第586話 魔力を込めて

ハンドルを握りながら魔力を徐々に増やしていく。

……この感じ、数年間ぐらい魔力込められてないな?

こりゃちょっと多めに魔力を込めないと動かないな?

誰も整備してないな、これ。

まぁ整備しなくても100年動く設計にしてたから大丈夫だけどね。


「うん、もうちょっと魔力増やすわ。ゆりー、もし周りに影響が出たら対応よろ。あ、そうそう。その広いところには人が入らないようにしててねー」

「おけまる。何するか何となく察した。ほら、2人も下がって下がって」

「え?え?え??」

「なんでそんなに落ち着いてるんですか?!」


まぁ、長くいるから?

その辺は気にしたら負けだよ?

俺は魔力を注ぐことに注力する。

一気に入れすぎてもダメ、ゆっくり入れすぎても時間がかかるからね!

程々に程々に……





魔力を更に増やすとドヤドヤと人が集まってきた。

そういえば魔力関係の研究してる人が多いから魔力感知は強いよね。

まだ2割ぐらいだけど結構周りに漏れてそうだもんな。


「ん、モンスターかと思ったら亜神だった」

「……俺は人間ですー。って、今藤さんじゃない。お久ー。確かに規格外という自覚はありますけども?」

「規格外には変わりない。そんな魔力を出して平然としてる人に言われたくない」


……そりゃそうか。

まだ2割なんだけどねー。

人垣を掻き分けて話しかけてきたのはダンジョン部の今藤さん。

崩城で1番の魔力と魔法知識を有するとまで言われている知り合いですね。

そういえば明日の学祭に向けて準備してるんだっけ?

ダンジョン部の料理、期待してますよー?


「ダンジョン部の料理決まったの?お肉多めに貰ってるんだって?」

「ん、ばっちり。シンと後輩たちが頑張って仕込みしてる。で、あーさんは何してるの?」

「んー、ちょっとサポートしようと思ってねー。もうそろそろ動き出すと思うよ……お、やっと貯まった貯まった」

「あーさんのちょっとは災害級。そんな魔力を使うものなんて災害以外の何物でもない」


……そこまで言わなくても良くない

それはともかく、魔力を込め始めて30分を過ぎたあたりでハンドルが赤く光り出す。

これが魔力充填完了の第1段階。

次はハンドルを回してメイン作業ですよ。


「さてさて、ご覧あれ。学生時代に知り合いと作った魔導蒸気機関車【カラクリ雲母丸】のおなーりー」

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