴している3人を見ない様に洗い場にそそくさと行く


 身体を洗って落ち着け!頭の中で"青色を想像"して落ち着くんだ……


「今日はアイリスが頑張ってたから背中でも洗ってあげようかしら?」


『え!?』


 テレイアがとんでもないことを呟く


「お嬢様、では私が行きましょう」


「いいの?ケレス、じゃあ洗ってあげなさい!」


 えぇぇぇぇ!?


 立ち上がって湯船から出てこちらにやって来たケレス、鏡越しにチラリと豊満な胸と大人びた身体が見えてしまった。


 と、とりあえずあのだけは隠さないと!


 両手を前に抑えうつむきで座る俺の後ろにケレスは座り、両手に石鹸の泡を作ると素手で俺の身体を洗い始めた。


 あまりの刺激的な経験過ぎて、俺はただ固まってることしか出来ない……暫く背中を洗っていたケレスだったが、手を前方に回して来てを洗いはじめた!


『あっ!……ケレス、ま、前は大丈夫です!』


「…………」


 ケレスは何も言葉を返さずに洗い続ける。


 そしていつの間にか俺に後ろから抱き着く様に胸を背中に押し付けながら…なぜか俺の胸を重点的に揉みしだく様に洗い始めた!?


『あっ、……んっ、ケレス!ちょ……ダメです!!』


 思わず変な声を出してしまったが、どうやら浴槽で喋っているテレイアとベスタには聞こえないらしいのと、濃い湯気で浴槽側で何をされているかもよく見えないっぽかった。


 そして俺は鏡越しにケレスの表情を見てしまった――


 いつものクールで頭の良さそうな無表情では無く……目を血走らせ、鼻息荒く、涎を垂らした姿であった。


「ハァ……ハァ……かわいい……かわいいわ……ハァハァ」


 俺の耳の裏をベロベロ舐めながら呟くケレス


 俺はボーとする頭で思い出していた、俺の元々のアンドロイド身体ボディとしての、そして元々ケレスが買った物だと言うこと……。


 ケレスはアンドロイドの女の子がへきなのだ。


 あまりの予測不能な事態に俺は何も出来ず、ケレスにやりたい放題されていた。


 そして、興奮した彼女の手が俺のにまで手が伸びる。


「ん?これは……」


 あっ……完全に


 その時――


「あ~もうお湯が熱すぎてのぼせてきちゃったわ!私は出るわよ!」


「わしも出るのじゃ!」


 テレイアとベスタが湯船から出てこちらに近づいて来ると、ケレスはいつもの表情に戻って俺から離れた。


「どう?アイリス、ちゃんと洗って貰えた?ケレスもご苦労様」


「はいお嬢様、洗って差し上げました」


 はっ!と俺は冷静さを取り戻すと素早くシャワーで身体の泡を落とし


『わわわわ、私ももう出ます』


「あら、もういいの?アイリスはせっかちね!」


 などと言うテレイアを前をそそくさと通り、浴槽を後にした。


 更衣室で素早く着替えて1人で銭湯の前で待つ、どうやらケレスは俺の身体の"あの事"を他の2人にバラすことはない様だ。


 暫く待っていると3人が出てくる。


 ワイワイと話ながら向かってくるテレイアとベスタ……そしてその後ろのケレスの表情をチラリと見た。


「ジュルリ……」


 ひぇ!


 こちらを見ながら表情を変えずに舌なめずりをした顔をハッキリと見えてしまった。


 今後はなるべくケレスと2人きりにならないようにしよう……


 でないと俺は"大切な何か"を彼女にしまうだろうから―――

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