第930話 隠し玉には隠し球

『洪水と死を司る古代巨人……神の加護を持つ人間……そして妖精の俺の魔力、これが合わさることにより最強となる……!』


オーコが高笑をしながら地面に降り立つ。

足元からゾンビがにょきにょきと生えてくる。

……わぁ、きもー。


「全く!結界張り終わったと思ったらあの根暗機械オタクのゴーレム飛んでくるし!何か敵がキメラになってるし!……テスラ、トロとチャーリーはもう少ししたら着くわ」

「オッケー、了解。あーさん、魔力感知が弱いキミに教えるけど、今単純魔力だけならオーコの方が強いよ。あと攻撃力と体力も」

「ま、まぁ見たら分かりますね。魔力も強いんですか……わぁかったるー」

「……この場においても緊張感がないわねアンタ」


緊張感と言うよりは恐怖で麻痺っている感じ?

逃げ出せるなら逃げ出したいですねーマジで。

けどここはダンジョン、帰るためのポータルが遠い。

後コイツは地上に行けるタイプの亜人?なので今逃げたとしてもまたいつか戦うことになりそう。

てか逃げた先で大暴れして大災害起こしそうだからここで倒しておかないと不味そう!


「という訳で、めいっぱい本気出します!」

「何が『という訳で』なのか分からないけど、本気出すって、まだ本気じゃなかったのかい?」

「……あーさんの本気ってやな予感しかしないんだけど?まさかダンジョン壊す気じゃないでしょうね?」

「んーと言うよりは地元のダンジョンじゃないから加減が分からないって感じで……とりあえず戦いやすい環境にしようかな……『迷宮解放』!」


俺はスキルを使用する。

スキル『迷宮解放』

地上でもダンジョンと同じ状態に出来るスキル。

地上にモンスターが現れたりした時に利用しているスキルだけど、ダンジョン内にいたら少し効果が違う。


『……ん!?身体の魔力が……吸われていく?!テスカトリポカの力か?』

「いや、私の力では無いね……これは、あーさん。キミ一体何やったの?」

「……ちょっと集中してるから待ってねー。むむ、裏山のダンジョン、保部んとこの親族が遊んでるのか、じゃあ強制転移させちゃ危ないな……そうだ!裏ボスを呼んでみるか……よし、これだ!」

『ぐお?!』


俺が魔力を込めるとオーコの頭上から巨大な鉄の玉が落ちてくる。

オーコはそれを受け止める!

鉄の玉に触れている手がみるみる真っ赤に染っていく。


『ぐっ!これは!魔力もだが血も吸われていく?!何だこれは!』

「説明しよう!『迷宮解放』は地上だとダンジョンを作り出すスキルだがダンジョン内で使用すると俺がクリアしたダンジョンをまるまるコピーしてダンジョン内部を変更出来るのだ!それは『吸血ボール』って俺は呼んでるんだけど、触れると血と魔力をゴリゴリ吸われるぞ!……昔触ってカリッカリに痩せて地獄みたなー……もう二度と味わいたくない」

『グオオオオ!!!』


オーコの手がさらに赤くなり、鉄の玉が震え始める。

みるみるうちに真ん中に切れ目が入り、ぎょロリとした目が開いていく……

あれ、生き物だってあとから知ったんだよねー。

マージで通町筋にあるペル玉の亜種だと思って回しに行ったら死ぬかと思ったもん。


「あそうそう、手をはなそうとしても無理だよ。それ、魔力が強いやつが好きみたいで魔力が強いことがわかるとずっと追ってくるし粘着力MAXになるんだ。俺の時は知り合いがコンロの掃除用で液体すっご落チャン持ってたからそれかけてもらって何とか外せたんだよな。あ、俺は今日持ってきてないからドンマイ!」

『クソガァァァァ!』


フハハハハ、巨人の身体も相まってメタボ体型だったから良かっただろう?

隠し玉には隠し球てね!

我ながらいいこと言ったね!

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