第1018話 コボルトの群れの中へ

「……わぁ、犬すご」


俺は目の前の光景に圧倒されて呟く。

『迷宮掌握』でコボルト達が群れている場所まで移動してきたけど、まぁ凄い。

至る所に犬犬犬犬……

コボルトらしいハイエナ顔のやつがほとんどだけど中にはドーベルマンやシベリアンハスキーみたいなやつもいる。

……犬種が違うせいかやけに目立つな。


:犬好きにはたまらない光景

:尊死〈50000円〉

:探索者にとっては恐怖でしかない……

:俺、ここに突っ込めって言われたら逃げるぞ〈500円〉

:Aランク帯でもコボルトの群れにソロで挑むのは止められるのに……

:おっさん!いきて!

:ハスキーhshs〈50000円〉


「……犬好きの人が赤スパ投げてる。怖ァ……」

「……そりゃ犬好きなら楽園だろうて。さて、さっさと済ませるぞ。おい、お前達の長の所に連れて行け」

「……クゥ、わかった」

「キャウ。みんな、つよいひとつれてきた!おさはどこ?」


チワワと柴犬がコボルト達に話しかけに行く。

後ろ姿は子どもだよなーあれ。

トコトコ走っていく姿は可愛いものです。

いやー、犬好きはもちろん子ども好きにもおすすめ出来るんじゃない?

知らんけど。

目線で追ってみると、チワワと柴犬がドーベルマンのコボルトのところまで行って何か話している。

俺たちの方を指さして説明しているみたいだ。


「エクス、あの話の内容とか聞ける?」

「……お前、俺をなんだと思っている?」

「未来のネコ型ロボット」

「……コロス」

「これ、そう易々と大砲を出すでない。田島殿なら傷ひとつつかんじゃろうが配信的にスプラッタは極力NGじゃ」

「…それはそれで酷くないです?確かに砲弾ぐらいなら飲み込」

「「「「「ワォーーーーーン」」」」」


俺がボヤいていると突然コボルト達が咆哮を上げた。

くっ、音すっご……!

空気が震えてるんやけど!

てか耳塞ぐの間に合ってないから超痛い!


「……いてて、突然の咆哮は、やめて欲しいな!……何事よ……リスナー大丈夫かー?」

「……ふむ、スピーカーオフにしてて助かった。あれはコボルト達の歓喜の声だな。興奮して発する雄叫びだ」

「うごごご……頭が割れるかと思ったわい。おや?奥から何やら出てくるぞい」


葛葉さんが指を指す。

よく見ると巨大な影がこちらに向かってくる……

包帯のような布で身体をぐるぐる巻きにされ、杖をついて歩く影……

よく見える位置まで来るとその正体がわかった。


「……いや、分からないな。何だっけあの犬種……」

「いや分からんのかい!確かにワシも犬種には詳しくないから人のこと言えんのじゃが……日本原種では無いのう……うーむ、最近物忘れが酷くてのう……」

「……お前ら、緊張感をもて。あれはボルゾイだ」

「「それだ!!」」


:狐っ娘とおっさん、仲良いな

:年齢近いんじゃない?

:ボルゾイだ!!!可愛い!!!〈50000円〉

:なんで包帯?

:(´っヮс)ウオオオオオオwwww

:これは世紀の発見期待〈2500円〉

:おっさん最強!おっさん最強!〈50000円〉

:ツッコミ役が冴えわたる配信ですね


……いや、葛葉さんの方が1000歳ほどう、イデデデデデ!!!!頭!頭焼かないで!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る