第644話 サイン

「おやおや、もしやタジマアラタさんですか?」


シヴたちと話していると後ろから声をかけられた。


「あ、はい。田島ですけども」

「わぁ!配信見てます!この前のゾバトレル戦感動しました!」


振り向くとそこに居たのは赤毛の女性。

顔立ちは絶世の美女ってやつですね。

ヨーロッパ系のお顔で目元がパッチリしている。

留学生?観光客?もしやスパイかな?

まぁ、俺のファンだということは分かるよ。


「いやはやー、あの戦い見てた方でしたかー」

「はい!最初の一撃で頭を粉砕した時はとても驚きましたよー。あんな巨体を剣1本投げてルーンを吹き飛ばすなんて!流石SSSランクさんですね!サインお願いできます?」

「それほどでもないですよー。いいですよー」


サインを求められるなんて……

つくづく有名になったと思うよね。

高校生には肉を求められることが多くなったけど……

ラーテルのサッカー部にミノタウロス3頭分の赤身を贈呈したら喜ばれたなー。

ちゃんと広報の人が写真撮ってたけどパンフに乗ったりしないよね?


それはともかくサラサラっとサインを描きますよ。

未だに筆記体が書けなくて名前を漢字で書いてるだけだけどねー。

魔力を込めて書くとご利益があるとか何とかネットで見たからもりもりと……


「……名前書くのにそんなに魔力込めるんです?」

「ご利益があるらしいのでサインを求められた際はしっかり魔力を込めるようにしてるんですよー。力士の方の手形みたいな?」

「へ、へー……日本ってそんな文化があるんですね」


しっかり魔力を込めて一筆啓上!

うん!なかなかよく出来たんじゃない?

油性ペンとは思えない力強さだ!

……太のハネが気になるけど、まぁええか。


「はい、こんな感じでいかがでしょう?」

「わぁ!ありがとうございます!これだけの魔力……ダンジョンアイテムでも中々ないですよ?」

「へ?そうなんですか?まぁ、家内安全、商売繁盛を願ってますからねー」

「商売繁盛……それ、いいですね。とてもとても」


にっこり笑う赤毛の人。

そういえば名前聞いてなかったな。

ちゃんと名前を書いておかないとサインじゃないよねー。


「あ、お名前書くの忘れてました。お名前教えて貰えますか?」

「あ、そういえば自己紹介が……ゴホン、僕の名前はランクル、ランクル・エンバレス。しがない研究者ですよ」

「ランクルさんですね!英語の綴りが分からないからカタカナでも?」

「はい!大丈夫です」


にっこり笑うランクルさん。

いいねー、笑顔が可愛い人はモテるよねー。

サラサラっと名前を書く。


……ん?なんか首筋がチクッとした?


蚊に刺されたかな?

今11月だよ?

虫刺されの薬もってきてないんだよなー……

家に帰ったら塗り塗りしないと、最近あとが残りやすくなって歳を感じてきたんだよねー。




あれ?シヴ、エクス?

魔力出してどうしたん?!

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