第1016話 さらに奥へ

「……とりあえず大丈夫そうだ。先に進もう」

「そ、そうか?ならいいけど……ほんまに?」

「ま、まぁエクス殿が言うなら大丈夫かのう?万が一イレギュラーモンスターが出たとしても芍薬殿やギルド職員がおる。ここまで魔力が響いてこないなら、どーにかなるじゃろ」


それもそうか。

なら俺たちは配信を続けましょう。

今いる中層は壁に囲まれた迷路のような作りです。

しかも隠し部屋が至る所に存在しているめんどくさい奴。

角待ちや裏取りしようとしているモンスターが沢山……

あれ?


「あれ?なんかモンスターの群れ?がぶつかってる?さっきまでセーフゾーンに固まってたのに」

「ほう?なんじゃ?共食いでも始めたか?」

「……コボルトは共食いしない。アイツらは頭がいいからな。となると……やはりか」

「やはり?……あ」


エクスが見ている方向を向くと緑色の巨体が群れで走ってきた。


「ブモォォォォ!!!」

「「お、オークだ!!」」


オークもいたのか!

しかもデカい!

普通のオークよりふたまわりほどデカイ!


「……ジャイアントオークか。巨体の割には素早く動くためオークの中では脂身が少ない奴だな。乾燥肉にして食べることが多いぞ」

「リスナーへの解説ありがとうございます……じゃなくて!オークもいるのか?!」

「……そりゃいるだろ。ここはダンジョン、オークとゴブリンはどこにでも湧くぞ。まぁ、ジャイアントオークは下層から深層での目撃情報が多いが」

「ならイレギュラーじゃねえか!」


サラッとイレギュラーが起きるんじゃない!

あ、新ダンジョンだから仕方ない?なるしょうがないね!

とりあえず向かってくるオークに向けて『ストーンランス』をぶつける。

ドスドスと音を立てて石のやりがオークの身体を貫く。

流石に血抜きとか言ってられない量なので一気に殲滅します。

おりゃりゃりゃりゃりゃ……




「……なんじゃろう?このメンバーなら未探索ダンジョンは全て踏破できそうじゃのう」

「……そりゃそうだ。あーさんは規格外」

「飽きれるのは後で!まだ来ますよ!」


:おっさんがんばえー〈500円〉

:ジャイアントオークってレアモンスター?

:でっかいオークだなー

:食べ応えありそう。水っぽいかな?

:リスナーも食に目覚めてる?!

:葛葉さんも頑張れー〈1000円〉

:インドの人も凸れ!〈5000円〉


……コメント欄に反応する暇がねぇ。

気づいたらジャイアントオークの死体が山のように積まれてました。

合わせて30匹ぐらい?

もう奥から来ないみたいだし一旦休憩。


「こいつは傷少なめだから食べれそうだなー。血抜き血抜きー」

「……なんか、呆れを通り越して感動するぞい」

「……あーさんだからな。さて、魔力的にも後は奥のコボルトと戦闘している奴らだけだな。そろそろ決着がつきそうだ」

「あ、そういえばコボルトと戦闘してるんだっけ?ジャイアントオークってそんな好戦的なん?」

「……ジャイアントオークは基本最低限の狩り以外は戦闘しない種族だ」


エクス曰く、ジャイアントオークは雑食だけど基本は果物や根菜類を食べて生活するオークだそう。

自分たちの住む場所に敵が入らない限り戦闘はしないってさ。

恐らくコボルト達が下から上がってきたから戦闘になったのでは?との事。

……いや、中層に下層のオークが住み着いてたのはダメだけどさ。

……コボルトってやっぱり強いんだなー。

そんなことを考えながら『迷宮掌握』を発動。

周りの状況を確認しようかね……あ!まずい!


「エクス!なにか来るぞ!そこの角だ!」

「……もう感知している。お前、魔力感知がないのはそろそろ鍛えろ」

「そうじゃぞ……コボルトのおでましじゃ」


……くっ、2人は気づいてたんかい。

目の前の角からコボルトが2匹飛び出してきた!

手には武器を……ってあれ?




白旗?

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