第1019話 コボルトの長、イサマ

「よく、きたな。ニンゲンの強き者よ」

「あ、どうも。人間の田島です」

「……その自己紹介は人間らしくないぞ」

「田島殿は人間を辞めとるからのう……」

「そこ、つっこまない。あと俺は人間!人間だからね?……ってあれ?共通言語魔法かけてないのに言葉がわかる?」


さっきのチワワと柴犬は共通言語魔法をかけないと意思疎通出来ない感じだったけどボルゾイは言葉が分かる!

驚いているとボルゾイが口を開ける。


「我はイサマ。アヌビス様の眷属にして、ムーランドコボルトなり。我この者達の長。ニンゲンからは、アジンとも呼ばれる」

「あ、亜人でしたか。なるほど納得」

「理解が、早くて助かる」

「……本当にわかっておるか?」

「……アヌビスがなにか答えてみろ」

「えっとー……10コンボ以上でダメージ8割カット?」


あ、エクスが頭を抑えた。

いや、おれもパズダンやってる訳じゃないけど会社の後輩から説明されたから知っていたわけで……

……まぁ、なんの神様かは知らんよ、うん。


「……はぁ、これだから。アヌビスはエジプト神話の神で冥府を司るものだ。日本で言うところの閻魔大王にあたる。ミイラ作りの達人でもあるな」

「ほー」

「へー」

「……なんで葛葉殿もその感想になるんだ。知っていただろう?」

「いや、神が降臨するとかそうそうないからのう。てか有り得んじゃろ普通(……これ!機械神!配信中じゃぞ!?)」

「(……む、そうだった。すまん)」


:神キター!〈10000円〉

:神様?!

:アヌビス!!!エジプト神話か!〈5000円〉

:これは世界的大発見では?!

:海外掲示板が盛り上がってきた!〈500円〉

:これは伝説になりそう

:神降臨〈50000円〉

:←いや、眷属なだけあって神ではないだろ

:おっさんが神(定期)〈50000円〉


変な定型文作るな!

……そういえば神について言及って配信でしたこと無かったっけ?

神っぽい人たち、基本俺の知り合いってことで誤魔化してきたもんね。

けど、アヌビス神の眷属なら相当強くない?

しかも亜人でしょ?

なんで地上に?


「えーっと、イサマさん?なんで地上に出てきたんです?」

「我ら、逃げてきた。アヌビス様がより任された地、襲われた。助け求めて、ここにきた」

「お、おう?」

「……詳しく聞かせてもらおう」

「我ら、『ミワカガ』に住みしコボルト。ある日強きオーガ来る。最初は歓迎した。だが、暴れ始めた。我らかなわず、逃げ出す」


……ふむ?

つまり深淵のどこか『ミワカガ』と呼ばれる世界でイサマさんたちは暮らしていた。

そこにオーガがやってきて暴れ始めて逃げてきた、と。

避難民ってやつですか……


「オーガ、暴れたキッカケ、酒に酔った馬鹿な若造、喧嘩を売る。歯が立たなくて、先に逃げ出す」

「はぁ?!」

「うっそじゃろそれ……呆れた理由じゃ……」

「……馬鹿だろ、それ。身から出た錆だ」

「否定、出来ない。若造ども、殴られてすぐに逃げ出した。我が半殺しにしてオーガの元に連れていったが怒りおさらまず、町壊れた。民を連れてここまで来た。逃げる時、若造達、先に逃げ出す。地上目指した」


あー、最初地上に出てきたヤツらか。

アイツらのせいでイサマさん達が逃げ出してきたと。

ほぼ全員バクハ嬢の爆裂魔法に巫女様の大斧で処されたけどね。


「……地上に出てきたヤツらが主犯だったのか。ほとんど死んだらしいぞ」

「バクハ嬢に爆殺されたのが1匹、巫女様に屠られたのが3匹、その他一般探索者やギルド職員に倒されたのが約12匹じゃな」

「うむ、そのくらい。数があれば、オーガについて勝てると、思っていた。馬鹿な奴らだ」


……数の暴力でもどーにもならない差ってあるよねー。

南無南無。

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