第4話 宣戦布告
「うん、よろしくね。えっと、一つ聞いてもいいかな?」
「何?望音に答えられる事なら何でも聞いて!」
「さっき、私の事を
「もしかして、気に入らなかったかな?望音って、勝手に人にあだ名をつける癖があるから、嫌だったら言ってね♪」
「嫌ではないから、大丈夫だけどーー」
(初めて話した印象で言うと、望音って結構、個性的な子かも。
確か、授業中もイヤフォンを付けっぱなしで注意されてたけど、無視して音楽を聴き続けていた様な気がするの。
つまり、かなりの問題児って事になるよね...
でも、授業中でも聴きたい位、音楽が好きって事だから、Mion《みおん》の話をしたら、盛り上がるかな?)
「話を戻すと、望音もMionのファンなの?」
「うんっ!もちろん、Mionの他にも好きなアーティストは居るけど、一番はやっぱりMionかなぁ〜。
小さい頃は、彼女に憧れて歌手になりたいと思った事もあった程に、大好きなの!」
「えっと、あったって事は、今は違うの?」
「それは...今はまだ話したく無いかも。」
(流石に今知り合ったばかりの子に、自分の一番気にしている事は言えないよね。とりあえず、話題を変えよっと。)
「歌純っちこそ、何か悩み事があったんだよね?ほらっ、さっき独り言でボヤいていたのとか!」
「うん、実は...」
◇◆◇◆◇◆◇
「なる程?要するに、入院している祖母が元気になる様に歌を届けたいけど、自分の歌に自信が無いって事かぁ〜。
その気持ち、少し分かるよ。例え、自分は良い感じで歌えているって思っていても、他の人がどう思っているかなんて、分からないからね〜♪」
(つまり、今の歌純っちは、自分の歌に自信が無い状態だから、それを改善するために効果的な方法は...)
「あのさっ、突然だけど、歌純っち!カラオケ大会に出てみない?ほら、TVでも放送されているやつ!」
「えっ、私が、あの大会に?」
(あれって、TVで放送される位だから、大規模な大会だよね?各地から歌が上手い学生が集まって競い合う大会に、私が?)
「無理だよ!私、大会に出れる程、歌が上手くないもん。」
(同じ中学の子達にさえ
「だからこそだよっ♪そもそもこの大会に出るには審査があって、通過しないと出れないの。
もし歌純っちが審査を通過して大会に出られたら、大きな自信に繋がると思わない?」
(って、この言葉は、過去の望音自身にも刺さるね〜。まぁ、望音はもう挫折したから、関係無いのだけど...)
「う〜ん...」
(確かに、審査で落とされたら諦めはつくし、逆に通ったら自信に繋がるよね。
とりあえず、審査だけでも申し込んでみようかな?)
「分かった。私、挑戦してみるね!」
「ぷっ、ははははっ」
その時、廊下である生徒の笑い声が響いた。声の主は、歌純もよく知っているあの人物ーーー
「いや〜、おかしくって、思わず笑ってしまった。気を悪くしたのなら謝るよ。」
「
(何で、弦司君がこの学校に?きっと、音楽関係の名門校に進学したと思っていたのに。)
「歌純っちの知り合いかなっ?
制服から推測するに、音楽科の生徒みたいだけれど、何で普通科の教室に訪れたの?」
「たまたま、次の授業の為に移動している途中に、通りかかったんだ。
そしたら、歌純さんがカラオケ大会に出るという面白い話が聞こえたから、立ち寄っただけだよ。」
「一体、何が面白いの?歌純っちは真剣なのに!」
「だからだよ。中学時代、僕が忠告してあげた事も忘れて、また歌を披露しようとしているから...」
(それに、もしカラオケ大会で好成績を残したら、歌純がこの学校の看板として、取り上げられるかも知れない。
その場合、同じ学校に在籍している僕へのメディアの関心が薄まってしまう可能性もあるから、今の内に阻止しないと。)
「そうだ、もし歌純さんが大会に出るというのなら、僕も出ようかな?これでも、幼少期から声楽を習っていたから、君よりは歌えると思うよ。」
「えっ...」
(中学時代、私の歌を否定した弦司君の前で、歌う事が出来るの?私、やっぱり無理なのかなーーー
いや、違うよね。私は、おばあちゃんの為に、この大会に出るんだから、彼は関係無いはず!だから、私は...)
「へぇ、弦司君も出るんだね。それなら、大会で対決する機会もあるのかな?」
「なっ、まだ大会で歌う気でいるのか?それなら、大会で打ち負かしてやるからな!
」
"タタタッ"
「あの男子、逃げていったね。
望音は途中から置いてけぼりだったけど、歌純っち、頑張ったね!男子相手に啖呵を切るなんて、すごいよ♪」
「ふあぁぁぁ、どうしよ〜。弦司君相手に、あんな事言っちゃったよ!私、彼に勝てるのかな?」
「それはまだ分からないけど、とりあえず、カラオケに行って、練習しよっか♪付き合ってあげるよ!」
「うん、ありがとう。」
(よし、望音も協力してくれるみたいだし、大会に向けて、頑張るよ!)
続く
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